チッポグラフィア

コンペティションのチッポグラフィアのレビュー・感想・評価

コンペティション(2021年製作の映画)
4.0
ペネロペ・クルスがほんと最高。
80年代なカーリーヘアーにとっかえ引き換えシャネルのハイファッションを衣装を着こなす彼女がたまらない。アーティスティックで突飛な行動する変人で強圧的だけど、自己肯定感が危い。
全編彼女を眺めているだけで心躍る作品。
多分昔なら男性が演じていた役柄を女性に置き換えている。
現在、演技目的のワークショップで強権的なハラスメントを発動させる天才監督なんて男性が演じると全く笑えない。
以前ならバンデラスとクルスの役柄が逆でも成立する物語で、事前情報では「え、逆なの?」と思ったくらい。
さらには、監督から俳優への視線(かつてよくあった男性監督の女優への思慕)をはぐらかすためにクイア設定を加え、俳優役である男性同士を執拗にマウンティングさせるなど、全体ジェンダー構造しかない映画である。でもポリティカルなコレクトネスを追求したのではなく、一見コレクトネスを装いながらも批評性しかないという構造映画。皮肉も多層になり、一周回ると真実みたいなものになってしまうのが面白い。
富裕層の映画パトロンや映画祭での受賞レースへの皮肉など、悪ふざけが加速してたどり着く結末が冗談なのか、真面目なのか。
そんな映画が映画祭に出展されているのがまた皮肉的。