塩湖さんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

風櫃(フンクイ)の少年(1983年製作の映画)

3.5

床にしゃがみながら恐ろしい数の虫に囲われた魚を捌く女の人がカメラのある方を見つめるところ、絶対ホラーだろと頭のどこかでドン引きしながらもギリギリ「のどかな田舎風景」として享受できるのは、直前までにホウ>>続きを読む

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)

4.5

どうにも抗えない巨大な痛みや苦しみに遅れをとって湧き出る一抹の温かな感情(優しさとは違うもの)が飾るラストにしばし呆然とさせられた。彼を見る眼、見ない眼、見ることのできない眼。まぎれもなく映画でしかな>>続きを読む

トルテュ島の遭難者たち 4Kレストア(1976年製作の映画)

4.0

初めて味わう時間の感覚。遭難者ごっこのためにいつまでも海に浮かぶ船にとどまって島へ上陸できないくだりはなにも起きないし恐ろしく間延びしてるのに、もうしばらく見ていたいと思い続けられるのが不思議だった。>>続きを読む

アデュー・フィリピーヌ 2Kレストア(1962年製作の映画)

4.5

作品そのものの自由度の高さが期待をかなり上回っててよかった。しかし街を闊歩する女性ふたりを捉えた横移動ショットのあの爽やかさはなんだ。撮影現場を映したシーンにも頭でっかちなメタ感は一切なく、とにかく瑞>>続きを読む

バルドー/ゴダール 2Kレストア(1963年製作の映画)

-

最後に『軽蔑』観たの大分昔だな、とか考えながら観ていた気がする。ドキュメンタリーの内容自体は忘れた。

パパラッツィ 2Kレストア(1963年製作の映画)

4.0

キレキレの編集で「皆が撮りたがるブリジット・バルドー」を強調し、映画はパパラッチの男達に視線を注ぐ。片方がカメラを銃に見立てて撃つふりする一瞬にドキッとした。

曳き船(1941年製作の映画)

4.5

荒波に揺さぶられる船の中を捉えた臨場感たっぷりのカメラワークと、救助されてない男女の物々しい会話の内容がこれ以上ないほど重なった序盤の一瞬に恍惚とさせられた。同じ手法をより歪に面白おかしく展開してみせ>>続きを読む

高原の情熱(1944年製作の映画)

3.5

石が次々に地面を転がってくる画が強烈。仮面舞踏会の光景はパッと見は楽しそうだけど裏にある人間関係のもつれをふまえると途端に不気味に。また男が銃を手に取るたびにイヤな緊張感が漂う。全体的にスリラーの味が>>続きを読む

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)

5.0

数年前に原作一通り読んだ身ではあるけど、本編観るまでは花道たちの高校の名前すら忘れてた。試合シーンが基本ずっと凄いので段々と麻痺してくる中それを突き破って「うおっ」と感じさせてくる瞬間がいくつかあって>>続きを読む

ラース・フォン・トリアーの5つの挑戦(2003年製作の映画)

3.5

トリアー「あなたのあの作品二十回は見たよ。そこで今から五回リメイクしてほしいんだ。制約つきで」
レス「(笑)(汗)」

トリアーの「ルール論」に観ているこちら側まで緊張を強いられていく。罰としての自由
>>続きを読む

ボス・オブ・イット・オール(2006年製作の映画)

1.0

映画として見るかコント映像として見るかで評価が変わりそうだが、どちらにしても自分のユーモア汲み取る力が壊滅的なのか全然笑えなかった。それまでにトリアーが作った悲劇調の物語を「笑える」とスカした見方する>>続きを読む

(1985年製作の映画)

4.0

仲代達矢とピーターの映画。スケールが大きい合戦のシーンになると途端に眠くなる変な症状に見舞われつつなんとか最後まで楽しめた。会話で「お狂いなさった」という敬語を聞いたの初めて。空模様から衣装デザイン、>>続きを読む

エピデミック〜伝染病(1987年製作の映画)

4.5

"脚本が病で満たされる"
映画と、映画をつくる人を同じ地平に置きつつ「伝染病」というキーワードをあいだに挟んで事態を少しずつややこしくさせる。シネマ・ヴェリテを虚構に帰すようなトリアー的試み。画面の左
>>続きを読む

エレメント・オブ・クライム(1984年製作の映画)

3.5

捜査ものでこれほどまでに眠気を誘うのも凄い。窓を割る時のスローモーションに備わっている『アンチクライスト』『メランコリア』を彷彿とさせる美しさと躍動感、空き瓶の敷き詰められた謎空間に少女と男性がぽつり>>続きを読む

ノクターン(1980年製作の映画)

-

はじまりの意味深な静止の時間と、主人公が寝返りをうつところしか覚えてない。フィルムで観てみたいなと思った。

ある夏の記録(1961年製作の映画)

3.5

裏方の露骨な企み顔が鼻につくのと同時に、それを凌駕する何かが確かに眩しいのが『人間ピラミッド』と『私は黒人』と本作含めたジャン・ルーシュ作品の色か。道を歩く女性のカットは魔術的なすごみがある。独白を抜>>続きを読む

(1989年製作の映画)

3.5

怖いというより、なんだか具合が悪そうで見ている側が不安になるようなその全体のムードにふしぎな吸引力があったので終始飽きなかった。エディプス・コンプレックスものはこれ位の抽象度の高さでも案外いい。ハッと>>続きを読む

そして泥船はゆく(2013年製作の映画)

4.0

愚豚舎が以降作っていく作品の幾つかの要素をすでに結集させながら高いフィクション性を獲得している、まさに原点と呼ぶほかない美しい一作。丸坊主の渋川清彦の「なにも出来ないからなにもやらない」という怠惰的か>>続きを読む

切腹(1962年製作の映画)

4.5

凄まじい構成。暗い音楽でじりじり観客を責めてくる割に、連続で介錯人が病欠という報告を受けるくだりを挟むあたりはややホラーコメディ的だと思ったけど、主人公のまさかの告白から一気に別種の緊張感が。武士のプ>>続きを読む

七日(2015年製作の映画)

3.5

そろそろ「繰り返す日常」が大田原愚豚舎の十八番だということに気付いてきた。が、何本か観た後だと渡辺紘文という役者をどうもポップに捉えてしまうので、別の人が中心にいる『プールサイドマン』『ヴェクサシオン>>続きを読む

プールサイドマン(2016年製作の映画)

4.5

これぞ映画。渡辺紘文版『エレファント』だ。追いかけられる背中、夜な夜な眼鏡ごしにパソコンを見る目、プール監視員たちの談笑の輪から不意に離れてフレームから外れる身体にたいして「もしかしてこの人…」といよ>>続きを読む

生きているのはひまつぶし(2022年製作の映画)

3.0

今年はじめのスニークプレビュー以来の鑑賞。特段面白いわけではない。絵を描く監督の筆づかいに意識を集中させる時間がいい。大田原愚豚舎初のドキュメンタリーだけど時どき作為が混じっているという旨の裏話をトー>>続きを読む

ヴェクサシオン(2021年製作の映画)

4.5

教室にやってきた子ども達を見つめる主人公が怖いし、そもそも彼に付きまとうエリック・サティという亡霊の存在が途轍もなく怖い。ここにも終わりなき日々の繰り返しが。大田原愚豚舎にあるであろう闇のパートを抽出>>続きを読む

ヨーロッパ(1991年製作の映画)

4.0

この種のトリアー監督作品を初めて見た。主に列車の中で頻発するサスペンス、ドイツ表現主義ともまた違う白黒映像の異様な佇まいに目が釘付け。しかし部分的にカラーを用いるタイミングがまあいい加減で『シンドラー>>続きを読む

小説家の映画(2022年製作の映画)

4.0

至極ありふれた「そんな偶然があるんですね」をおそろしく映画的に切り取る。ホン・サンス一本目か二本目なのにもかかわらず内容におぼえる親しみが尋常ではなかった。キム・ミニの笑顔のバリエーションだけでもいつ>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

ペリカンの大群に捕食されることなく上に昇った「まっしろしろすけ」みたいなヤツらも『君たち』なのか。主人公の心象とリアルな異世界の景色が混在しているような奇妙な舞台のうえで宮崎駿の"あの"快活なアクショ>>続きを読む

わたしは元気(2020年製作の映画)

4.0

大田原愚豚舎の一面として印象に強く残る日常系コメディ。随所にりこちゃんの存在をフルパワーで祝福している映画の美しい態度が垣間見える。監督演じるセールスマン"神宮寺亀吉"の悪徳商法を玄関口にて子どもたち>>続きを読む

ダンサー・イン・ザ・ダーク 4Kデジタルリマスター版(2000年製作の映画)

3.5

空想の立ち上がり方と途切れ方が凄くリアルに再現されている映画。裁判のシーンでセルマについている一人目の弁護士の台詞が綺麗さっぱり省かれてる辺りは、さすがにトリアー自身が作品のムードを悪い方向へと誘導し>>続きを読む

Petto(2021年製作の映画)

-

前見た。枝優花の劇薬。ラストの既視感を辿ったら村田沙耶香だった。『コイビト』とかも映像化できそう。

普通は走り出す(2018年製作の映画)

4.5

冒頭の格好よさにまず圧倒される。新宿の交差点を彩るトリプルファイヤーの『中一からやり直したい』、はじめて聴いたけどなんてシビれる楽曲なんだと思った。監督・渡辺紘文が数多の女優に言葉責めされる。神様に手>>続きを読む

テクノブラザーズ(2022年製作の映画)

4.5

今年はじめのスニークプレビュー以来の観賞。音楽映画、そしてロードムービーの忘れがたい傑作。柳明日菜演じるマネージャーのSっぷりが度を過ぎるか過ぎないか、という絶妙なラインのうえでテクノブラザーズの「動>>続きを読む

眠る虫(2019年製作の映画)

4.0

道を歩く少年のカラダにはじかれる植木の枝や葉がそのとき抱くかもしれない気持ちまで掬い上げたくさせる、見る側の「世界」に対する感度を一気に鋭くさせる一時間とちょっと。ここにきて『耳をすませば』も実は幽霊>>続きを読む

復讐 THE REVENGE 消えない傷痕(1997年製作の映画)

3.5

復讐その1を終えた哀川翔が今回は少女と交流を重ねることで仄かな人間味をちらつかせる辺りに『ターミネーター2』的な雰囲気を見た気がしたけど結局そんなことなかった。最後の最後まで感傷ゼロ。前作ほどの切れ味>>続きを読む

復讐 THE REVENGE 運命の訪問者(1997年製作の映画)

4.0

アンリコ『追想』的な、復讐完了後に主人公を襲うであろう虚無感のようなものが、本作ではその遂行以前からすでに映画を包み込んでてユニークだった。だからこそ「もう止まれない」感が段違い。そして一切の感傷なし>>続きを読む

ペトラ・フォン・カントの苦い涙(1972年製作の映画)

4.5

ペトラとカーリン、それぞれから発せられる言葉が部屋を埋めつくし山のように積もっていくその取り返しのつかなさが憎らしくも美的だった。一言の台詞も持たない秘書マレーネとのくどい対比がラストに敷かれた潔いほ>>続きを読む

遺灰は語る(2022年製作の映画)

3.5

遺灰を主人公とした話として見ると印象は薄いが、遺灰を取り巻く人達の話として見ると味わい深い。棺に小人がいる、という子どもの言葉を発端として大人のあいだに笑いが伝染するくだりはのほほんとしていて和んだ。>>続きを読む