猫道さんの映画レビュー・感想・評価

猫道

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ミラクルシティコザ(2022年製作の映画)

3.2

コザという街とそこに暮らす人々に染みついたライフヒストリーが感じられる青春SFドラマ。コミックのようにポップでテンポがよく、実際に沖縄の俳優を使ってコザの街で撮られているシーンも多く、魂がこもっていた>>続きを読む

赤目四十八瀧心中未遂(2003年製作の映画)

3.5

ゆえあって私は現在無職なので、自分は「社会的な幽霊」であると感じる。平日昼間に自由に出歩けるし、縛るものが金銭の制限しかない。だから、主人公とヒロインがばっちりなタイミングで2人とも(ある意味で)「幽>>続きを読む

恐怖の報酬 オリジナル完全版(1977年製作の映画)

3.8

フィクションなのに苛烈で重い。きっとそれは大掛かりなフィクションだからだ。これを撮った人の執念が染みている。だから気迫や狂気に関してはノンフィクションともいえるかもしれない。序盤で緑の密林に真っ赤な炎>>続きを読む

バニシング・ポイント 4Kデジタルリマスター版(1971年製作の映画)

3.6

後先考えず「やっちゃう」ことを後押ししてくれる(ある意味危険な)作品。異分子である主人公とクソな「世間」の対比が鮮やか。そして主人公を手助けする人たちは皆どこか「世間」からあぶれている。夢があるようで>>続きを読む

花と雨(2019年製作の映画)

3.4

SEEDAのアルバム【花と雨】を元にした自伝的映画。映画の中でプロップスを得る前のSEEDAの暮らしは、姉以外に希望がない。姉は彼が日英両方で感じた疎外感を共有できる唯一の存在として描かれる。名曲【花>>続きを読む

素敵なダイナマイトスキャンダル(2017年製作の映画)

3.6

出自における欠損やコンプレックスが自己表現に影響を与えることは多い。そして、自己表現が人に受け入れられるようになると、人は新たな欠損を作り出す。経験あるので生々しく感じた。

また、映画の内容だけで無
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SLAM(1998年製作の映画)

3.5

日本にもスラム(朗読競技)があって、自分は2015年から8年間スラムの司会をやっています。割と間近でスラムを見てきた人間として感想を書くと、この映画の構成に特に感銘を受けました。

映画の中でスラムの
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ピエロがお前を嘲笑う(2014年製作の映画)

3.8

この監督の冴えてる演出で一つ印象に残っているものがある。部屋の壁に【ファイトクラブ】のポスターが貼られていて一瞬だけ映った。絶対に意図的だと思う。このくらいならネタバレにならないと思い、書きました。こ>>続きを読む

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)

3.9

ヤクザの話というより時代の変化を経て「変わる人」と「変わらない人」の話。(経済的に)衰えていくこの国で(肉体的に)衰えていく自分にとって重いテーマだった。変わることも変わらないことも意識してそうするな>>続きを読む

わたしは、ダニエル・ブレイク(2016年製作の映画)

3.8

劇映画なのに脚色を感じず、ありのままの世界の刺身だと思った。パラサイトやフロリダ・プロジェクトのようなカタルシスは皆無。リアル過ぎて涙も出ない。低収入で難儀してる俺も当事者だ。人と連帯して生き残る。死>>続きを読む

ペンギン・ハイウェイ(2018年製作の映画)

4.1

世界のしくみを知りたいと思うことは知性だ。知性があるから生きてて楽しい。知りたいと思って物事を先へと掘り進むことは冒険だ。冒険には終わりがないし、結末は約束されていない。大人も子どももまっさらな気持ち>>続きを読む

海辺の映画館―キネマの玉手箱(2019年製作の映画)

2.5

主人公達が戦時中にタイムスリップするというあらすじが流布してるが、全く違う。あらゆる弱者が被った戦争の痛みを「観客が」映画を通して追体験するものだった。味つけは極端にダサく粗雑。それでも涙腺はゆるんだ>>続きを読む

HOUSE ハウス(1977年製作の映画)

2.9

大林宣彦監督【HOUSE】を観た。70年代の珍妙なアイドル映画。あまりにコミカルで無軌道なためホラーなのに明るい気持ちで楽しめた。昔の特殊効果は一周回ってお洒落。実写と絵の線引きが一部曖昧で不思議な味>>続きを読む

紙の月(2014年製作の映画)

3.8

角田光代の小説は大好きだが、原作はじわじわと主人公を締め付ける現実描写が不快で途中で読むのを止めてしまった。映画は監督のせいかもっとスカッとした(その分ファンタジーな)印象。小林聡美の「お金では自由に>>続きを読む

ネバーエンディング・ストーリー(1984年製作の映画)

3.4

約30年ぶりに観た。最大の脅威(敵)が「虚無」であることに痺れる。そして、無を克服する手立てが面白かった。何故「ネバーエンディング」なのかといえば現実と地続きだからだろう。声・言葉・想像することの可能>>続きを読む

ヌードの夜(1993年製作の映画)

3.9

好きな映画なので複数回観ている。改めて観ると情念・血液・肌など人間の匂いが強いものと、お馴染みのモチーフである夜・水・ネオン(冷徹なもの)とのコントラストが鮮やか。物語がどうのというより、生花を鑑賞す>>続きを読む

迷宮物語(1987年製作の映画)

3.5

アニメというより映像詩といったほうがよいかもしれない。作品そのものが迷宮入りしており、心地よく別世界に飛ばされた。ぼーっと観ているだけでも楽しい。角川春樹がクレイジーなだけかもしれないが、大手がしっか>>続きを読む

異人たちとの夏(1988年製作の映画)

3.7

今とても心細くて、人生の先行きが見えない。そんな中で観たら涙が止まらなくなった。ちょうど俺が主人公と同じ歳 40歳であることもあって、物語に没入した。9歳の時に他界した父に会いたいな。昨年他界した友人>>続きを読む

茄子 アンダルシアの夏(2003年製作の映画)

3.6

俺が知らない国の、知らない街で、知らないものを食べて、知らないことに熱中した人たちのドラマ。短い時間の中にもその土地で暮らす人たちが重ねてきた歴史の一部が垣間見えて楽しい。46分の弾丸海外旅行。気分を>>続きを読む

極道恐怖大劇場 牛頭(2003年製作の映画)

4.5

一番好きな日本映画。(本当はVシネだが映画と言いたい)

映画には可能性があって、何だってできる。でも、できない。商売だから。この作品は腕のある監督やキャストが本気でふざけていて奇跡のようだ。内容は支
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パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)

4.5

歌舞伎町のTOHOで観た。セルアウトの象徴のような大劇場で娯楽作品の一つのようにしれっと上映されていて痛快。内容は痛快とは言い難いDOPEなもの。笑いつつも笑えない。格差社会のどこにいても何かしら引っ>>続きを読む

凶悪(2013年製作の映画)

3.5

この映画の怖いところは、かなりの悪行・凶行を見せつけられているにもかかわらず、人がボコられていることにどこかスッキリしてしまう自分がいるところだ。犯罪者役のリリー・フランキーとピエール瀧に対してあまり>>続きを読む

孤狼の血(2018年製作の映画)

4.2

びっくりするほど面白かった。ポップでありつつ骨太で熱い人間ドラマ。監督の手腕に痺れた。東映ヤクザ映画の復権を目指して気合いを入れて撮ったという前情報があったが、ヤクザ映画のファンではない俺からしたら、>>続きを読む

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法(2017年製作の映画)

3.5

青空と白い雲、鮮やかに塗られた家々、緑の芝生。そういったフロリダのカラフルな景色と怒号のコントラスト。また、巨大レジャー施設を訪れる人達と低所得者のコントラストが印象に残った。それらを特別に皮肉を込め>>続きを読む

ストレイト・アウタ・コンプトン(2015年製作の映画)

4.0

いわゆる「ギャングスタラップ」の先駆けといえるラップグループN.W.Aの実話を元にした映画。『コンプトンの人間はお金を稼いで何を買うの?』記者のこの質問が印象に残った。当時の人種差別の状況や、暴力で満>>続きを読む

鑑定士と顔のない依頼人(2013年製作の映画)

3.6

名画の真贋を判定するように、人間や人生は割り切れない。言葉にしてしまえばこの一行でおさまるシンプルなテーマの作品だけど、時間をかけてじっくり観る意味のある恋愛ミステリー。あ、全ての恋はミステリーなので>>続きを読む

リグレッション(2015年製作の映画)

3.5

決して奇をてらった怪作ではなく、本当にありそうなところがよかった。事件の全容が予想できてからも引き込まれる人間ドラマの妙。「重厚な茶番」という意味ではコメディでもある。

タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜(2017年製作の映画)

4.1

‪題材は韓国軍により民主化を求める市民が百名以上も殺されたという光州事件。自国の暗部を直視した内容でこんなにメジャー感のある映画づくりができる韓国にリスペクトの念が湧いた。文在寅政権は光州民主化運動の>>続きを読む

エクソシスト/ディレクターズ・カット版(2000年製作の映画)

3.4

近年のホラー映画に求められる「サービス精神」のようなものがほとんどない。実話をベースにしたドキュメンタリータッチの作品のため、登場人物達の人間ドラマがそれなりにきちんと書き込まれており、「怖がらせる」>>続きを読む

ファンタスティック・プラネット(1973年製作の映画)

5.0

人種・年齢・性別問わず、全ての地球人に届く表現。残酷さと美しさに加え、ユーモアも兼ね備えていて見所しかない。最高。

10年ほど前に新宿TSUTAYAでボロボロのVHSをレンタルし、即DVDボックスを
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時の支配者(1982年製作の映画)

3.7

あとからじんわりくるルネ・ラルーのSFファンタジーアニメ。傑作「ファンタスティック・プラネット」でも冴え渡っていた架空の惑星の風景や自然描写が、ややアンニュイな匂いのする音楽とマッチして◎。80分で宇>>続きを読む

どっこい! 人間節-寿・自由労働者の街(1975年製作の映画)

4.2

寿町の日雇い労働者の素顔(自分語り)を収めたドキュメンタリー。撮影にあたって、小川プロのスタッフ達は実際に寿町に長期滞在したとのこと。寿町の住人として様々な人たちと交流をしていく中で、撮る側の目線も撮>>続きを読む

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア(2017年製作の映画)

4.0

サスペンスホラーという括りだが、【ゲット・アウト】などとは違って怪現象に全く説明がないことがひたすら不気味だった。説明がないことは怖い。120分の間、登場人物の力関係がどんどん変わっていき、余裕の底が>>続きを読む

バロン(1989年製作の映画)

3.7

何も考えずに観るのがよいと思うんだけど、観ながら監督の意図を考えてしまった。これはテリー・ギリアムなりの「現実を変えるかもしれないフィクションの可能性への賛歌」なのかなと思った。風船おじさんやドン・キ>>続きを読む

人生タクシー(2015年製作の映画)

3.9

作風が反体制的であることからイラン政府によって映画製作を禁じられているというパナヒ監督の最新作。観ればわかるが『一見すると「タクシー運転手に扮した監督がタクシーにカメラを取り付け、乗ってくる様々な市井>>続きを読む

ゴーン・ガール(2014年製作の映画)

4.6

強大な敵もアクションもCGも不要。夫婦の深淵を覗き込むことが一番危ないし、ワクワクできる。深淵に落ちたのか這い上がったのかわからないラストが秀逸。俳優・ストーリーはもちろんのこと、音楽も映像も全て良い>>続きを読む