さいとぅおんぶりーさんの映画レビュー・感想・評価

さいとぅおんぶりー

さいとぅおんぶりー

逆噴射家族(1984年製作の映画)

4.3

東大生になりたい息子やアイドルに憧れる娘は自己実現の為に終始奔走しているが同時にそれは「自己主張による自己完結」の行き詰まりだった。マイホームという西洋主義的な自己実現を解体をすることは「私」という「>>続きを読む

エロス+虐殺(1970年製作の映画)

4.5

3時間30分のロングバージョン視聴。
衒学的な台詞回しと形而上学的な問いかけに乱立する視覚的メタファーと複雑な相関関係、膨大な情報の波に圧倒され処理しきれないまま最初の30分が経過してしまい不安になり
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アルプス(2011年製作の映画)

3.8

映画冒頭カルミナ・ブラーナの音楽が鳴り響き、それと対照的な拙いバレエから始まるのが印象的。
ヨルゴスランティモスの作品は不自然に散りばめられた違和感から世界観の全容を類推してく楽しさがある。
突拍子も
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ストーカー(1979年製作の映画)

5.0

路傍のピクニック(ストーカー)読了済み。
映画と原作の最大の違いはタルコフスキーの神学的要素が大きい。

ゾーンとは恐らくロシア正教の聖堂(ソボール)だろう、そして願いを叶えるとは精神的一体感(ソボー
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Here(2023年製作の映画)

5.0

シュシュは目を覚ますとカーテンの名称が思い出せなくなり、観念と言語を結び付ける自我の境界線が取り払われ事物が渾然一体と調和していた。
彼女にとって彼がカーテンと同じ様に存在の諸相を調和させていたからこ
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デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

4.3

めっちゃおもろー!IMAXで観て良かったー!!

ポールが伝承の巨大サンドワームを乗りこなす儀式シーンの気持ちよさは映像体験としか言いようが無いカタルシスで観客はまさに神話の目撃者になっていた。(あと
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マンディブル 2人の男と巨大なハエ(2020年製作の映画)

2.5

2人の駄目人間と1匹のハエが織りなすコメディタッチのロードムービー。

巨大なハエがテーマなら伸縮する口吻と擦り合わせる前脚は絶対に画面上に出して欲しかった、予算の問題で再現できなかったのは仕方ないけ
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ソルフェリーノの戦い(2013年製作の映画)

3.9

落下の解剖学を観るにあたって監督の初期作を視聴。

2012年フランスのサルコジとフランソワの大統領選時に撮影されていて、31年ぶりに社会党が政権を取った歴史的瞬間と夫婦の親権問題が虚実入り混じる形で
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宝島(2018年製作の映画)

4.3

一夏のドキュメンタリー映画でヴァカンス(時間)と避暑地(空間)を通して人種•性別•年齢•背景が異なる人々にカメラを向けて1つの物語りを形成してゆく。

魅力的な久々のエピソードと生々しさはまるでカメラ
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マルメロの陽光(1992年製作の映画)

4.1

リアリズム絵画の巨匠アントニオ•ロペスのドキュメンタリーでありながら同じく寡作のビクトルエリセの人生を準えた叙事詩。

ロペスの製作方法が他のリアリズム作家と著しく異なっているのは、写真から対象を描き
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DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)

-

原作未読、ホドロフスキーのドキュメンタリーとリンチ版は視聴済み、パート2が出るので相関関係とデューン用語を復習のため再視聴。

映画館で観ないと没入感がなくて体感型アトラクションとして機能してなかった
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妖婆 死棺の呪い(1967年製作の映画)

3.8

旧ソ連で初めて撮られたホラー映画。
スラヴ民話のバーバヤガーとロシア正教の堕落した神学生の対決をカリカチュアライズして描いた作品。

15世紀頃のイコン画が立ち並ぶ教会での3日間に渡る対決は見所満点。
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DOGMAN ドッグマン(2023年製作の映画)

3.0

鑑賞後の印象として、この映画は「ジョーカー」と言うより101匹の続編「102匹ワンちゃん」に登場したクルエラ•ド•ヴィルをリュックベッソンが解体して再構築した形という方がしっくりきた。(予告時点でこの>>続きを読む

瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.5

観ているとこれが引退作になるとわかって撮影しているエリゼの気持ちが伝わってきて最後は涙が溢れて止まらなかった、こんなに素晴らしい映画なのにこの映画を語る為の言葉を持ち合わせて居ないのだと痛感させられる>>続きを読む

エル・スール(1982年製作の映画)

5.0

父はユダヤ教徒でレブプリカーノ(共和政府支持者)だったからこそカトリシズムに基づく保守的なナショナリストを受け入れず自身の人生を賭けて父と対立し家族を捨てた背景があり。
ユダヤ教徒であった彼が娘(六芒
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ボーはおそれている(2023年製作の映画)

4.4

観客と出演者の境界を無くしボーになりきる体験型アトラクションムービー。

最初は統合失調症の人間が見る世界の話かと思って観ているとボーにイエスの聖痕が現れる、成る程キリスト教の話しも加わるのかと見始め
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ミツバチのささやき(1973年製作の映画)

4.2

この映画の下敷きでもあるスペイン内戦やフランコ独裁政権、アウタルキーヤ政策の失敗やスペインの孤立など、歴史を知っていると判る暗喩は数多くあったが、結局の所判らない事の方が多かったと感じた。

この映画
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昔のはじまり(2014年製作の映画)

4.0

サタンタンゴ並みに長い映画は2度と観ないと決めたのに…。
序盤は映像人類学的な構成で人々の土着文化が克明に切り取られるが、後半から一気に民兵の侵攻が始まり、その安寧が崩される事でドラマ性を帯びてくる。
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At Sea(原題)(2007年製作の映画)

3.5

ライカートが尊敬する映画監督にピーターハットンの名前を上げてたので彼女の作品をより理解する事を目的として視聴。

映画は映像と音で作られるとされるが、この実験映画には音が無く終始無音。
始めは4分33
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マザー、サン(1997年製作の映画)

4.0

病に耽り死に向かう母と別れを惜しむ息子との叙情的なマジックリアリズム•ロードムービー。

歪んだ画面構成が特徴的で、母に対する記憶の曖昧性やソクーロフの涙に潤んだ瞳によって映し出される世界を現してるよ
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狼の時刻(1966年製作の映画)

4.8

芸術家の抱える懊悩と夫婦間の奇妙な自己同一化を映した作品。

スヴェン・ニクヴィストが撮る幽玄で絵画的なコンポジションは思わずため息が漏れてしまう。
美しい画面構成に対して過激なまでの不協和音のコント
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Transfer(原題)(1966年製作の映画)

2.5

患者と精神科医がコミュケーションについて形而上学的で支離滅裂な散文詩のやりとりを行う。

明らかにバロウズやギンズバーグのビート文学の影響が感じられるクローネンバーグ処女作。
斑雪が印象的。

パーフェクトマン 完全犯罪(2015年製作の映画)

2.5

類型的な展開のサスペンス映画なのに話の整合性が取れてなかった。この作品の良いとこはピエールニネの油汗をかいてるような演技かな。
パーフェクトマン完全犯罪というタイトルから想像もつかない内容だった…。(
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悦楽共犯者(1996年製作の映画)

5.0

自らの特殊性癖を満たす為に変態達が想像力を発揮して特殊な器具を作るために奔走する群像劇。

全ての登場人物がリビドーに突き動かされて悦楽に興じる為の道具を製作してるが、完成するまで用途を類推する事すら
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君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

4.5

わりと難しい映画と事前に聞いていたので理解できるかどうか不安だったが、明らかにベックリンの死の島をイメージした島が出てきた所で、この映画は作者の内的世界を描いてますよと示唆されたので途中から映像に身を>>続きを読む

PASSION(2008年製作の映画)

3.6

濱口監督の学生時代の作品。
気持ちを伝えた所でトラックに遮られて退場するシーンが特に好きだった。
ロジックを積み上げて身体性に回帰する演出や、登場人物が何らかの背徳感を抱えて葛藤するアンビバレントな心
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The Strange Thing About the Johnsons(原題)(2011年製作の映画)

3.3

ボーは恐れているを鑑賞するにあたってアリアスター監督の学生時代の短編初期作を探したらYouTubeで発見。
家庭を守りたい父親と黙認を愛だと錯覚した息子の愛憎入り混じる悲劇。

https://you
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DAU. ナターシャ(2020年製作の映画)

-

映画という媒体で今作を発表してるが、作品製作のアプローチ方法が映画から逸脱し過ぎていてこの作品をどう受け止めるのか評価に迷う。

現代アートと社会実験とドキュメンタリーを混合させた印象が強く残った、最
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世界で一番ゴッホを描いた男(2016年製作の映画)

3.0

ゴッホの複製画を20年描き続けた男に密着したドキュメンタリー映画。
貧困に喘ぎ死後作品が評価されたゴッホの存在は芸術家に希望を与えたが、現代アートにおいて生前に評価されなかった人間は死後評価される事が
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ファニー・ページ(2022年製作の映画)

3.6

無軌道な子供が、精神疾患の大人達に都合よく利用される物語りで、主人公のもつ若さ故の危うさが作品全体に一定の緊張感を常に与えていた。

「固定観念を覆し予想を裏切るんだ」と言った恩師の台詞が示すように、
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ビヨンド(1980年製作の映画)

3.6

エイボンの予言書とか7つの地獄の門とか結局なんだったの?とか色々気になるけど話の整合性がどうでも良くなる程に先行する強烈なビジュアルイメージが脳を塗り替えてく感覚が非常に面白かった作品。

特に印象的
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声もなく(2020年製作の映画)

3.8

韓国のフィルムノワールだと思って鑑賞すると、全く別の方向に物語りが展開するので期待を裏切られたと怒る人も居そうな作品。

最後に社会性の象徴でもあり、憧れの対象だったジャケットを脱ぎ捨ててトンネルに入
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見えざる手のある風景(2023年製作の映画)

3.2

宇宙人と人類がファーストコンタクトした後の話しで、現在の極端な格差やらAIの到来を宇宙人に準えた作品。
興味深いのは話しの中身よりも宇宙人のデザインで口が尻になっている馬鹿馬鹿しさと、不気味さのバラン
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犬人間(2022年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

なぜ犬ではなく犬人間である必要があったのか?

富豪のクリスチャンは両親を亡くした喪失感を埋めるために倒錯的な形で無償の愛情を求めた人間で「友達は金が目的で寄ってきた」と述べた通り、人間不審に陥ってい
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殺し屋(1956年製作の映画)

3.0

学生時代の短編作品ながら鏡など重要なモチーフが既に出来上がっていた。

登場人物すべてが支配や従属の中で生きており、強大な力に対して死を待つ男の無力感や絶望感は翻って「なぜ人は生きるのか」の問い掛けに
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