プレコップさんの映画レビュー・感想・評価

プレコップ

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ベンゴ(2000年製作の映画)

3.1

フラメンコ×復讐劇

フラメンコではじまりフラメンコで終わる。スペイン舞台で異国情緒たっぷりの中、黒沢明とロス・プリモス「ラブユー東京」が歌唱される謎場面もあり。

ストーリーはないに等しく、映像と音
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アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師(2024年製作の映画)

3.9

負け顔バトル

主演・内野聖陽の劇団ひとりのような迫真負け顔芸と中井貴一のような余裕、という芸の幅をとくと感じられる映画。「地面師たち」や「コンフィデンスマンJP」のような騙し合いバトルの話ではあるが
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山逢いのホテルで(2023年製作の映画)

4.1

舐めるように、ドライに

登山鉄道、ロープウェイを乗り継いでダムの近くのホテルへ通う女性。その場だけでの快楽と、さまざまな土地の事情を持って帰る表情の満たされている感じが伝わってくる。ホテルの内装はあ
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悪魔と夜ふかし(2023年製作の映画)

2.9

結局「いいとも」のアレが1番怖い

Theつぶろが取り上げてそうな放送系の都市伝説にロストメディアの発掘要素が重なったファウンドフッテージものという個人的に大好物作ということで期待度超高めで観た。
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四月(1962年製作の映画)

3.7

「モノ」は人をダメにする、だからこそミニマルに

生活を豊かにするはずの家具を必要な量以上集めた結果、その材料にする思い出の木が伐採される。その魂がついえたことと連動するように若者たちの愛も薄れていく
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Back to Black エイミーのすべて(2024年製作の映画)

3.3

愛は負けゲー

イギリスのジャズポップヴォーカリスト、エイミー・ワインハウスの音楽伝記映画。映画の冒頭はオールディーズやジャズを愛する普通の女の子のような趣だが、数分で知らぬ間にスター街道を邁進してい
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ECM レコード―サウンズ&サイレンス(2009年製作の映画)

3.8

究極の「音響」への誘い

「無音の次に美しい音」と評されるECMレコードを追うドキュメンタリー。静寂と音の波の揺れを突き詰めるマンフレート・アイヒャーのもと、スタジオのほか教会やコンサートホールなどの
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The Pleasure of Being Robbed(原題)(2008年製作の映画)

4.0

フシギちゃん・エレノアのいる世界

真っ赤なセーターに身を包んだ好奇心の塊・エレノアの数日を追った一作。やっていることはクレプトマニアのそれに過ぎず、どうしようもない人間に見えるが、そんな卑劣な行為に
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八犬伝(2024年製作の映画)

4.1

このチープさに意味がある!

滝沢馬琴の生涯と彼の名著「南総里見八犬伝」を描いた大作日本映画。最初聞いた時は"今どき「里見八犬伝」!?"という戸惑いがあったが、滝沢馬琴と葛飾北斎の友情、そして「フィク
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SKINAMARINK/スキナマリンク(2022年製作の映画)

3.8

無を落とし込むアナログホラー

ビデオテープのような画質で映される闇の中に映像の粒が流れていくことに恐怖を覚えるか、という映画。鑑賞後、英語版Wikipediaに記載のプロットを読んだが、そんなストー
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ロスト・フライト(2022年製作の映画)

4.0

浅くて広いやつ

映画史に残る傑作でもなければ年間ベストに入ったりするわけでもないが、観てる時はただ単に楽しいやつ。人間ドラマとしてジェラルド・バトラーの家族がそこまで深く描かれるわけでもないし、急遽
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サニーサイド(1919年製作の映画)

3.4

低調期チャップリンの白昼夢

たたみかけられる牛のギャグで橋から落ちたチャップリンが天使と共にバレエを踊る有名なシーンが一番印象的。体格差を活かした蹴られ続けるギャグもよかったが、それ以上のものはなか
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ストップモーション(2023年製作の映画)

3.3

内なる悪魔が殻を破る

不気味でグロテスクなストップモーションアニメを制作することで母から抑圧され続けた心の解放を表現するエラの物語。

鈍重なストーリーで退屈してしまったが、後半のたたみかけが凄まじ
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室井慎次 生き続ける者(2024年製作の映画)

2.1

このレビューはネタバレを含みます

宙吊り多発注意⚠️
(ネタバレもしてますので注意⚠️)

前作で起こした話を間の諸々をすっとばして竜頭蛇尾に帰結させていく後編。

君塚良一の脚本は話を起こすのも締めるのも下手、ということを強く認識さ
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小さな私(2024年製作の映画)

3.6

第37回東京国際映画祭・観客賞

脳性マヒを持つ青年が幾多の苦難を乗り越えながら成長していく感動作。理解のある祖母との間ではコメディを、そして彼に対して冷たくひどい態度を取り続ける母との間では葛藤が現
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search/#サーチ2(2023年製作の映画)

4.1

desktraveler

全て画面上で表現される高クオリティサスペンスの2作目。前作に増して様々なツールを使い、アメリカを超えてコロンビアで発生した失踪事件を追う。

文字通りサーチしていくディスプ
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七人の侍(1954年製作の映画)

-

東京国際映画祭の4Kリマスター版で鑑賞。

3時間半の長さに凝縮した圧倒的エンターテイメント。浪人の武士たちが野武士から農村を守る、というだけのシンプルなストーリーながら仲間集め、村人たちとの信頼関係
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ガザ・サーフ・クラブ(2016年製作の映画)

3.5

ガザにて自由を求めてサーフィンをする若者たちを追うドキュメンタリー。

10年前の作品なので今と色々異なる点は多いが、ガザでの暮らし、若者たちへの抑圧があったことはよく伝わってきた。ガザの地理関係、人
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ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた(2022年製作の映画)

3.7

リイシューから始まる音楽物語

Donnie & Joe Emerson主役の映画なんて渋すぎるw
本当に日本公開するのか?コレ

インターネットでにわかに盛り上がったことでレアミュージックディグ界の
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(2025年製作の映画)

3.6

長塚京三の品を前フリにしたSF、コメディ、ホラー

終活もひと通り終え、料理、歯磨き、睡眠と同じ生活のリズムを保ち続ける長塚京三演じる元大学教授が表現と対話の空間を無くし、本当の孤独と対峙したことで異
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フィクショナル(2024年製作の映画)

3.2

変なタイミングで急に始まり、急に終わるU-NEXT版を観た。たぶん、劇場版は8分くらい長いので、そちらとはバージョンがかなり違うと思う。とはいえ、主軸は変わらないと思うのでこちらに書く。

テレ東で挑
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冷たい風(2024年製作の映画)

2.5

「逆転裁判」inイラン

主観カメラで事件の証言者を映し続ける84分。今作での主観カメラに関して、上映後のセッションでいくつか映画の名前が飛び交っていたけど、個人的には主観の主、警部がたまに発言をミス
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わるい仲間 4Kデジタルリマスター版(1963年製作の映画)

3.8

「お前らそんなことやってるからモテないんだろ!」のツッコミ待ち映画。

ユスターシュ監督による非モテ中編。女を口説こうとするも相手にされない青年2人は、とある罪を犯す。どうしようもない男たちのくだらな
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メモワール・オブ・ア・スネイル(原題)(2024年製作の映画)

4.4

ストップモーションで見るセックスとヴァイオレンスてんこ盛りの『フォレスト・ガンプ』

菜園でカタツムリに語らう女性の半生を追う。具体的なストーリーについては触れるのを避けるが、全体的には性と暴力が渦巻
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ヒトラーを欺いた黄色い星(2017年製作の映画)

3.4

ナチスによるホロコーストの時代を生き抜いた3人のユダヤ人のインタビューと再現ドラマ。

ホロコースト時代のドイツに潜伏したユダヤ人生存者の証言をもとに、再現ドラマのような要領で物語が展開される。その内
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“経営学入門”より ネオン太平記(1968年製作の映画)

3.1

お話が散漫としていて、一本の映画としては面白くないけど、昭和関西人のバイタリティを実感できる一作。

高度経済成長期のありあまるパワーと、爆発的な発声かつ滑らかな関西弁によって画面上から迫力を感じる。
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成功したオタク(2021年製作の映画)

3.4

"推す"リスクについてのレポート

昨今の人権意識の高まりによって、世界中で権力者や芸能人による犯罪の告発が多くなっている。その結果、韓国を含めた世界中の芸能界では応援していた、推していたスターが犯罪
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ブリーディング・ラブ はじまりの旅(2023年製作の映画)

3.7

私的な親子ドライブ

親子ロードムービーの中でもなかなかの秀作「グレース」を観た後だったので、暖かそうな気候があるだけで相当救いになっているような気がするのだが、こちらもかなり冷え切った親子関係モノ。
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西湖畔(せいこはん)に生きる(2023年製作の映画)

4.2

マルチにハマるちょいスピママ

茶畑、山に囲まれた自然と暮らす世界遺産・西湖を舞台にその鮮烈な緑の美しさに息を呑む前半パート。しかし、急激にトーンが移り変わり、洗脳されマルチにハマってしまう。

マル
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グレース(2023年製作の映画)

4.5

ロシアという廃墟から--さびついた仕事と人間関係

ポルノの海賊版DVDの売人、移動映画館の興行主としてコーカサスを旅する親子のストーリー。少し前の話なのか、はたまたロシアでは制限されているからかわか
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ナイトメアー・ビフォア・クリスマス(1993年製作の映画)

4.0

㊗️日本公開30周年‼︎
ハロウィン代表、クリスマスの国へ

思ったよりクリスマス映画だし、思ったよりミュージカルだった。クリスマスにいたく感動したハロウィンタウンの王・ジャックはサンディクローズをと
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007 ドクター・ノオ/007は殺しの番号(1962年製作の映画)

3.6

タイトルになってるくせにドクターノオの影が薄すぎる…

007シリーズの一作目、ショーンコネリーボンドの記念碑的一作で、かの名言の初出となったカジノシーンや浜辺のシーンなどシンボリックな場面も多い。が
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水深ゼロメートルから(2024年製作の映画)

3.7

ポカリスエット映画

メインビジュアルを見ての通りの瑞々しい青春映画。元々高校演劇の作品だったこともあって、顔も認識できないほど遠いポジションからのショットが多い。

空のプールに溜まる砂の暗示が上手
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悦子のエロいい話 あるいは愛でいっぱいの海(2011年製作の映画)

3.7

タイトルの通り、エロくていい話…なのか?

城定秀夫のピンク映画。独身男性のゴミまみれの部屋から新婚の小綺麗に変わる狭い小部屋のセット一つ取ってもその演出のこだわりようが伺える。白眉は事故のシーンで、
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侍タイムスリッパー(2023年製作の映画)

3.4

だが、情熱がある

単館上映からじわじわ上映館を広げて、全国上映まで至った今年1のシンデレラ的自主制作作品。斜陽となった時代劇への愛と情熱が映画の推進力になっている。

タイトルやメインビジュアルの時
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HOW TO BLOW UP(2022年製作の映画)

3.9

All You Need is Terrorism

環境破壊への怒りと危機感を破壊行為に込めていく若者たちによるテロ計画の立案から実行までを追うクライムアクション。

倫理観を超えた怒りを持つに至る
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