傘籤さんの映画レビュー・感想・評価

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異人たち(2023年製作の映画)

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登場人物の顔を照らす夕日や、哀愁漂う音楽がアダムの孤独を強調し、観ていて切ない気分になる。原作からセクシャリティを変えることによって、彼の孤独はより可視化され、和解の喜びも強まっていた。
誰かに愛され
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異人たちとの夏(1988年製作の映画)

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アンドリュー・ヘイ監督のリメイク版(翻訳版?)を観る前に久々に鑑賞。この映画を初めてみたのは学生のころで、授業で観たんだよねー。
とにかく父親と母親との交流シーンが良すぎます。夏の日差しが照り付け、ラ
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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

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引き裂かれるようだ。
生み出された映画に罪はない。作品を作った監督にもスタッフにも罪はない。罪があるとするならば、それは歴史そのものが罪なのだ。
「原爆の父」と呼ばれた男の伝記映画。編集によって時間や
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アイアンクロー(2023年製作の映画)

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痛みに満ちた映画であり、後半に進むほど悲劇性は増していく。
しかし"呪われた一族"と呼ばれた家族の歴史を追体験することで、死んでいった兄弟たちの記憶は「懐かしく美しい」記憶として胸に刻まれる。
悲しみ
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雨月物語(1953年製作の映画)

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原作を読んだので久々に鑑賞。「浅茅が宿」と「蛇性の婬」の2編を元として作られているということがわかってるとまたちょっと違う味わいがありました。なるほどねー、二組の夫婦を登場させて、同時進行でそれぞれの>>続きを読む

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

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三人という最小限度の人数でお話を進め、上映時間は106分という短さ。しかしショットや視線から濃厚に登場人物たちの心情を描き、情景の美しさを心に焼き付ける。そんな切なくもロマンティックな「縁」の映画。>>続きを読む

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章(2024年製作の映画)

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原作はさいごまで読んでいるのでオチまでぜんぶわかっている状態で鑑賞。でも時系列をいじっている部分があったし、後半ではもしかして原作とは異なるエンディングに行きつくこともあり得るのかしら。だったら余計に>>続きを読む

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

この映画が描き出すのは、「決別」についてだ。
チャニはラスト、自らがサンドワームに乗ることで、ポールやフレメン、つくられた英雄譚に支配された構造からの離脱を試みる。彼女は彼女のサーガをつくるため、既定
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落下の解剖学(2023年製作の映画)

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ある雪山の山荘でひとりの男が落下して死んだ。これは他殺なのか、自殺なのか。夫殺しの嫌疑をかけられた妻と、視覚障害をわずらう息子のダニエル。事件をめぐって検事や弁護士がひとつひとつの事象を綿密に調べ、真>>続きを読む

ザ・ドールメーカー(2017年製作の映画)

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おー、良いですねこれ!
頭っから不穏な空気がムンムンで嫌な展開へまっしぐらなんですが、ちゃんと一捻り用意しているので10分間にも満たない短編作品にもかかわらず満足度がすんごい。
YouTubeで無料で
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瞳をとじて(2023年製作の映画)

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「恐れも希望も抱かないことだ」

「老い」とどう向き合うべきかというミゲルの問いに対して答えたマックスのこの台詞は、人生や老いについての言葉であると同時に、映画そのものについての監督の心情を表している
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映画ドラえもん のび太の地球交響楽(シンフォニー)(2024年製作の映画)

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そういえばドラえもんの映画に「音楽」がテーマの作品ってまだなかったんですね。内容はどんなもんかと思いきや、すんごい壮大で最終的にエヴァの人類補完計画を彷彿とするような幻想SFの域にたどり着いてました。>>続きを読む

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)

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風刺もりだくさんのコメディ映画。アメリカにおける黒人やゲイ、家族間の在り方についてのブラックな笑いを軸としている。
主人公のモンクは売れない作家。自身が納得する作品を書いていても中々認められず、言葉の
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コヴェナント/約束の救出(2023年製作の映画)

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おーもしろかった。
2001年以降のアメリカ軍がアフガニスタンで行っていた対タリバンの軍事作戦を元としたフィクションなので、その是非については慎重にならざるを得ないのだけど、映画的な面白さ・出来の良さ
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ミツバチのささやき(1973年製作の映画)

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映画を通して少女が世界を発見する映画。だからこの映画はあらゆるシーンがアナにとっての清新さに溢れており、その意味でセンスオブワンダーに満ちている。同時にこれは「原風景」についての映画でもあり、1940>>続きを読む

エル・スール(1982年製作の映画)

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静謐。しかしエストレーリャのまなざしは雄弁に彼女の気持ちを物語っている。記憶の中にある風景を追いながら、父親の姿を思い起こし、少しずついまに近づいていく物語。この映画は、ゆっくりと流れる時間を感じさせ>>続きを読む

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

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聴覚に障害を抱えるボクサー"ケイコ"。彼女の生活と、彼女に関わる人々の様子を静かに、なんら誇張することなく描いた映画。
『夜明けのすべて』と比べるとこっちの方が好みだった。ケイコがボクシングに打ち込む
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ハンニバル(2001年製作の映画)

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『羊たちの沈黙』の続編として作られた本作。グロテスクで陰鬱なアートワークは、むしろ続きであるこちらの方が気合い入ってます。配役についてはクラリスの役がジョディ・フォスターから変更されているのでごたごた>>続きを読む

ボーはおそれている(2023年製作の映画)

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つまりこの映画はある種のパラノイア(偏執狂)についてのお話なのだ。この映画の虚実がわかりづらいのは、パラノイアであるボーの精神内での出来事——ボーにとって現実として見えている景色を画面にそのまま映し出>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

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人にはそれぞれ固有のペースがあり、人付き合いの距離感も、仕事に対するモチベーションも、何に対して喜びを感じ、何に対して悲しさを覚え、何に対して苦しさを感じてしまうのかは、当然だけど違うものだ。そういう>>続きを読む

ダム・マネー ウォール街を狙え!(2023年製作の映画)

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実話をベースにした個人投資家VS巨大資本家のマネーゲーム。2021年に起きた「ゲームストップ株騒動」を題材にしており、YouTubeやSNSを駆使しながら庶民が大富豪たちと戦いを繰り広げ、快進撃を進め>>続きを読む

SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁(2016年製作の映画)

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舞台を1985年に、つまり正典である『シャーロック・ホームズ』の時代に移したドラマ版の”エピソード10”。あくまでドラマシリーズに連なるエピソードとしているのは少々変わった構成にある。

本作は201
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

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下敷きとして『フランケンシュタイン』を参考に製作された本作は、ふんだんに性描写を盛り込んでいる。が、そこに必要以上のエロティシズムは付与されておらず、あっけらかんとした「熱烈ジャンプ」のシーンは、どこ>>続きを読む

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)

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合唱コンクールの帰りにヤクザに目を付けられ、一緒にカラオケに行くこととなった中学3年生の聡実と、組長に変な墨を入れられたくなくて必死に歌を練習する男、狂児。おかしな出会いを果たし、おかしな関係性を維持>>続きを読む

アクアマン/失われた王国(2023年製作の映画)

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タイトルから期待するとおり、海の中をめっちゃ泳ぎまわります。戦いも海の中が中心となりますし、登場するキャラクターも海にまつわるものが多い。なので美しい海の中でファンタジー要素を入れつつ豪快にドンパチす>>続きを読む

ブルービートル(2023年製作の映画)

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大学を卒業し、メキシコの実家に帰ってきたハイメくん。しかし、移民である彼らはろくな仕事に就くことが出来ず、家賃滞納で家から追い出されてしまう。路頭に迷うことになりそうな中ハイメくんは大企業の令嬢ジェニ>>続きを読む

枯れ葉(2023年製作の映画)

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フィンランドを舞台とした本作は、理不尽な理由で職を失ったアンサと、酒に溺れ転職を繰り返すホラッパの出会い、二人が愛を育んでいく過程をゆっくりと、やさしく、愛情を持って描いた作品だ。
惹かれ合い、すれ違
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マッチスティック・メン(2003年製作の映画)

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リドスコ映画史上もっとも気軽に見れる作品、その名も『マッチスティック・メン』。
詐欺師を生業とするおとーちゃん(ニコラス・ケイジ)と、その相棒フランク(サム・ロックウェル)、そして娘のアンジェラ(アリ
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(2001年製作の映画)

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駄作扱いされてますがそれほど悪くなかったです。
「穴」に閉じ込められた4人の男女による密室劇。全体的に演出がしつこいというか、かったるいというか遅延しちゃってるので登場人物たちにわずらわしさを覚える部
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あなたが寝てる間に…(1995年製作の映画)

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クリスマスにぴったりの上手くいきすぎなくらい上手くいくハッピーな恋愛映画。あんまり観ないタイプの作品だけど普通に面白かったー。
まあでも意地悪なこというとさ、これって主役のルーシー演じるサンドラ・ブロ
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エド・ウッド(1994年製作の映画)

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映画が人の心に残すものについて、楽しく、コミカルに、時に物悲しく描いた作品。
監督のティム・バートンが敬愛するエド・ウッドという男は「アメリカで最低の映画監督」と言われている人物で、本作は彼の伝記映画
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(1960年製作の映画)

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観たかった作品が観れなかったので代わりに鑑賞した『穴』という作品。1960年にフランスで作成された本作は、パリで起きた実話をもとにした脱獄映画です。
えっ、っていうか面白いじゃんこれ!BGMを使わず、
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

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おだやかな映画だ。日々繰り返す何気ない日常、古いフィルムを彷彿とするフレームの狭さ、ドラマチックなことは起こらず、それを良しとする平山の人物像。無口な平山が発する台詞は極端に少なく、それもこの映画のお>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

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黒澤明が晩年に『夢』を製作したのと同様に、この作品もまた監督の心象風景や、言葉に置き換えることが出来ないイマジネーションをアニメという形に置き換えた作品なのだろう。そのためかつての作品、例えば『風の谷>>続きを読む

VORTEX ヴォルテックス(2021年製作の映画)

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この映画ではわかりやすくすべての状況を説明はしてくれない。映画は始まった時点ですでに彼らの「老い」を(ちょっと露悪的に感じるほど)執拗に捉えており、息子を入れた「会話」を通して、彼らのおかれた状況がな>>続きを読む

大誘拐 RAINBOW KIDS(1991年製作の映画)

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おばあちゃん無双な映画。岡本喜八によるサスペンス風コメディであり、北林谷栄演ずる82歳のおばあちゃんが国まで巻き込んで大暴れします。コメディなので当然っちゃ当然なんですが、全体に常にゆるい笑いの雰囲気>>続きを読む

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