チッポグラフィアさんの映画レビュー・感想・評価

チッポグラフィア

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メアリーの総て(2017年製作の映画)

3.9


#哀れなるものたち のサブテキストとして再見すると予想以上に物語が重なった。
「フランケンシュタイン」の作者メアリー・シェリーの旧姓はゴドウィン、出産時に亡くなった母はフェミニズムの先駆者メアリ・ウ
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

5.0

死と再生からの覚醒の旅路、そして抑圧する全ての哀れなるものたちからの解放と自由の賛歌。エマ・ストーンの緻密なコリオグラフのような動作、めくるめく表情に心躍り、袖口たっぷりの逆Aラインの衣装が可愛すぎる>>続きを読む

緑の夜(2023年製作の映画)

3.4

ウォン・カーウァイがソウルの路地とネオンで「テルマ&ルイーズ」を監督したような感じ。二人が出会い、ツンデレの後に、イチャイチャして、バイクで疾走するのがひたすらに撮りたかったんだろうな。家父長的で抑圧>>続きを読む

ソルフェリーノの戦い(2013年製作の映画)

4.0

ワンコがかわゆい。
多分老犬のラブラドールレトリバーだけど、いい仕事してる。全然動物映画じゃないし、本筋とは全く無関係だけど、存在感自体が映画にリアルさを添えている。
同じく実際の大統領選挙の現場でゲ
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花腐し(2023年製作の映画)

3.0

映画関連のダメ男が焼酎を酌み交わし、女性の思い出話でくだを巻き、実はそれが同じ女性だったって、まるでホン・サンス(キム・ミニ前)みたいな話だけど、こっちは思いっきり昭和で、ゲスい。原作は未読だけど、ピ>>続きを読む

ファクトリー・ウーマン(2010年製作の映画)

4.0

コミュニズムとフェミニズムが理想主義という同じ畑で育ったのがわかる胸熱な物語。サリー・ホーキンスとロザムンド・パイクといい立場の異なり女性同士が一切対立しない直球シスターフッド映画には泣くよ。

ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)

3.9

都合10時間のドラマシリーズのダイジェスト版のような印象がある。人物も展開もサクサク進みすぎて、背景はフラッシュバックのみでほとんど描かれない。自分は基本的に2時間前後という映画の尺にこだわり続けてき>>続きを読む

キリエのうた(2023年製作の映画)

3.0

作品により好き嫌いが割れる監督だけど、見事にあかん岩井俊二だった。ちなみに好きは「リップヴァンウィンクルの花嫁」とか「四月物語」とかかな。デジタルなルックと編集、ドローン撮影がイキった長いPV みたい>>続きを読む

春画先生(2023年製作の映画)

4.0

監督と作品相性が良くないので、期待していなかったけどこれは掘り出し物。若い無知な女性に年上男性が春画の魅力を教授するというマンスプレイニング全開でオジサン妄想(脚本)のピグマリオン映画なのに、中盤以降>>続きを読む

福田村事件(2023年製作の映画)

3.5

100年のこのタイミングで、劇中と同じ9月同日にこの映画を観たことは忘れないだろう。テーマも明確で、何かときな臭い現在この国にも通じる普遍性を持ち、つくり手のメッセージとして伝わってきた。

ただし、
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あしたの少女(2022年製作の映画)

4.0

「受難」と「救済」ともいうべき二部構成の脚本が素晴らしい。

前半キム・シウン演じる高校生をいかに既存の労働システムが徹底して搾取するのかをドキュメンタリー風にリアル追う。彼女を決してメンタル的に弱い
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クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男(2019年製作の映画)

3.9

デビュー作で凄まじい衝撃を受けて以来、同時代で作品を追体験できた幸福な監督のひとり。作品を振り返るのは、同時に自分の人生のある時期をプレイバックすることに繋がる。作品毎に感じた瞬間瞬間の熱狂を2020>>続きを読む

小説家の映画(2022年製作の映画)

4.0

一見通常運転のホン・サンスなんだけど、
撮影がコロナ禍と重なったのか、
いつも以上にミニマムで、内省的でパーソナルな作品。
隙間だらけに、切り詰めすぎて、画面内に起こっていることよりも、
画面外で起こ
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インディ・ジョーンズと運命のダイヤル(2023年製作の映画)

3.5

全編オッサン接待。
やはりシリーズ4作で、一応キレイに閉じた物語を後付けで、更に続けようとする無理くりさと蛇足感がある。「レイダース」を高校生で食らい、「こんなに面白い映画があるんか!」と何度も何度も
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アシスタント(2019年製作の映画)

4.5

鑑賞後、数日経って、主人公ジェーンは「Jane Doe」であることに思い当たり、再び戦慄が走る。誰でもない彼女であり、同時に誰でもありうる彼女。実際の女性たちに取材した出来事の映像化ではあるけど、当人>>続きを読む

ジョンベネ殺害事件の謎(2017年製作の映画)

3.6

「アシスタント」予習で監督キティ・グリーンの前作。劇映画(フィクション)とドキュメンタリー(ノンフィクション)の境界線に浮遊する視点がおかしい。実際に起こった事件の映像化のためのキャストのオーディショ>>続きを読む

M3GAN/ミーガン(2023年製作の映画)

3.0

ミーガンのダンスとか、四足歩行とか、予告編で見所はだいたい網羅されている。
ジャンル映画に慣れている人なら、繋ぎ合わせたら、観る前でも展開、結末まで脳内再生可能かな。ホラーというか、ターミネーター亜種
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苦い涙(2022年製作の映画)

3.5

ドウニ・メノーシェが後半酔っぱらいながら、半裸でヒョコヒョコと踊る姿にはプチあがった。滑稽だけど、なんか健気に生きている感じがする。でも短尺なのに、舞台劇的な単調展開が長く感じた。ラストへの意図的なペ>>続きを読む

クリード 過去の逆襲(2023年製作の映画)

1.0

ジェネリック・ロッキー、今回もあかんかった。
全編突っ込みどころだらけ。
ノイズが気になって脳が受け入れることを拒否。

●何故ロッキーの存在をこうまで都合よく消せるのか?
(クリードとロッキーが交わ
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ハラ(2019年製作の映画)

3.8

ヒジャブの若い女性がスケボーで走る姿を撮りたかった気がする。イスラム信仰や戒律、家父長制の抑圧の中に生きる少女という主題そのものを数秒のトラッキングショットで表象している。同時に書くこと、作家を目指す>>続きを読む

北の橋(1981年製作の映画)

4.0

取り扱い注意なパスカル・オジェが最高!
「午前4時にパリの夜は明ける」経由で再発見。
基本メンタルがパンク。
目つきが悪く、血の気が多い。すぐにナイフで切り付け、空手のつかい手。
革ジャンは私の鎧、ヘ
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ソフト/クワイエット(2022年製作の映画)

3.6

劇中人物の正しくない言動が胸糞悪いのは作り手が確信犯の仕込みだし、そこは観る方も想定通りの「正しさ」の批評性で反応すれば良い。気になるのは、テーマの特異性が全編ワンカットという(特異な)手法と結びつい>>続きを読む

セールス・ガールの考現学/セールス・ガール(2021年製作の映画)

3.8

パンク・ニューウェーブの青臭さが全開している。渋谷系の頃の洋楽やヨーロッパ映画への憧憬のメンタリティーにも近いな。現在のモンゴルで西欧カルチャーからの影響ってどの程度身近なものなのかは不明だけど、東欧>>続きを読む

不思議の国の数学者(2022年製作の映画)

2.5

数学と音楽、師と生徒、南北分断とミニマムでも面白くなりそうなネタなのに、全体的に娯楽に寄ったTOO MUCHでヤリスギ感あり。くどいキャメラワークに過剰な劇伴、表面的なキャラクター配置とご都合の良い展>>続きを読む

それでも私は生きていく(2022年製作の映画)

4.0

瑞々しいエリック・ロメールのタッチで認知症の親介護の話を描く映画の時代になるとは!しかもロメール作品常連のパスカル・グレゴリーを父役に借り出し、監督自身を投影した娘役をレア・セドゥに演じさせるとは、何>>続きを読む

ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマン(1975年製作の映画)

4.5

実はコーヒー映画。

コーヒー屋という商売柄、
映画のコーヒー描写が気になる。
コーヒーを淹れるシーンがニ度繰り返される。保存缶から豆を出して、電動ミル(プロペラ式のタイプ)で直前に挽く。
ポットにド
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幻滅(2021年製作の映画)

4.0

原作バルザックは未読だけど、現代のSNSについての映画だった。メディア(劇中では新聞)と読者があり、書き手が金の臭いで右往左往に蠢き、話題作りでバズらせ、炎上させる。現政権が「世論」を操るために、都合>>続きを読む

PIG ピッグ(2021年製作の映画)

3.8

仕事を選ばない男の玉石混合だけど、今作は「玉」。監督の役者と物語へのリスペクト次第では、低予算でも傑作となるのね。つくづく映画は撮影と編集のトーンによって決定づけられる。緑を基調とした抑えた色調で不必>>続きを読む

マッシブ・タレント(2022年製作の映画)

3.5

「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」と同じく、ひとりの俳優の虚実(映画と人生)が作品内で交錯するごった煮物語が心地よい。絶対ニコラス・ケイジしかできない役を嬉々と演じている。いじられ>>続きを読む

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)

2.0

しんどかった。
庵野監督の手癖ばかり。
天才と称されながら、思ったより手札が少なく、最近使い回しが鼻につくようになってきた。結局エヴァの人なのか。特撮オマージュというワードでは庇いきれない安っぽいフラ
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コンペティション(2021年製作の映画)

4.0

ペネロペ・クルスがほんと最高。
80年代なカーリーヘアーにとっかえ引き換えシャネルのハイファッションを衣装を着こなす彼女がたまらない。アーティスティックで突飛な行動する変人で強圧的だけど、自己肯定感が
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フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

3.5

演出、演技、撮影、音楽と全て完璧に映画的で、上手いのはわかるけど、ネタがネタだけにジジイに昔話(自慢と自己都合改変込み)すれすれ。大学時代にサークルで8ミリカメラで撮影して、エディターとスプライサーで>>続きを読む

ちひろさん(2023年製作の映画)

2.0

オッサン妄想全開の原作故なのいくらなんでも都合が良すぎる主人公の造型には乗れない。今泉監督もキャラクターにも、物語にも興味が薄く、所詮雇われ仕事な感じがあるようだ。行き場のない感情を自らの投影アバター>>続きを読む

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)

3.0

ロジャー・ディーキンスの撮影も、
オリヴィア・コールマンも見事なんだけど、どうにもしっくりこない。

以下は個人的な邪推。
本来監督は、初老男性と若い黒人女性のメロドラマを描きたかったも知れない。
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バビロン(2021年製作の映画)

3.5

全て過剰で下品。てもそこは確信犯なので、突っ込んでも仕方ない。まぁ高々と直球の映画愛を美しく奏でられると鼻白むので、これくらいの捻れた愛情表現の方が良くかも。破滅へフルスロットルなマーゴット•ロビーが>>続きを読む

対峙(2021年製作の映画)

3.9

教義映画ではないけど、背景には罪と赦しというキリスト教的な世界観がある。神の存在や聖句が会話に直接引用されるわけではないが、やはり基本的な思考OSがそれに準じている。キリスト教の教育を受けたが、熱心な>>続きを読む

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