pherimさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

ヴェルクマイスター・ハーモニー(2000年製作の映画)

4.4

動乱の予兆漂う町の広場で、息を潜める鯨の巨軀。

寡黙に歩む群衆の弩迫力。立ち尽くす男らの相貌を舐め続けるカメラの異様。低空から男を睥睨するヘリコプターの不気味、耳を圧する羽音の轟き。タル・ベーラが世
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枯れ葉(2023年製作の映画)

4.9

極上。

寡黙なふたりが惹かれ合い、長い時間をかけ距離を縮める。それだけで更けゆくヘルシンキの夜が愛おしい。

なんだろう、哀れなるものたちもボーも凄かったけど、この冬ベストはやはりあなたでしたよアキ
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シチズンフォー スノーデンの暴露(2014年製作の映画)

3.8

香港で密かに行われたインタビューを軸とするドキュメンタリー。登場人物はもっぱら喋るだけなのに、どんなアクション映画よりも躍動的で緊迫感のみなぎる一作。覚悟の静けさ。アサンジも出るよ。



『美と殺戮
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美と殺戮のすべて(2022年製作の映画)

3.7

『美と殺戮のすべて』

現代美術界のスターであり続けるナン・ゴールディンが、オピオイド問題を機に欧米美術館の制度そのものへ叛旗を翻す。

70’s以降のドラッグ/ポストパンク/LGBT文化を駆け抜けた
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ブリックレイヤー(2023年製作の映画)

3.1

レンガ職人が実は腕利きCIAエージェントで、っていう殺人犯追跡物。

ギリシャ開幕の観光アクションを、ダイ・ハード2&クリフハンガーの老匠レニー・ハーリンが撮る座組で2023年は逆に新鮮、かと思いきや
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ペナルティループ(2024年製作の映画)

3.6

同じ男を殺しつづけるループ日乗。

殺人者と被害者が、くり返すうち互いに親しみ感じだすアツき展開&ノワール演出で魅せる。

主演/若葉竜也重畳。久々に見た仇役/伊勢谷友介、佇まいに枯れた感が加わり趣深
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流転の地球 -太陽系脱出計画-(2023年製作の映画)

3.7

“流浪地球2” 🌕

アンディ・ラウの“ジト見”顔が活きる一作。

流浪地球の前日譚で、今度は月がヤバいことになる。デジタル生命へ逃げ込む派とか、三体とも異なる劉慈欣宇宙の展開重畳。2001年宇宙の旅
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戦雲 いくさふむ(2024年製作の映画)

3.7

与那国島/石垣島/宮古島で進む対中国の自衛隊駐屯地整備と、沖縄本島で始まるミサイル網の統括本部運用をめぐる光景を撮る三上智恵新作。

個人的な記憶にも結びつく光景の逐一が軍事色に染まる衝撃と、変化に曝
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アバウト・ライフ 幸せの選択肢(2023年製作の映画)

3.8

結婚を前に煮詰まった男女の両親同士がW不倫状態とわかった対決夜いとおかし。

息子や娘の手前メンツを守りながらも、互いの不実を嘆き合う熟年夫婦4人の演技が絶妙すぎて笑い止まらず。

中でもダイアン・キ
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ビニールハウス(2022年製作の映画)

3.5

老人夫婦の介護で日銭を稼ぎ女が、息子との暮らしを夢みてどん底の現実を耐え忍ぶ日々。

認知症の老妻に暴行されつつ愛する全盲の老夫が、自らの認知症の兆しに怯える流れが、主人公の絶望にぴたり重なる演出は慄
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COUNT ME IN 魂のリズム(2021年製作の映画)

4.2

ロック&ジャズの伝説的ドラマーの系譜を、クイーン/ポリス/RHCP等々立志伝中のドラマー達が熱く語る。

話はアート・ブレイキーら白黒映像まで遡り、キース・ムーンの奏法をスティーヴン・パーキンスが分析
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ブルーイマジン(2024年製作の映画)

3.4

かつて映画監督から性被害を受けた女性が、被害者救済のためのシェアハウスで暮らし、支援活動に携わる中で、未だ同じ監督が同じ加害を続けていると知る。

記憶に濃い幾つもの実例をベースに編まれたストレートな
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ゴールド・ボーイ(2023年製作の映画)

3.7

殺人を目撃した少年&少女が犯人を脅迫する。💰

青春タッチをからめ進行するクライムサスペンス。DV義父を刺した娘(星乃あんな)と逃避行するサイコパス少年(羽村仁成)vsシリアスキラー青年(岡田将生)の
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津島 ー福島は語る・第二章ー(2023年製作の映画)

3.6

阿武隈山中、津島村。3月11日の風向きが災いし、未だ殆どが帰還困難地域であるこの村に、かつて流れた時間の厚み。
何代にも渡って醸成された関係性と文化の網目模様がバラバラに破壊されゆく様、土地を離れ今を
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リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング(2023年製作の映画)

3.8

ロックンロール始祖の一代記。🕺

ミック・ジャガー、トム・ジョーンズらの情熱的な語りが聞かせる。🎙️

黒人+ゲイゆえに長く不遇の時代が続き、エルビス、ビートルズらが絶大な影響を認め、デヴィッド・ボウ
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すべての夜を思いだす(2022年製作の映画)

3.8

盛期を過ぎた多摩ニュータウンを包みこむおっとり時空。🚲

清原惟監督新作。『ひとつのバガテル』に連なる団地映画かつ『MADE IN YAMATO』から続く郊外物で、主役が家から町へ広がりゆく。音と間合
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FEAST -狂宴-(2022年製作の映画)

3.2

不慮の交通事故で、父が息子の身代わりに収監された富裕家族と、夫を失った貧しい妻子たち。

十八番の暴力&政治を封印したブリランテ・メンドーサの衰えぬ冒険心を、一方の主役となるフィリピン・パンパンガ州の
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アジア三面鏡2016 リフレクションズ(2016年製作の映画)

3.0

フィリピンのブリランテ・メンドーサ、カンボジアのソト・クォーリーカー、日本の行定勲によるオムニバス。この3人の組合わせより2017以降の継続に意義を感じた。プラナカン住宅舞台の行定作は、津川雅彦と永瀬>>続きを読む

ストリートダンサー(2020年製作の映画)

3.7

ダンスチームを率いるインド系青年とパキスタン系娘の衝突、そして。💃

初めの群舞が英国旗で飾られた“フランス通り”を舞台に踊られ「あらまぁ」と眺めていると、パンジャーブ地方シィク教徒分断の歴史背負うロ
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コットンテール(2022年製作の映画)

3.5

“ウィンダミア湖に遺灰を撒いて”

病に斃れた妻の遺言を叶えるため旅立つ夫と息子家族。

喪失感も露わな夫役/リリー・フランキーの疲弊顔、妻役/木村多江の儚げな目線、息子役/錦戸亮の浮かべる苛立ちさえ
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すべて、至るところにある(2023年製作の映画)

3.5

セルビア、マケドニア、ボスニア。パンデミック下で行方不明になった映画監督を探す女が見定める旅路。

リム・カーワイ映画常連の尚玄&アデラ・ソーが醸す無国籍な風情と、旧ユーゴ共産主義建築とが響き合って生
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赤い天使(1966年製作の映画)

4.4

従軍看護婦のみたリアル。肉欲露わな戦傷兵を憐れむ主人公の逡巡が、芦田伸介扮する軍医への思慕に昇華する構成が表現する、混沌の底に蠢く情動のうねりは見事。どす黒い血液にモノクロームの強さ想う。終始笑わない>>続きを読む

ロッタちゃん はじめてのおつかい(1993年製作の映画)

3.6

ふくれっ面で元気いっぱいのロッタちゃんが、豚のぬいぐるみバムセを抱き駆け回る。🐖

セーターのチクチクが不満で家出を試みるも、夜の物音が怖くて仕方ない。優しく見守る家族のもと展開する少女視点の描写と感
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ロッタちゃん はじめてのおつかい 2Kリマスター版(1993年製作の映画)

3.8

ふくれっ面で元気いっぱいのロッタちゃんが、豚のぬいぐるみバムセを抱き駆け回る。🐖

セーターのチクチクが不満で家出を試みるも、夜の物音が怖くて仕方ない。優しく見守る家族のもと展開する少女視点の描写と感
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52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)

3.8

孤立する心を、1匹だけ異なる周波数で歌う鯨に喩える町田そのこ原作/成島出監督作。

杉咲花の可憐さに慄える。どん底から希望を見いだすも再び傷つく主人公の心情を、ガラス細工のように脆く儚い笑顔で表現し切
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2つ目の窓(2014年製作の映画)

3.7

奄美が舞台、というより主役の映画。奄美を映す部分として人間模様があるような。あと主人公を演じる吉永淳­の目が凄かった。あれ、窓だなぁ。UAの息子・村上虹郎も良かった。全編眼福の時間が過ごせて大満足でし>>続きを読む

あん(2015年製作の映画)

4.3

樹木希林の穏やかなる凄絶。河瀨直美監督作は内容を問わず画を眺められるので、ハンセン病差別を真っ向から扱う作品と知らずに入館、心底唸った。赦しと偏見、そして解放。真性の粒あん派ゆえ、茹でられる小豆への肉>>続きを読む

(2017年製作の映画)

4.0

視覚障碍者向けの映画音声ガイドに挑む女性と、光を失いつつある天才カメラマン。男の闇を切り裂く白光を、無自覚に放つ女のひたむきさ。

河瀨直美は光の生態を作品の主軸に据える監督だが、本作では音の干満がそ
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玄牝 -げんぴん-(2010年製作の映画)

3.8

自然分娩を尊ぶ産科医/吉村正のもとへ集う妊婦と助産師たち。

薬や機器の人工的な介入を避け、江戸中期の古民家で薪割りを行い、一汁一菜の食をとる妊婦らのお産へ至る表情変化が心に沁みる。音や16mmの映像
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水平線(2023年製作の映画)

3.4

震災で妻を失った福島の散骨業者と一人娘の相克。

海への散骨という近年のトレンドがもつ背景や、漁業へもたらす風評など諸々新鮮で興味深い。

ピエール瀧主演良作『凶悪』で共演した俳優・小林且弥の初監督作
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⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)

3.9

トンネルを抜けたら八つ墓村でした、という横溝正史展開に、墓場鬼太郎誕生への悲史が重なる。

“水木”の名と片目に傷もつ主人公が、戦時下南洋での悪夢から日本社会へ怨念抱く野心家青年、って設定好き。終電ギ
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殺人者の記憶法(2017年製作の映画)

4.2

アルツハイマーの元連続殺人犯をソル・ギョングが演じる、というだけで胸熱のクライムサスペンス。ライバル殺人犯登場による『羅生門』展開が期待値以上に楽しめた。ユーモアとシリアスの切り換え自在な名脇役オ・ダ>>続きを読む

THEWILD 修羅の拳(2023年製作の映画)

3.6

賭博リングで相手を殺し8年の刑を終えた男が、面倒事に巻き込まれて大暴れ。

旧友のヤクザ親分、クズ刑事、相手ボクサーの弟や元恋人など好配置の脚本活きる韓流ノワールで、殊に脱北者犯罪組織の首領役オ・ダル
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ジャンヌと七面鳥(2023年製作の映画)

3.7

13歳ジャンヌは、庭先で飼う七面鳥に唯一心を許す。

バディとなる七面鳥がクローズアップする場面の醸す生理的なグロテスクさに、ドゥニ・ヴィルヌーヴ初期作“Maelström(渦)”も想起され。
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カナダでの暮らし(2023年製作の映画)

3.4

同性婚相手の娘を連れた帰郷。家族へもたらす波紋と、血のつながらない娘との距離の繊細さ。

ソウルメイト(2023年製作の映画)

3.8

幼馴染の大親友ふたりがたどる別離と交錯。

デレク・ツァン鮮烈デビュー作の韓流リメイクは、梨泰院クラスのヒロイン役が衝撃すぎたキム・ダミが10~30代を演じ分けて魅せる魅せる。

済州島とソウルの往還
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