みちさんの映画レビュー・感想・評価

みち

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ミッシング(2024年製作の映画)

4.3

石原さとみ、すごい。
目の前で壊れていった。

周りを固める役者たちのドラマの重み、滲み。
ほんの一場面の登場でさえ、後ろに背負った人生が見えるというか。

強い感情を露わにした誰かを前にしたとき、言
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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.5

痛いくらいに鳴り響いていたのは、そうか、破滅の足音だったのか。

兵器を作る者も使う者も人間なのだ。

「使われる」のも人間なのだと、もっと詳らかに描いて欲しかった、そういう声があるという。けれどあの
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52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)

4.0

杉咲花が素晴らしかった。

俳優は泣くものだ。物語に痛みがあれば涙を流す。彼らは泣くものだ、と観客も、心のどこかで思っている。

今回の杉咲花も泣くのだけれど、一人の役者の泣き顔と泣き声をこれだけ多彩
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デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

4.5

2年半待った甲斐があった。
消灯した部屋で1作目を見直して。

この低音の重み。ずっと震えている。戦闘シーンはもちろんのこと、一つひとつの動きが張り詰めている。

更新されていく。見せ場を次の見せ場が
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ボーはおそれている(2023年製作の映画)

3.8

勘弁してくれ。疲れたよ。
ここはどこで、なにが起きていて、こいつは誰で、なにをやっている?

不穏、不安、不審、不快の通奏低音。
世界のなにもかもが揃いも揃って自分を拒絶するってこういうことか。

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ポップスが最高に輝いた夜(2024年製作の映画)

4.2

世界的なアーティストがおよそ40人も一つのスタジオに集まれば、雰囲気も悪くなるし演奏も止まる。しかも真夜中、もはや早朝。けれど周りを笑わせる人がいて、互いにサインを求める人がいて、ふいに誰かの曲を別の>>続きを読む

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.4

こんどはこんど、いまはいま。

なにも変わらない日常、同じことの繰り返し。変わらないことにだんだん慣れてきて、それがいつものリズムになってくると、今度は少しずつ変化が現れてきて、あるいは小さな変化に、
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⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

冒頭はあまりに横溝正史過ぎてもう少し捻っても良いのでは、と思ったが、おかげで話は分かりやすかった。不穏さ、怪しさの演出も工夫があって、期待値が高まった。ただ、それぞれの人間に異様な死に方をさせるなら、>>続きを読む

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

3.7

ゴジラを観に行って、ゴジラが良かった。

冒頭のゴジラ登場は、ジュラシック・パークのTレックスを全身強化したような。ビジュアルは文句なしだった。自分が爆弾を撃たなかったから整備士たちが死んでしまったの
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グランツーリスモ(2023年製作の映画)

4.0

レース映画をこんなふうに楽しめるとは。ゲームと重なっていくレースそのものが楽しく、本編の多くをレースに費やしてこれだけアツくなれるのは盛り上げ方の上手さなんだろう。

レースシーンは何度でも観たくなる
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リチャード・ジュエル(2019年製作の映画)

4.2

法への信頼と信奉を捨てきれないリチャードが、自分自身の怒りを見つけていく過程が良い。

そしてキャラクターの説得力。

リチャードが疑われる理由は、観ていてイライラするくらいによく分かるし、それは同時
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スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース(2023年製作の映画)

4.4

このレビューはネタバレを含みます

相変わらずの圧倒的な映像、アニメーションが全ての映像という映像を取り込んでいく凄まじさに、きっと脳は追いついていない。毎秒流れ込む、タッチの違うカラフルな映像と爆音を処理できないまま、物語だけにはなん>>続きを読む

銀河鉄道の父(2023年製作の映画)

3.7

原作の印象が強すぎて、途中まで映画のリズムに乗るのに苦労したが、これは原作では描かれなかった、あるいは描かなかったほうの「銀河鉄道の父」なのだ、と思ったら、こういう描き方もあるのだな、という気持ちにな>>続きを読む

ワイルド・スピード/ファイヤーブースト(2023年製作の映画)

4.1

立体のなかで「球」が一番危ない。今回も派手なアクションと破壊の限りを、と期待して見にくるのだけれど、その想像を超えてくるから嬉しい。

見せ場につぐ見せ場、敵も味方も再会。たくさん出てくるけれど、幾人
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名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)(2023年製作の映画)

4.2

面白かった!
ファンがいろんな悲鳴をあげそうないい回でした。これだけたくさんの主要登場人物をよくさばいたなあという脚本。あの人やこの人の共演が嬉しい。伏線も気持ちいい。しかし敵味方問わずコナンたちを助
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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

4.3

ジャンプ台!

マトリックス的な難しい話と、馬鹿げた設定のバランスがちょうど良い。何かにしくじったとき、別の宇宙ではうまくいっている自分がいて、しくじり続けた人生なら、マルチバースにはそれだけたくさん
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ハケンアニメ!(2022年製作の映画)

4.2

──ステッキを、捨ててしまったんです。

──太陽くん。この世の中は、繊細さのないところだよ。

──うちは、大手です。

俳優陣、全部いい。吉岡里帆すごい。柄本佑さすが。いいキャラだぁ。そして実は声
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シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)

3.4

このレビューはネタバレを含みます

何を見せられたんだろう……。
まったくハマらず。

セリフが全部アニメの台本を読み上げてるみたいでしっくりこなかったり(そういう演出なんだろうなあと思って見ていても違和感から逃れられなかった)、キャラ
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フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

4.2

──地平線は……。

キャラが濃い。
彼をいちばん振り回した母親も、寡黙で冷静なようでいて深い苦悩を抱えた父親も、狂った導師のような祖母の兄も、キリストファンの恋人も、いきなり哲学的になるクラスのスポ
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クーリエ:最高機密の運び屋(2020年製作の映画)

4.1

── It has to be you.

別のイギリス映画でも聞いた台詞。いつだって主人公は望まずして選ばれる。

ありふれたビジネスマンなのに、機密情報を運ぶことと核戦争で家族を失うことが天秤にか
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流浪の月(2022年製作の映画)

4.4

襲いかかってくるような孤独。最後の希望みたいに伸ばした手。握り返した手。

濃密で、身を削られる映画でした。見せ場で音響が畳み掛けてくるけれど品の良さは損なわれない。すっかり役者に惹き込まれている。
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イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

4.2

なんという言葉で薦めれば良いか、観終わってもわからない。

暇つぶしといえばパブとお喋り(と読書と音楽)しかない退屈な島。友人から会話を拒絶された「いい人」な男。自傷行為を盾にどこまでも彼(との会話)
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RRR(2022年製作の映画)

4.4

見せ場につぐ見せ場、何度も笑ってしまった。ナートゥのダンスもよかったし、猛獣パーティ、噴水のホースの舞vs炎の舞が絵としてはまり過ぎていて笑った。それから歌がとても好き。

主人公ふたりは最強で何でも
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ゲット・アウト(2017年製作の映画)

4.0

物語はちゃんと決着したのに消えることのないこの気持ち悪さはなんなんだ。

笑ってしまうような状況とゾッとする状況は裏表。

いい題名。

SHE SAID/シー・セッド その名を暴け(2022年製作の映画)

4.4

「沈黙の対価」という言葉がやけに印象に残った。

未来へと開かれていた人生を踏み躙られた人々が、記者たちの思いに応え、真実を語り始める。閉した口の重さ。

彼女たちが、それぞれの人生におけるどのような
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THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)

4.5

──そんなタマじゃねーよな。

選手たちが描かれて、描き出されて、一人一人が歩き出す、その時にはもう隣の見知らぬ女性が泣いていた。

ずっと眼を開けていた。

一本のシュート、一本のパス、ひとつながり
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アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(2022年製作の映画)

4.3

──大きく息を吸って。

『タイタニック』と『アバター』の先にあるもの。一緒に息を吸っていたのは自分だけじゃないはず。『タイタニック』のテーマを空耳したのも、たぶん。

ひとつの世界を作るってやっぱり
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アバター(2009年製作の映画)

4.3

──I see you.

最新作の前に。

生きとし生けるものすべてが繋がり合うナヴィの世界観、その肉体に意識を繋ぐアバター、乗り手と繋がり美しく空を飛ぶイクラン。婚約者を奪われても信じた男を仲間と
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Dr.コトー診療所(2022年製作の映画)

4.1

このレビューはネタバレを含みます

2003年のシリーズを観て。

コトーという医師の良心に頼った離島医療の現実を突きつけるため、細かい部分まで現代にアップデートされていた。次々に人が倒れていくさまからは(ツッコミどころがないでもないが
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ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

演技は良かった。二宮和也、安田顕、桐谷健太、が特に。

ストーリー展開はあまり面白いと思えず、演出もところどころ不自然に感じてしまった。

まず、ハルビンの街と空襲のリアリティの薄さ。

山本の家族の
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ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー(2022年製作の映画)

3.8

追悼と復讐の映画。

第三勢力登場、世界、ワカンダ、第三勢力の絶妙な三角関係までは良かったけど、中盤からいろんな登場人物への目配りがありすぎてストーリーが進まず中だるみ。王女と天才科学者のタッグがもう
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すずめの戸締まり(2022年製作の映画)

4.4

忘れてはいけないことを、忘れていた。

世界と引き換えに自分の恋を貫く。新海さんらしい。

ここまでストレートに描かれるとは思っておらず、心の準備はあまりなかった。

あの子にどんな言葉をかければよか
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MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない(2022年製作の映画)

4.4

面白い!
アイデア勝ちの上に脚本のうまさ、編集でみせる繰り返しの楽しさ、ギャグセンス。

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