塩湖さんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

エピデミック〜伝染病(1987年製作の映画)

4.5

"脚本が病で満たされる"
映画と、映画をつくる人を同じ地平に置きつつ「伝染病」というキーワードをあいだに挟んで事態を少しずつややこしくさせる。シネマ・ヴェリテを虚構に帰すようなトリアー的試み。画面の左
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エレメント・オブ・クライム(1984年製作の映画)

3.5

捜査ものでこれほどまでに眠気を誘うのも凄い。窓を割る時のスローモーションに備わっている『アンチクライスト』『メランコリア』を彷彿とさせる美しさと躍動感、空き瓶の敷き詰められた謎空間に少女と男性がぽつり>>続きを読む

ノクターン(1980年製作の映画)

-

はじまりの意味深な静止の時間と、主人公が寝返りをうつところしか覚えてない。フィルムで観てみたいなと思った。

ある夏の記録(1961年製作の映画)

3.5

裏方の露骨な企み顔が鼻につくのと同時に、それを凌駕する何かが確かに眩しいのが『人間ピラミッド』と『私は黒人』と本作含めたジャン・ルーシュ作品の色か。道を歩く女性のカットは魔術的なすごみがある。独白を抜>>続きを読む

(1989年製作の映画)

3.5

怖いというより、なんだか具合が悪そうで見ている側が不安になるようなその全体のムードにふしぎな吸引力があったので終始飽きなかった。エディプス・コンプレックスものはこれ位の抽象度の高さでも案外いい。ハッと>>続きを読む

そして泥船はゆく(2013年製作の映画)

4.0

愚豚舎が以降作っていく作品の幾つかの要素をすでに結集させながら高いフィクション性を獲得している、まさに原点と呼ぶほかない美しい一作。丸坊主の渋川清彦の「なにも出来ないからなにもやらない」という怠惰的か>>続きを読む

切腹(1962年製作の映画)

4.5

凄まじい構成。暗い音楽でじりじり観客を責めてくる割に、連続で介錯人が病欠という報告を受けるくだりを挟むあたりはややホラーコメディ的だと思ったけど、主人公のまさかの告白から一気に別種の緊張感が。武士のプ>>続きを読む

七日(2015年製作の映画)

3.5

そろそろ「繰り返す日常」が大田原愚豚舎の十八番だということに気付いてきた。が、何本か観た後だと渡辺紘文という役者をどうもポップに捉えてしまうので、別の人が中心にいる『プールサイドマン』『ヴェクサシオン>>続きを読む

プールサイドマン(2016年製作の映画)

4.5

これぞ映画。渡辺紘文版『エレファント』だ。追いかけられる背中、夜な夜な眼鏡ごしにパソコンを見る目、プール監視員たちの談笑の輪から不意に離れてフレームから外れる身体にたいして「もしかしてこの人…」といよ>>続きを読む

生きているのはひまつぶし(2022年製作の映画)

3.0

今年はじめのスニークプレビュー以来の鑑賞。特段面白いわけではない。絵を描く監督の筆づかいに意識を集中させる時間がいい。大田原愚豚舎初のドキュメンタリーだけど時どき作為が混じっているという旨の裏話をトー>>続きを読む

ヴェクサシオン(2021年製作の映画)

4.5

教室にやってきた子ども達を見つめる主人公が怖いし、そもそも彼に付きまとうエリック・サティという亡霊の存在が途轍もなく怖い。ここにも終わりなき日々の繰り返しが。大田原愚豚舎にあるであろう闇のパートを抽出>>続きを読む

ヨーロッパ(1991年製作の映画)

4.0

この種のトリアー監督作品を初めて見た。主に列車の中で頻発するサスペンス、ドイツ表現主義ともまた違う白黒映像の異様な佇まいに目が釘付け。しかし部分的にカラーを用いるタイミングがまあいい加減で『シンドラー>>続きを読む

小説家の映画(2022年製作の映画)

4.0

至極ありふれた「そんな偶然があるんですね」をおそろしく映画的に切り取る。ホン・サンス一本目か二本目なのにもかかわらず内容におぼえる親しみが尋常ではなかった。キム・ミニの笑顔のバリエーションだけでもいつ>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

ペリカンの大群に捕食されることなく上に昇った「まっしろしろすけ」みたいなヤツらも『君たち』なのか。主人公の心象とリアルな異世界の景色が混在しているような奇妙な舞台のうえで宮崎駿の"あの"快活なアクショ>>続きを読む

わたしは元気(2020年製作の映画)

4.0

大田原愚豚舎の一面として印象に強く残る日常系コメディ。随所にりこちゃんの存在をフルパワーで祝福している映画の美しい態度が垣間見える。監督演じるセールスマン"神宮寺亀吉"の悪徳商法を玄関口にて子どもたち>>続きを読む

ダンサー・イン・ザ・ダーク 4Kデジタルリマスター版(2000年製作の映画)

3.5

空想の立ち上がり方と途切れ方が凄くリアルに再現されている映画。裁判のシーンでセルマについている一人目の弁護士の台詞が綺麗さっぱり省かれてる辺りは、さすがにトリアー自身が作品のムードを悪い方向へと誘導し>>続きを読む

Petto(2021年製作の映画)

-

前見た。枝優花の劇薬。ラストの既視感を辿ったら村田沙耶香だった。『コイビト』とかも映像化できそう。

普通は走り出す(2018年製作の映画)

4.5

冒頭の格好よさにまず圧倒される。新宿の交差点を彩るトリプルファイヤーの『中一からやり直したい』、はじめて聴いたけどなんてシビれる楽曲なんだと思った。監督・渡辺紘文が数多の女優に言葉責めされる。神様に手>>続きを読む

テクノブラザーズ(2022年製作の映画)

4.5

今年はじめのスニークプレビュー以来の観賞。音楽映画、そしてロードムービーの忘れがたい傑作。柳明日菜演じるマネージャーのSっぷりが度を過ぎるか過ぎないか、という絶妙なラインのうえでテクノブラザーズの「動>>続きを読む

眠る虫(2019年製作の映画)

4.0

道を歩く少年のカラダにはじかれる植木の枝や葉がそのとき抱くかもしれない気持ちまで掬い上げたくさせる、見る側の「世界」に対する感度を一気に鋭くさせる一時間とちょっと。ここにきて『耳をすませば』も実は幽霊>>続きを読む

復讐 THE REVENGE 消えない傷痕(1997年製作の映画)

3.5

復讐その1を終えた哀川翔が今回は少女と交流を重ねることで仄かな人間味をちらつかせる辺りに『ターミネーター2』的な雰囲気を見た気がしたけど結局そんなことなかった。最後の最後まで感傷ゼロ。前作ほどの切れ味>>続きを読む

復讐 THE REVENGE 運命の訪問者(1997年製作の映画)

4.0

アンリコ『追想』的な、復讐完了後に主人公を襲うであろう虚無感のようなものが、本作ではその遂行以前からすでに映画を包み込んでてユニークだった。だからこそ「もう止まれない」感が段違い。そして一切の感傷なし>>続きを読む

ペトラ・フォン・カントの苦い涙(1972年製作の映画)

4.5

ペトラとカーリン、それぞれから発せられる言葉が部屋を埋めつくし山のように積もっていくその取り返しのつかなさが憎らしくも美的だった。一言の台詞も持たない秘書マレーネとのくどい対比がラストに敷かれた潔いほ>>続きを読む

遺灰は語る(2022年製作の映画)

3.5

遺灰を主人公とした話として見ると印象は薄いが、遺灰を取り巻く人達の話として見ると味わい深い。棺に小人がいる、という子どもの言葉を発端として大人のあいだに笑いが伝染するくだりはのほほんとしていて和んだ。>>続きを読む

北野武 神出鬼没(1999年製作の映画)

5.0

蓮實重彦と北野武の対談。約束された面白さ。エンドクレジットへの入り方がはちゃめちゃに格好よくて、トリュフォー『逃げ去る恋』を思い出した。

にわのすなば GARDEN SANDBOX(2022年製作の映画)

5.0

かつて十函町には一家に1台スケボーがあった→人間の数よりもスケボーが多かった、というご当地エピソードのあざやかな発展(偽証)を耳にしてリアクションしたり、その人の配るグミを食べたら飛ぶという噂をそのグ>>続きを読む

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース(2023年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

間違って3の分まで描いてるのかという位の詰め込みぶりに疲れた上「つづく」ときたものだから目が回る。しかしマルチバースは過剰でなんぼ、楽しかった(前日に1を復習してなかったらと思うと恐ろしい)。一生分の>>続きを読む

殺しのはらわた(2006年製作の映画)

5.0

撃たれた子どもを映画がまだ死なせなかったことに安心した矢先、べつの子どもが呆気なく殺されたから「やってんな」となった。この世代の作家があれしたいこれしたいキャッキャと言いながら撮った感じが見える短編で>>続きを読む

スーツ(2003年製作の映画)

3.5

無声映画っぽい小粒ギャグにある通俗性が他の作品のそれより高くなってて見易い。あの『ルナ・パパ』の多幸感が段々と薄まり『海を待ちながら』の厳しさにゆっくりと足をかけていくようなグラデーション感。出発寸前>>続きを読む

静かなる一頁(1993年製作の映画)

4.5

ひと度死んだ街が何かの間違いでズルズルと呼吸してる様を思わせるおどろおどろしい映画の佇まいは律儀に『ストーン』的でありつつ、霧なのか湯気なのか分からない紗のかかった油絵風の画は『ファウスト』『独裁者た>>続きを読む

ウーマン・トーキング 私たちの選択(2022年製作の映画)

4.0

対話と選択の時間は常に未来を向いていて暗い納屋のなかには確かに"風"が通っている。誰の芝居がいいとかそういう話ではもはやない歴とした彼女たちのアンサンブル・ムービーである一方、注目しようと思えば、それ>>続きを読む

ふたりの女、ひとつの宿命(1980年製作の映画)

4.0

イザベル・ユペールを差し置いて常連俳優達の存在感が濃くあるのはマールタによる魔法としか思えない。出産シーンも『ナイン・マンス』のラストの衝撃が尾を引いてか部屋の外で叫ぶ彼女のほうに心が向かう。しかしそ>>続きを読む

コシュ・バ・コシュ 恋はロープウェイに乗って 4Kレストア版(1993年製作の映画)

4.0

ゴンドラの中で男女はゆっくり体を重ね、窓外の景色は恐ろしいスピードで変わっていく。その両方を俯瞰で同時に捉えた画が唯一無二。出入口の穴で足をつっかえ棒にしながら身体のバランスをとる男と、ゴンドラから身>>続きを読む

少年、機関車に乗る 2Kレストア版(1991年製作の映画)

3.0

水面のきらめきがタルコフスキー『僕の村は戦場だった』を連想させてくるほど美しく眼福だった。弟にジャンケンしようと自分から提案したくせに三回連続で負けたら「もういいよ」と余裕ぶりながら不貞腐れる少年のい>>続きを読む

海を待ちながら(2012年製作の映画)

4.0

喪失を抱えながら、誰になにを言われようともひたすら再生を祈るようにして海を目指すフドイナザーロフ版『ユリイカ』みたいな話。とりあえず「船に轢かれる」という文言をこの映画ではじめて聞いた。過激かつポップ>>続きを読む

ルナ・パパ 4Kレストア版(1999年製作の映画)

5.0

"私"をレイプして身ごもらせた犯人を家族ぐるみで探し回るという痛みに満ちた設定を中心にして、こんなにも多幸感あふれるファンタジー的ドタバタ喜劇を作りあげてしまう力業に衝撃を受ける。そういう当時の製作陣>>続きを読む