明るいブラスバンドの音楽や登場人物のハイな状態と史実や物語中の鬱屈とした情勢との明暗がブラックユーモア溢れる不自然な明るさをより強調し異様さを増している。
ファンタジーと現実、時間の止まった地下の箱庭>>続きを読む
ショーン・ベイカーのアメリカの低所得者層あるいは、先進国において均質化、美化された街の外側に取り残された人々を意欲的に描く姿勢には好感が持てる。
碌でもない元ポルノ男優とストロベリーというミューズの話>>続きを読む
ティーンネイジャーの女の子達が暗くて重い現実を、若さとドラッグでハイになりながら明るく乗り越える姿は、いかにもアメリカらしい汚さ満載の笑えるコメディだ。(これって本当にあのA24なの?とは思った)
し>>続きを読む
拝金主義や資本主義、それらに付随する問題を痛罵する(比喩ではなくクソをぶっかけるという)内容は痛快で明解だった。
直接的な批判は分かりやすくはあるものの鋭さに欠け、個人的には前作ほど深く刺さらなかった>>続きを読む
演出や構図、細部にまで敷衍された美意識はウェス・アンダーソンらしさに溢れていて見ていて楽しい。
意図的に雑誌の紙面を見ているような感覚にさせる構成であることは理解するし、どの章も凝った面白い内容なのに>>続きを読む
風貌も含めムーンドッグは天使みたいな猫を連れたヒッピーなキリスト、さながら放蕩の神といった感じ。
神通力の如く、彼は事故に遭っても死なず、警察にも捕まらず、サメにも食われない。詩人として死んだと見做さ>>続きを読む
ドキュメンタリー風でリアルな町の日常や風景と対照的に作り込まれた構図や詩的な夫婦の会話とが互いのパートを相乗的に引き立てている。
意味深な問答を繰り返す二人もまた一時のバカンスを終え、熱狂の間をすり抜>>続きを読む
タイトルの通り5時から7時までの主人公クレオの行動をリアルタイムで追うという凝った作り。
癌と宣告されるかもしれないという恐怖と自身の抱える孤独、そこからの解脱が美しく描かれている。
あのミシェル・ル>>続きを読む
90年代のアメリカのユースカルチャーを詰め込んだ様な、いろいろな意味で記録的な作品。
何とも言えない心地悪い質感が感じられるのは、やはり画面の中に漂うリアルな雰囲気によるところが大きい。
時に恐怖すら>>続きを読む
Kid’sと一緒に観たからなのか、西海岸のカラッとした空気も相まって、全体的に90年台の牧歌的な雰囲気が強く感じられた。
それぞれに問題は抱えているが出てくる奴らはみんないい奴らで、世界中の弟が共感す>>続きを読む
Phoenixとビル・マーレイが歌うだけで満足。
やはりソフィア・コッポラは、現代のいい意味でスノッブな女性を描いた方が圧倒的に良い。
所謂アラフォー女性を描いたことは、これまでとは違う層からも共感を>>続きを読む
身も蓋もないことを言うと、原作のストーリー自体があまり好みではない。
アメリカ文学の古典的名作を構成を含め現代的な感性で生まれ変わらせることには成功しているだろう。
ただ、原作に忠実に描いているが故に>>続きを読む
女性によって駆動する映画。
出てくる男達は魅力的とは思えないが、何故か女性達に深く愛されている。
アデルでも感じたことだが、食事のシーンが妙に生々しく、アップを多用することでグロテスクさギリギリの生命>>続きを読む
胃もたれしそうなエグい内容のはずなのに、音楽や映像的なセンスの良さ、構成の明解さによって重く感じさせない。
頭上から見下ろすダンスシーンの激しさと共に全員が徐々に狂っていく様は魅入ってしまう程に素晴ら>>続きを読む
誰も幸せになれない、救いのない結末。
父の不義の妻に対する愛憎が屈折した形で娘へと向かう。
彼は時折銃を撃ちまくり、誰も読まない本を作る。娘はトラウマやそれに起因すると思われる発作を抱え、大人と子供の>>続きを読む
「そうだ、君は失われた環を見つけた」
詩的でまるでお伽話の様だった。
マリアンヌは他の様々な作品にモチーフとして影響を与えているらしい。
彼女は多くの人(特に男性)にとって普遍的魅力があるのだろう。決>>続きを読む
いつか訪れる死とそれに向けて老いるということが、家という舞台の中だけで淡々と描かれている。
この映画に鯨は出てこない。
鯨とは彼女らにとって輝かしい過去であり、未来へのささやかな希望だ。
老いた姉妹は>>続きを読む
暗殺のオペラも印象的に美しい映画だが、個人的にこちらの方が好みだった。
緻密に計算された構図はどのカットを切り取っても見事に美しい。
主人公を突き動かしていたトラウマ自体が、思い込みでしかなかった事実>>続きを読む
島の中の秩序が暴力へと転化し、無邪気さと残酷さが、徐々に尖鋭化されていく。
理性的な少年達の正しさは、健全ではあるが、野蛮な彼らの方が時に魅力的に映ってしまう。
善悪を超えた美しい瞬間をフラットに捉え>>続きを読む
急激に変わりゆく巨大な国家と、その中で翻弄され生きる渡世人二人の移ろう関係性や、決して変わらない心情。極大と極小の対比がそのどちらをも鮮明に描き出している。
不思議を通り越して可笑しくも思える多くのシ>>続きを読む
常軌を逸した殺人に対する欲求や執着は滑稽に映るが、結果的な表現こそ違えど、時に人を傷つけ得る自己中心的なアートの根源と似た衝動があると思わざるを得ない。
現実とメタファーの同一化によってしか建てられな>>続きを読む
階級による分断と憎しみが、そうだったかもしれないもう一人の自分として表出するという、アメリカ社会や世界に対するアイロニーは斬新で、ドッペルゲンガーの正体とツイストした結末として綺麗に纏まっている。
し>>続きを読む
この映画においてジャンヌ・モロー演じるカトリーヌに共感することは鑑賞する上でさほど重要ではないだろう。
アドリア海の彫像に似た彼女は神話における女神の様に奔放に振る舞い、大いに愛され、時に畏怖される。>>続きを読む
話の展開や画面構成等が整った、観やすく分かりやすい作品。
品良く纏まった中でのラストは一層際立って狂気じみている。
コートに隠しきれないライフルと夫人であるフランカの絶望は写真が引き金となり、まさにチ>>続きを読む
様々な引用や音声のエフェクト、断片的な映像の羅列は、それぞれが完全に合致し同期していないが故に、まるで視聴覚を切り離した様な奇妙な感覚にさせられる。
3Dで撮影され、より映像に重きを置いた前作と異なり>>続きを読む
許すことと救済、キリスト教的教えだが現代日本のみならず、世界的に見直されるべき視点なのかもしれない。
バラバラだった時系列が徐々に現在に集約されていく構成は、よくありがちではあるが、主人公の更生とリン>>続きを読む
オリジナルとの比較や深読みする楽しさのある作品なのだろう。
ダンスとシンクロして体がバキバキになるシーンは斬新で見応えがあった。
肝心の呪術の儀式は美しくはあるが、コンテンポラリーダンス自体の表現の幅>>続きを読む
それぞれが本当に必要なものを渇望し、時に醜く立ち回る姿は切なく苦しい。
宮廷内の閉塞感と上流階級の悪趣味さは、ユーモアを纏いながらも、画面の暗い色調も相まって作品全体に重苦しくのしかかる。
ネガティブ>>続きを読む
映画に限らず創作物において、古くから畏怖や畏敬の対象である森というフィルターを通すと、非現実的な展開もすっと(日本人であるというアドバンテージは大いにあるが)受け入れられる。
東洋的な文化に通底したア>>続きを読む
小さな店での些細な諍いや街中の人々の日常、そんなミクロな視点から公民権運動の指導者二人の思想的対立というマクロな視点までが、暴力の中で交差する。
誰もが差別する側にもされる側(もちろん黒人へのそれとは>>続きを読む
終盤に至るまでのブラックユーモアが、濃過ぎず薄過ぎず、丁度いい塩梅で映画が進んでいく。散りばめられた怒りも薄れ心地よく温まったラストにとんでもない現実によって冷水を浴びせられてしまった。
映画の軽やか>>続きを読む