何も起こらない、何かが起こる予兆のような時間がなだらかに続く。
自然という確かな光と不確かなひと。
時折現れる窃視的なカットが冷たい。
タクシー車内を行き来するまだらな光の束と、雪影を見たキムミニの華やいだ表情。
入社初日、社長の妻にビンタされる喜劇から、遠く離れた時間。
何度も流れるテーマが、やけにローファイで古いカシオトーンのよ>>続きを読む
黄色い秋。肌色のニットポロ。
トラ箱という言葉をはじめて聞いた。
「最近の警察は服を配るようになったの?」と妻に問われて服を破かれる。
小雨が降るなかネクタイをしめて、義務のように走る男。
ジェフ・ブリッジスの着てた洋服が汚くて格好良かった。
首元の伸びた肌着、チェックのショーツ、カウチンニット、メキシカンパーカー、でかいサングラス
刑務所の中で弁護士らと打ち合わせをしているシーンの、窓から差し込む大きな丸い光が何故かとても美しく見えた。
彩度の低い映像が心地よく、脚本もビリー・ボブ・ソーントンの顔つきも、自分には興味深いものに思>>続きを読む
ショーパブで大騒ぎするドミニクラブリエ、死んだ妹の洋服箪笥を漁るビュルオジェ(ゾンビ)、足元をうろつく子猫、青い血に卒倒しかかるジュリエットベルト。
楽しい映画。
子どもたち含めて登場する人がみな個性的で面白かった。
実験を完遂できなかったデデンコが最後、言葉もなく静かに枝を折るシーンがなんとなく印象に残った。
オルゴールが流れた瞬間、時が止まったように、自分の中に郷愁や愛おしさが溢れてきた。
特別な時間だと思った。
全てを捨て去ったのに見慣れた景色で絶望した、という台詞が中盤にあったから、ラストシーンは、ここではない何処かへ向かったのだと自分は解釈した。
ドラムの演奏をもっと聴いていたかった。