プレコップさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

成功したオタク(2021年製作の映画)

3.4

"推す"リスクについてのレポート

昨今の人権意識の高まりによって、世界中で権力者や芸能人による犯罪の告発が多くなっている。その結果、韓国を含めた世界中の芸能界では応援していた、推していたスターが犯罪
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ブリーディング・ラブ はじまりの旅(2023年製作の映画)

3.7

私的な親子ドライブ

親子ロードムービーの中でもなかなかの秀作「グレース」を観た後だったので、暖かそうな気候があるだけで相当救いになっているような気がするのだが、こちらもかなり冷え切った親子関係モノ。
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西湖畔(せいこはん)に生きる(2023年製作の映画)

4.2

マルチにハマるちょいスピママ

茶畑、山に囲まれた自然と暮らす世界遺産・西湖を舞台にその鮮烈な緑の美しさに息を呑む前半パート。しかし、急激にトーンが移り変わり、洗脳されマルチにハマってしまう。

マル
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グレース(2023年製作の映画)

4.5

ロシアという廃墟から--さびついた仕事と人間関係

ポルノの海賊版DVDの売人、移動映画館の興行主としてコーカサスを旅する親子のストーリー。少し前の話なのか、はたまたロシアでは制限されているからかわか
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ナイトメアー・ビフォア・クリスマス(1993年製作の映画)

4.0

㊗️日本公開30周年‼︎
ハロウィン代表、クリスマスの国へ

思ったよりクリスマス映画だし、思ったよりミュージカルだった。クリスマスにいたく感動したハロウィンタウンの王・ジャックはサンディクローズをと
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007 ドクター・ノオ/007は殺しの番号(1962年製作の映画)

3.6

タイトルになってるくせにドクターノオの影が薄すぎる…

007シリーズの一作目、ショーンコネリーボンドの記念碑的一作で、かの名言の初出となったカジノシーンや浜辺のシーンなどシンボリックな場面も多い。が
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水深ゼロメートルから(2024年製作の映画)

3.7

ポカリスエット映画

メインビジュアルを見ての通りの瑞々しい青春映画。元々高校演劇の作品だったこともあって、顔も認識できないほど遠いポジションからのショットが多い。

空のプールに溜まる砂の暗示が上手
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悦子のエロいい話 あるいは愛でいっぱいの海(2011年製作の映画)

3.7

タイトルの通り、エロくていい話…なのか?

城定秀夫のピンク映画。独身男性のゴミまみれの部屋から新婚の小綺麗に変わる狭い小部屋のセット一つ取ってもその演出のこだわりようが伺える。白眉は事故のシーンで、
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侍タイムスリッパー(2023年製作の映画)

3.4

だが、情熱がある

単館上映からじわじわ上映館を広げて、全国上映まで至った今年1のシンデレラ的自主制作作品。斜陽となった時代劇への愛と情熱が映画の推進力になっている。

タイトルやメインビジュアルの時
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HOW TO BLOW UP(2022年製作の映画)

3.9

All You Need is Terrorism

環境破壊への怒りと危機感を破壊行為に込めていく若者たちによるテロ計画の立案から実行までを追うクライムアクション。

倫理観を超えた怒りを持つに至る
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釣りバカ日誌(1988年製作の映画)

4.2

追悼・西田敏行

さすが、「男はつらいよ」と並んで松竹看板シリーズとなっただけある。1作目にしてかなりグッときてしまった。

三國連太郎演じるスーさんのみすぼらしいようにも品があるようにも見えるたたず
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浪曲子守唄(1966年製作の映画)

3.8

チバとサナダ

千葉真一演じる賭博のイカサマ師と真田広之演じるその息子の親子愛を描いた任侠劇。ハードボイルドな雰囲気のある任侠ものも、子どもがいるだけでガラッと雰囲気が変わる。

千葉真一の妻にして真
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劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:Re:(2024年製作の映画)

3.8

夏から秋にかけての劇場総集編後半。

前作よりもキャラクターに対して愛着がある状況なので、すんなり入り込めた。日本のアニメ特有の凝りに凝った細かすぎる背景がすごく、小田急線のシーンがかなり気合入ってい
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ぼくのお日さま(2024年製作の映画)

4.0

あたたかさとさびしさ

北海道の冬の美しさを真空パックにした映像が素晴らしい。めちゃくちゃ寒いはずなのにあたたかさが光として伝わってくる。

フィギュアスケートをしてみたい少年、でも習い事はアイスホッ
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結束バンドLIVE 恒星(2023年製作の映画)

3.1

完全に場違いだとは思いつつ、せっかく劇場総集編を観たので数ヶ月前にアニマックスで放送していた本作の録画を観た。

結束バンドのライブというより、メンバーを演じた声優4人のライブといった趣。主に喜多役の
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EO イーオー(2022年製作の映画)

3.9

ロバのロードムービー

EOはただの無邪気なロバなのに、人間に勝手に意味や役割を見出されたことで波瀾万丈な旅を経験することになる。

スコリモフスキ映画を観るのは「ザ・シャウト」以来で、変な映画を撮る
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ヒューマン・ポジション(2022年製作の映画)

3.8

淡々と、豊かな映像のなかの二人

可愛らしい子猫と可愛らしい色彩の家でゆったり過ごす二人の女性の時間が愛おしい。でも、アスタは家の外では基本的に無気力な表情を貫いていて、牧歌的で平和なだけではない物憂
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シテール島への船出(1983年製作の映画)

3.6

リンゴは腐ってしまった…

歴史を撮ってきたアンゲロプロスが歴史を背景に、"人間"を撮った転換点となる一作。政治的理由で迫害された老人が32年ぶりに帰郷するも、変わってしまった故郷に馴染めず再び追われ
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劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:(2024年製作の映画)

4.0

ライブの空気感!熱量!

テレビアニメは観ていていなかったが、今作はその総集編と知ったので観た。同じアニプレックス、CloverWorks作品の「トラペジウム」の毒を知っているので、人間関係や夢を追う
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ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ(2024年製作の映画)

4.1

ダンサー・イン・ザ・ダーク

社会現象となったアメコミ界のアンチヒーロー、「ジョーカー」の続編。「ジョーカー」という強烈なフォルムと役割を持ってしまったアーサーは、そことの乖離に葛藤を抱く。

前評判
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I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ(2022年製作の映画)

4.0

「フェイブルマン」にはなれないけど…

2003年、カナダ郊外に住む映画オタクローレンスの話。映画をはじめとしたエンターテイメントへの造詣が深すぎる彼は唯一の親友・マットとともに毎土曜に「SNL」を楽
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天使の復讐(1981年製作の映画)

4.7

45口径の女

犯された発話障がいの若い女性が復讐の鬼に変わっていくストーリー。荒削りなプロットから爆発力が生まれており、殺戮シーンの鮮やかさに見応えがある。エレベーターを使った仕掛けから鮮血を暗喩す
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室井慎次 敗れざる者(2024年製作の映画)

1.8

日本映画界随一のビッグバジェットシリーズの、ひさびさ回帰作。

予算をかけまくって規模を大きくすることに固執してきたイメージのあるシリーズだが、今作は秋田を舞台にミニマムな作風になっている。かなりワン
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ゼロの焦点(1961年製作の映画)

4.2

日本海の景色、暗黒の旅路

夫を見送る妻を映し続けるオープニングがあまりにも渋カッコ良すぎてしびれた。日本海、能登の寒々しすぎる景色と共に日本の暗部を発端にした悲しき事件を追いかける。

のちの「ある
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フィルムエイジ:ザ・ストーリー・オブ・ディセンデンツ/オール(2013年製作の映画)

3.8

パンクロッカーなのに化学者、パンクなのにメロディアス、だから型破りで最もパンクの精神に近い

ゴリゴリのパンク全盛の時代にポップミュージックに接近したメロディアスなサウンドでパンクそのものを壊しにかか
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永遠に君を愛す(2009年製作の映画)

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地獄の花嫁

結婚式を舞台にしたシュール&ブラックコメディの小品。安心感をもって進行していた祝祭の日、新婦・河井青葉の抱えていた秘密が偶然の産物である謎女・菅野莉央の登場によって漏れていく感じ。しかし
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Cloud クラウド(2024年製作の映画)

4.2

罪のグラデーションに"積み"ゲー

「転売」という薄くてセコい罪を重ねていた男がより強大な罪の力に引き寄せられるまでのストーリー。

安く瀬取りした医療機器を高く出品した後の菅田将暉演じる吉井の動きが
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ドミノ(2023年製作の映画)

4.3

ジェネリック「インセプション」のクセに本家より面白い

ハッタリと違和感天国のベン・アフレック主演作。「ヒプノティック」とかいう胡散臭さこの上ない設定がストーリー設計に穴と隙を作りまくっており、それが
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クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ栄光のヤキニクロード(2003年製作の映画)

4.1

とっちらかりシュール

アニメ史、映画史に残る作品に続くシリーズ11作目。朝からほとんど何も食べてない野原一家が夕食の焼き肉までの道を邁進する。

国民的アニメの劇場版作品なのに相当わかりにくいプロッ
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ペトラ・フォン・カントの苦い涙(1972年製作の映画)

3.9

ファスビンダーのドールハウス論

演劇のように限られた舞台での心の動きを切り取る一作。ドールハウスの中で、様々な女性たちが配置される。しかし、その外側にいる男性にすべて操られている。バービーやリカちゃ
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ラストマイル(2024年製作の映画)

3.4

このレビューはネタバレを含みます

すべての伏線が回収されたがりすぎている

「エイリアン:ロムルス」の直後に見たので、悲哀たっぷりな仕事映画として同じ箱の作品として観てしまった。配送センターのディストピア感はこの手の映画で代々受け継が
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エイリアン:ロムルス(2024年製作の映画)

4.4

ブラック企業からの脱出

重力のON/OFFのギミックが執拗に繰り返され、無重力空間に変化した途端に奴隷のような状況からの解放感を提示していく演出のシャープさが白眉。

諸々の設定は「エイリアン」を観
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エイリアン(1979年製作の映画)

4.6

宇宙一壮大なゴキブリ退治

卵から孵った遠き星の謎の生物に襲われた隊員を"任務"と"友情"のため宇宙船に招き入れたことによって起こる恐怖の連鎖。あまりに禍々しいエイリアンの造形は昆虫のようであり、女性
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D.I.(2001年製作の映画)

3.8

「パレスチナの情勢を前フリにしたコント集」

として表すと語弊があるような側面もあるが、実際にそこの緊張と緩和を用いたコントがいくつかある。例えば、リンチかと思ったら蛇を仕留めていたり、病院で深夜にタ
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スクール・オブ・ロック(2003年製作の映画)

3.9

シンプルな『ヒットマン』

『ヒットマン』の公開が始まったので、リンクレイター監督の代表作を観た。『ロックンロール・ハイスクール』など、ロック×学校の作品はいくつもあるが、小学校が舞台となっているのは
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アンナ・マグダレーナ・バッハの日記(1967年製作の映画)

3.6

究極のバッハ映画

ほぼ全編にわたりバッハ作曲作品の演奏シーンが続く映画。楽曲の間に妻・アンナ・マグダレーナのナレーションが挟まる程度で、画面に映るのも俳優ではなく本物の古楽器奏者たちであるというのが
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