塩湖さんの映画レビュー・感想・評価

塩湖

塩湖

クイーン・オブ・ダイヤモンド(1991年製作の映画)

4.0

監督が「人間」と思うものの博覧会みたいな。賭博、介護、結婚。個人視点の『コヤニスカッツィ』かと錯覚するほど画がいい。カジノディーラーの手という、最も人に見られるだろう手のひとつがとる仕草を執拗にとらえ>>続きを読む

マグダレーナ・ヴィラガ(1986年製作の映画)

5.0

映画でこんなことができるのかと驚かされた。陵辱、あるいは労働、やがて殺人。でもその順番はもはや意味をなさない。リフレインの中に堂々とある差異は、詩が言葉だけのものでないことを訴える。女を撮る。男を撮る>>続きを読む

パリでかくれんぼ(1995年製作の映画)

4.5

画の豊かさに圧されつつも内容がリヴェットにしてはやけに物語然としてて微妙かも、と思った矢先、身体の動かし方・捉え方を知り尽くしてる人の撮るミュージカルがおっぱじまり、なんか凄すぎた。歌がおわったあと互>>続きを読む

地に堕ちた愛 完全版(1984年製作の映画)

4.0

みんな何してんの。本来なら人間の生活のためにある館の部屋を舞台に仕立て上げてたり、演者たちの裏も表も一様にぐだぐだしてたり、文化祭の準備期間かと思った。演じてない状態を演じていることの緊張は『彼女たち>>続きを読む

彼女たちの舞台(1988年製作の映画)

4.5

舞台における演技の中断が何度か発生した先で、彼女たちの暮らしと会話が描かれつつ「中断することを中断している」みたいな奇妙な(しかしおそらく必然的な)時間の流れようが発生していて、なんかリヴェット観てる>>続きを読む

システム・クラッシャー/システム・クラッシャー 家に帰りたい(2019年製作の映画)

4.5

ベニーが遠くの山に「ママママママママママ」と叫んでる時の隣のミヒャの表情が辛い。他者へのまなざしがシステム(教育措置)の中で他者も自分も窮地に追いこんでくやりきれないさまを、役者が力強く、そしてきめ細>>続きを読む

悪は存在しない(2023年製作の映画)

4.0

おもしろい。言葉にすることでようやく浮かびはじめる「こわれた心」の姿と、いっぽうでここぞというときに強く示される謎の両方を楽しんだ。自然界におけるよそ者である自覚をかかげた巧が説明会の空気をそっと転ぷ>>続きを読む

リンダはチキンがたべたい!(2023年製作の映画)

4.5

モラルを欠落させ続け、やがて世界をリンダの「チキンがたべたい」という欲望通りのかたちにねじ曲げるクライマックスには、もう心のなかで頷くしかない。非暴力のストライキとの対比で、これぐらいしていいんだよ、>>続きを読む

異人たち(2023年製作の映画)

4.5

幽霊の口から「怖い」という台詞がこぼれるような映画によわい。大林版は両親の幽霊と会うたび主人公がわかりやすく顔をやつれさせてたが、本作のアンドリュー・スコットの場合「あちら側にひきずりこまれる過程」が>>続きを読む

ゴッドランド/GODLAND(2022年製作の映画)

4.5

死はすぐそこにあると嫌でも感じる映画。犬可愛い、では済まされない。大地の呼吸を隈なくひろう長回しで「ほう」と思わせときながら、馬の死骸が段階的に朽ちるさまをジャンプカットを駆使しつつしかし凝視するよう>>続きを読む

プリシラ(2023年製作の映画)

3.5

出会いから結婚、出産、離婚までを至極シンプルに描いてる辺りに、プリシラという人と、彼女の過ごした時間への敬意を感じる。急に終わってびっくりした。舞台の上で輝くエルヴィスは真正面からはほとんど映されない>>続きを読む

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

4.5

主要人物が作家、という設定がここまで活きた映画が存在するのか。駆け落ち路線がストーリーの紋切り型であることを完璧なほど承知しているノラとアーサーの対話・視線の交流は、毎秒がきめ細かく、そのなかで「韓国>>続きを読む

フォロウィング 25周年/HDレストア版(1998年製作の映画)

3.0

難しい上にちゃんと退屈、という現在のノーランには絶妙にうみだすことのできない(ふつうに予算の違い)状況が続くので見応えはあり。本作に出てくる泥棒の名前が「コッブ」で『インセプション』で夢を盗む主人公の>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.0

オッペンハイマーがトリップ?する演出が痛ましくてすごかった。傑作『インセプション』もキリアンの脳内を描いてはいるが、あれは夢の世界の設計紹介みたいな側面もあるからリアリズムに傾く余地がいくらでもあった>>続きを読む

ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスター(1993年製作の映画)

5.0

あの衝撃的なシーンとさいごの沈黙のくだりを拝むために観に行ったようなものだけど最初から胸を衝かれてしまった。エイダの娘フロラの描写が逐一天才的。心の動揺を隠せないサム・ニールによってふたりまとめて家に>>続きを読む

季節のはざまで デジタルリマスター版(1992年製作の映画)

3.5

過去を想いつづける力が突き抜けて爽やかになってその爽やかさも突き抜けて不気味なグロさにたどり着いてるような映画で充分キモくてよかった。なんだか『夜と霧』と『ジャック・ドゥミの少年期』を同時に思い出した>>続きを読む

デ ジャ ヴュ デジタルリマスター版(1987年製作の映画)

4.5

寝てたのか起きてたのかよくわからない。とりあえず傑作。過去を現出させる、という途方もない作業をしっかり途方もない感じでやってるのがいいんじゃないかと思う。あなたの夢はだれかの現実、ってコピーを考えた人>>続きを読む

アメリカン・スプレンダー(2003年製作の映画)

3.5

ハロウィンに浮かれている近所の連中を馬鹿とののしる少年がカット変わってポール・ジアマッティになった瞬間この映画をひとまず信用してみようと思った。ジャケの時点で何となくぽいなと感じてはいたけどクラムが出>>続きを読む

水の中の八月(1995年製作の映画)

4.5

オカルト×青春が奇跡的なバランスで成立している。先生がフライングで告知する試験問題を生徒らが一斉にメモしている最中、葉月泉は窓の外を見つめながら惑星の軌道をノートに書きつけ、直後にながれるように教室を>>続きを読む

すべての夜を思いだす(2022年製作の映画)

4.5

上半期ベスト確定。見る/見られるの関係性がそれぞれの生活をすれ違わせながらしかし柔らかく繋いでいく。見られてることに一方が気づいていないからこの生活とこの生活はすれ違ったな、と踏んでたら、そのあと全く>>続きを読む

落下の解剖学(2023年製作の映画)

4.5

ラスト十分~十五分位がメインでそれまでの裁判沙汰はぜんぶ序章。そしてその序章が相当凝ってる。印象的だったのは、夫婦ゲンカの録音を法廷で流すくだり。音声は英語で、それをフランス語に訳した文章がモニターに>>続きを読む

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)

4.0

アイリンが「あなたがうちの子だったらよその家に預けないのに」みたいなことをベッドに横たわるコットにささやくのが凄い。だって預かるという行為がそもそもなければ二人は再会することもなかったのだし。言葉の何>>続きを読む

この日々が凪いだら(2021年製作の映画)

4.0

初速がえぐい。いつのまにか恋人同士になってる。なんだコイツら、と思いながら気づけば人生の切迫感が観てる側に伝染する。履歴書に「令和」と書くところを「平成」としてしまうくだりは社会性に振り回される個人の>>続きを読む

イ・チャンドン アイロニーの芸術(2022年製作の映画)

-

コロナ禍における語りの断絶を起点に彼のキャリアをさかのぼっていく。当時リマスタリングが進められていた監督作品についてだけでなく、小説家だった頃のことや、光州事件の記憶なども話に組み込まれていてよかった>>続きを読む

瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.5

この筋書きでなんでこんなに面白くなるの。かつて「老人は死んでください国のため」の句は若者が詠んだものか老人が詠んだものかでその価値がまったく変わると誰かが語ってて衝撃を受けたことがあるけど、この映画に>>続きを読む

ボーはおそれている(2023年製作の映画)

3.5

過剰な作為の連続をもってしか描けない苦しみや痛みがおそらくあるんだろう。ボウを車で轢いた夫婦が彼を助けたあと「ここは私たちの家だけど必要な限りあなたの家」みたいなことを言うのだけど、ボウの顔や腕の擦り>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.5

こういう世界がいい、というかこういう世界じゃなくちゃいけないんじゃないか。本作にある温度感は以前までの映画に対する「抵抗」の証のようにすら思える。光石研のキャラは『ユリイカ』でかつて女性にお茶を出させ>>続きを読む

Here(2023年製作の映画)

4.0

森で再会するシーンが凄い。前作のテーマ「一期一会」から微妙にズレた位置にある人間同士の近くもないし(たまに「近すぎ」と注意して間がちゃんと開かれる)遠くもない(いっぽうが靴のなかの異物を出すために立ち>>続きを読む

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)

4.5

シンプル・イズ・ベストと言うのは簡単だけどここにはかなり複雑な温もりがある。寝過ごさなければ辿るはずのなかった道のり。夜の街からすればイレギュラーな存在としてある彼女はやはり終始"幽霊"のそれと表現し>>続きを読む

アワーミュージック(2004年製作の映画)

4.0

後期ゴダールのポエジーは凶器的。イメージの切り返しの説明方法は『カラビニエ』における写真遊びと地続きのような。ことばと映像を互い違いに重ねてできた織物のなかにただ音楽がある。地獄、煉獄、天国それぞれの>>続きを読む

狂い咲きサンダーロード(1980年製作の映画)

4.5

個人的に共感できないとか、もはや関係ないとさえ思える。ここには魂がある。色褪せたとしても尚痺れさせてしまう。22歳で撮ってるのやばい。22歳だから撮れたのか。この映画の先に塚本晋也の『バレット・バレエ>>続きを読む

ラスベガスをやっつけろ(1998年製作の映画)

4.5

「あいつは神が創った試作品だ/大量生産に向かない強力な突然変異/生きるにも死ぬにも惜しい男だ」

いままでに観たギリアムの作品にはなかった類いのリアリズムを感じた。こんなにもへんてこな映画のなかに。ジ
>>続きを読む

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.5

嘘をつけない、というより、真実しか言えない、というベラの設定が既存の人間世界のあれやこれやを鋭く反射してしまうさまが痛快。現実っぽさを出すためのCGでなくまったく新しい世界を創造するためのCGなのもよ>>続きを読む

バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト デジタルリマスター版(1992年製作の映画)

5.0

こんなに哀しい映画だとは。少女にフェラ顔を要求するのも腕に注射打つのも生きたキリストに叫ぶのもあまりに長くゆるく映されていく。腐りきった社会に生きざるを得ない個人を真摯に描けば、劇伴を用いずとも街なか>>続きを読む

ノスタルジア 4K修復版(1983年製作の映画)

4.5

前に観たときは苦痛しか感じなかったけど、再見したら、まあ傑作。ろうそくを持って端から端まで歩くくだりの退屈だけど不可欠としか思えない映画的な魔法の時間、すごい。最後の最後の「郷愁」を無理やり可視化させ>>続きを読む

(1928年製作の映画)

5.0

風にさらされてるあらゆるモノの存在がはじめて風を画面のなかに可視化させる。その時点でかなりテンションあがるのだけど、最後リリアン・ギッシュの激やば一人芝居がいよいよ「吹かれる」以外の方法も駆使しつつ風>>続きを読む

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