耶馬英彦さんの映画レビュー・感想・評価 - 31ページ目

耶馬英彦

耶馬英彦

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ガーンジー島の読書会の秘密(2018年製作の映画)

4.0

 ミステリー仕立ての上質な作品である。第二次大戦後のロンドンでは復興めざましく建物は修理や新築が相次いで綺麗なペンキも塗られているが、人の心の中に残る戦争の惨禍の傷跡はまだ開いたままだ。
 主人公ジュ
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ディリリとパリの時間旅行(2018年製作の映画)

4.0

 ガスライターで有名なDupon社は、日本だとデュポンと表記され発音されることが多いが、フランス語の発音はほぼジュポンである。本作品のヒロインであるDililiは映画を観ればすぐに解るが、ディリリより>>続きを読む

リーベンクイズ/日本鬼子 日中15年戦争・元皇軍兵士の告白(2001年製作の映画)

4.0

 大抵の方はご存知だと思うが、知らない人のために念の為。タイトルの「日本鬼子」は中国語で「日本の悪魔」を意味する。リーベンクイズは「日本鬼子」のピンイン=ri ben gui zi である。

 関東
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引っ越し大名!(2019年製作の映画)

3.5

 楽しい映画である。役と役者の相性がいいから物語の設定が無理なく頭に入って来る。プロットが解りやすくて冒頭を少し観れば凡その結末まで見通せるので、あとはひとつひとつのシーンを愉しめばいい。水戸黄門みた>>続きを読む

米軍(アメリカ)が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯(2019年製作の映画)

4.0

 瀬長亀次郎のドキュメンタリー第二弾である。今回最も心に残った言葉は「小異を捨てないで大同につく」だ。説明不要、言葉のままの意味だ。人はそれぞれに生まれながらの違いがあって、その違いをなくすことは不可>>続きを読む

命みじかし、恋せよ乙女(2019年製作の映画)

4.0

 数日間あるいは数か月間という比較的短時間の物語であっても、他の登場人物はいざ知らず、少なくとも主人公の過去については、物語の中で語られることが多い。日常の瞬間的な景色や風景を切り取った作品などには登>>続きを読む

風をつかまえた少年(2019年製作の映画)

3.5

 恥ずかしながら勉強不足でマラウイという国の存在を知らなかった。映画を見る限りではかなり貧しい国で、毎日同じものばかりを食べている印象である。食べていくだけで精一杯の生活で、両親もこの生活がいい生活だ>>続きを読む

世界の涯ての鼓動(2017年製作の映画)

4.0

 人が人間性を試されるのは極限状況にあるときである。だから多くの物語の主人公は、普段の生活では体験しない特別の状況に置かれる。日頃どれだけ見栄を張ったり自分を飾っていても、究極の決断を迫られる場面では>>続きを読む

アルキメデスの大戦(2019年製作の映画)

4.0

 傑作だと思う。最初から最後まで息つく暇もなく引っ張り回され、最後は二転三転という展開は、よく考えられたプロットと俳優陣のリアリティのある演技に支えられている。特に柄本佑がよかった。単細胞だが真っ直ぐ>>続きを読む

東京裁判(1983年製作の映画)

4.5

 収穫はたくさんある。ひとつは膨大な資料提供をしてくれたのがアメリカだということ。流石に情報公開の国である。どんな機密情報も30年を経過したら公開するという原則を忠実に守る。日本の官庁が公開する黒塗り>>続きを読む

シークレット・スーパースター(2017年製作の映画)

4.0

 思春期の少年少女の音楽サクセスストーリーの映画はいくつか観た。2015年のイギリス映画「Sing Street」や2015年のフランス映画「La Fammille Belier」(邦題「エール」)な>>続きを読む

よこがお(2019年製作の映画)

4.0

 実存的なリアリズムに満ちた作品である。不条理な世界で人は如何に生きていくのか。世の中の不条理はどのように生み出されるのか。
 主人公はどこにでもいそうな普通の女性である。ただ真面目に仕事をして生きて
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ハッピー・デス・デイ 2U(2019年製作の映画)

4.0

 TOHOシネマズ日比谷はなるべく避けたい映画館である。映画館そのものは座席の勾配が大きくて前の人の頭が邪魔にならないから快適である。しかし東京ミッドタウン日比谷というビルが最悪なのだ。行ったことがあ>>続きを読む

北の果ての小さな村で(2017年製作の映画)

4.0

 グリーンランドが世界最大の面積の島でデンマーク領であることは世界地図の(デ)のマークで知っていたが、ツンドラの寒い島は想像するだけでつらそうで、行きたいなどとは露ほども思ったことがない。
 しかし本
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あなたの名前を呼べたなら(2018年製作の映画)

4.0

 8年前に放送された「家政婦のミタ」というテレビドラマがあった。松嶋菜々子が怪演した主人公は、長谷川博己演じる一家の主人からもその子供たちからも「ミタさん」と呼ばれ、それなりに人格を重んじられていたと>>続きを読む

ハッピー・デス・デイ(2017年製作の映画)

4.0

 かなり楽しめた。トム・クルーズ主演の「Edge of tommorow」(邦題「オールユーニードイズキル」とほぼ同じで、殺されるたびに学習して対策を立てるがなかなかうまくいかないというプロットである>>続きを読む

ワイルド・スピード/スーパーコンボ(2019年製作の映画)

3.5

 この手の映画を見るたびに、アメリカのアクションスターの格闘センスやアクロバット能力の高さに驚かされる。彼らはよほどの運動神経の持ち主でなければできない演技を楽々とこなして見せる。本作品の主役たちはそ>>続きを読む

存在のない子供たち(2018年製作の映画)

4.5

 生まれた子供には無限の可能性があるというのは都市伝説でしかない。例えば同じ程度の頭の出来の子供がふたりいて、一方は東京の裕福な家庭に生まれ、一方は地方の貧しい家に生まれたとすれば、東大に入学できる確>>続きを読む

ゴールデン・リバー(2018年製作の映画)

4.0

 原題「Sisters Brothers」の意味は冒頭のシーンですぐに解る。しかしSistersという名字を聞いたことがなかったのでちょっと面食らった。一度耳にしたら忘れられない名前である。そのせいも>>続きを読む

こはく(2019年製作の映画)

3.0

 エンクミがとてもいい。若い頃バラエティ番組に出演しているときから雰囲気のある女優さんだったが、ここにきて成熟味を増してきた。特にハスキーな声がいい。普段着のリアルな艶めかしさがある。本作品では女のや>>続きを読む

天気の子(2019年製作の映画)

4.0

 新海誠監督は「君の名は。」の評判がよすぎて、次作のプレッシャーは並大抵ではなかったと思うが、本作品でも思春期の恋愛模様を上手に描いている。子どもたちのドラマに大人を絡ませるのが得意な監督で「君の名は>>続きを読む

Girl/ガール(2018年製作の映画)

4.0

 LGBTは思春期の少年少女にとってはさぞかし辛いだろうとは想像できる。そうでなくても容姿について悩む年頃だ。おまけに同年代の子供たちは他人の容姿を悪く言うことにかけては容赦がない。逆に言えば、思春期>>続きを読む

アマンダと僕(2018年製作の映画)

4.0

 フランス映画は文学的である。哲学的と言ってもいい。生と死と愛を実存的なテーマとして、人間のありようが繰り返し描かれる。加えてその時代の社会問題も反映される。最近では移民問題やEUの行き詰まりだ。詳し>>続きを読む

サマーフィーリング(2016年製作の映画)

3.0

 前日に観た「アマンダと僕」がとてもいい出来栄えだったので、同じ監督の本作品はかなり期待して観た。同じような喪失と再生の物語だが、こちらは小さな子供を背負い込むこともなく、時事問題を絡ませることもない>>続きを読む

シード ~生命の糧~(2016年製作の映画)

4.0

 去年2018年にアメリカのモンサントがドイツの製薬会社バイエルに買収されたニュースを見て仰天した記憶がある。メルケル首相のドイツの会社がトランプのアメリカの会社、よりによって悪名高きモンサント社を買>>続きを読む

さらば愛しきアウトロー(2018年製作の映画)

4.0

 ロバート・レッドフォードはポール・ニューマンと共演した「スティング」が最も印象に残っている。ちょっと軽めのプレイボーイというタイプのレッドフォードがポール・ニューマンと共に軽快なBGMに乗って華麗に>>続きを読む

家族にサルーテ!イスキア島は大騒動(2018年製作の映画)

4.0

 配偶者の浮気に対する登場人物たちの反応は、フランス映画とイタリア映画では随分異なるようだ。少なくともこれまでに観た映画ではそうだった。
 フランス映画では夫に浮気された妻や妻に浮気された夫が激高する
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いちごの唄(2019年製作の映画)

2.0

 主演の古舘佑太郎の演技は好みの分かれるところだ。家族との会話の雰囲気からして、主人公は何らかの心的障害を持っていることがわかる。言語障害も知的障害もなさそうだからアスペルガーだろうか。アスペルガー症>>続きを読む

COLD WAR あの歌、2つの心(2018年製作の映画)

4.5

 恋愛はいつの世も相手に対する性欲と相手を受け入れる寛容さと相手に受け入れられる充足感の相乗効果だが、それをストレートに表現するのは意外に難しい。エディット・ピアフのシャンソン「Hymne a l’a>>続きを読む

X-MEN:ダーク・フェニックス(2019年製作の映画)

2.0

 X−MENシリーズは何本か観た。特によかったのは2年前の「LOGAN ローガン」で、ヒュー・ジャックマンが自身のレーゾンデートルに悩みながら闘うX−MENを上手に演じていた。
 主人公ジーン・グレイ
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ペトラは静かに対峙する(2018年製作の映画)

4.0

 一筋縄ではいかない映画である。タイトルからして、スペインの家族の物語が淡々と映されるのかと思っていたが、まったく違っていた。映画の紹介ページに書かれていたとおり、最初に起こる事件は家政婦の自殺だが、>>続きを読む

ガラスの城の約束(2017年製作の映画)

4.0

 ブリー・ラーソンは「Room」と「キャプテン・マーベル」と本作品で観た。17歳から7年間に亘ってひとつの部屋に監禁され続けた女性、宇宙から来た無敵のヒーロー、そして理不尽な父親に幼年期から青年期に亘>>続きを読む

新聞記者(2019年製作の映画)

4.0

 松坂桃李が出演する映画は去年は3本観た。今年は本作品で2本めだ。俳優として驚くような演技や所謂怪演と呼ばれるような演技をするタイプではないが、役をよく消化したリアルな演技をする。線の細さというか存在>>続きを読む

ザ・ファブル(2019年製作の映画)

4.0

 岡田准一はTV番組で「少年オカダ」として子どもたちを応援するために様々なチャレンジをしていた。その頃から運動神経が抜群だった記憶がある。アクション俳優になったのは必然でもあっただろう。
 本作品では
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劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん(2019年製作の映画)

4.0

 ファイナルファンタジー(スクエアエニックス)はプレイステーションで遊んだことがある。ロールプレイングゲームなのでバイオハザード(カプコン)やメタルギアソリッド(コナミ)などのアクションゲームとは違っ>>続きを読む

旅のおわり世界のはじまり(2019年製作の映画)

3.5

 黒沢清監督の作品はこれまでにふたつ観た。ひとつは「クリーピー 偽りの隣人」で、もうひとつは「散歩する侵略者」である。どちらも普通に見える人が実は殺人鬼だったり宇宙人だったりするという話で、人は誰も仮>>続きを読む