浄土さんの映画レビュー・感想・評価

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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.0

オッペンハイマーがプロメテウスに例えられたように、原爆は近代アメリカの神話に他ならない。国民のアイデンティティ、勝利のアイコン、叡智の炎、ひいては文化的支柱にもなり得る。そりゃマス目線でミームにだって>>続きを読む

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

インフィニティ・プールって、本来的にはシンガポールのマリーナベイサンズにあるような縁のない(ように見える)ラグジュアリーなプールのことらしいですね。へえ〜。

プール、雨、そして海。本作で強調されるの
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パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

4.5

司馬遼太郎の『アメリカ素描』で文化と文明の違いを論じる章がある。「文化とは不条理で、特定の集団にのみ通用する特殊なものであり、普遍的ではないもの」と定義していて、文明とは逆に合理的・機能的・普遍的なの>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.8

街は今、眠りの中。人は皆、悩みの中。夜が明けるそのとき、あの鐘を鳴らすのはあなたかもしれないし、わたしかもしれない。誰かが永遠に続くかもしれないと絶望した闇夜は、巡り巡ってまた違う誰かの光明になり得る>>続きを読む

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

2.0

TikTokのマッサージASMRとか、1.5倍速くらいの再生速度でちゃっちゃか部屋掃除していくやつとか、粛々と居酒屋で一人飲みするのとか、そういうの好きでよく見ちゃうんですよ。この映画、まさにそれでし>>続きを読む

瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.4

劇中劇構造の映画って個人的にかなり博打で『ニュー・シネマ・パラダイス』ですら「はあ…?」って感じだったのだけれど、さすかにビクトル・エリセの新作となると問答無用で見なくては!という義務感すら生まれてし>>続きを読む

ファースト・カウ(2019年製作の映画)

4.2

かつて立川談志は「主君のために討ち入りを果たした四十七士の物語が忠臣蔵ならば、落語はそこに参加しなかった残りの赤穂浪士を描いた物語だ」と語っていた。メインを張れない人たち、逃げた人たち、落ちこぼれた人>>続きを読む

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

特攻を恐怖で諦めたとき
戦後の焼け野原で守るべき存在ができたとき
死にたくない、死ねない、生きたいと強く望んだそのとき
ゴジラはお前の眼前に現れる
やっと自覚した生への渇望をいとも簡単に蹂躙してくる
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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

4.4

あったまからつま先までの、衝撃の愚鈍さ。

熊に屠られたり、ランボルギーニに這いずり乗車したり、骨相学とやらで奴隷を非道に扱ったり、闖入者に火炎放射を放ったりと、昨今の一皮も二皮も剥けたレオ様の役者っ
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マーベルズ(2023年製作の映画)

2.2

穴だらけのプロット

今更マジカルニグロ扱い?とも思えるほどに都合よく配置されるモニカ・ランボー

ドラマ自体は面白かったが本作に上手くコミットしてるかと言うと微妙なカマラ

頭打ちを迎えたキャロル・
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バービー(2023年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

冒頭でパロられた『2001年宇宙の旅』の第一章に"The Dawn of Man"(人類の夜明け)という副題がついているのはご存知の通り。勘のいい人ならこの時点でグレタ・カーウィグの本作に対するスタン>>続きを読む

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

4.7

選ばれてあることの 恍惚と不安と 二つ我にあり

ヴェルレーヌ / 智慧

※※※

『バビロン』や『エンパイア・オブ・ライト』など、ここ最近劇場公開された「映画を題材にした映画」の中では頭2つ3つ抜
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ベネデッタ(2021年製作の映画)

4.3

オランダという国家が伝統的に持つ思想的・宗教的な寛容さを「ネーデルランセ・トレランティ」と呼ぶのだとか。かつて国家ぐるみでキリスト教のアンチとなってガッチガチに鎖国してたウチんとことも唯一交易があった>>続きを読む

バビロン(2021年製作の映画)

2.8

語るに足らん小童デミアン・チャゼルのハリウッド黄金期絵巻
映画好きであればあるほど肩透かしを食らう質量の軽さ
象糞のほうがまだ中身詰まってるぜ

ネトフリオリジナルくらいでちょうどよかったんじゃないの

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

4.0

アイルランド内戦が文字通り対岸の火事だった頃、本土から離れたイニシェリン島でも中年戦争の火蓋が切って落とされた。

雄大な自然と、長閑な動物と、昼間っから馴染みのパブで飲み干すパイント。

都会の喧騒
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THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)

4.7

諸君
ゴールすることが美しいのではない
シュートする、その行為が美しいのだ
勇気を持て
強く祈れ
無駄なシュートなんか、一本もない
―エリック・カントナ―

バスケ映画の感想の引用にフットボール選手を
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NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

4.0

かつてアメリカにはニッケルオデオンという小規模な映画館があった。かれこれ100年くらい前の話なのでラインナップは当然サイレント映画だけで、単なる風景映像や日常の記録映像のような、現代の感覚では映画作品>>続きを読む

トップガン マーヴェリック(2022年製作の映画)

4.7

愚直と言えるほどに映画体験の醍醐味を追求する姿勢。なんで時間と金と命の危険をかけてまでわざわざこんなことをやっているんだ、と一笑に付されることも多々あるだろう。しかし自分はこのような造り手の情熱を「虚>>続きを読む

ブラッド・イン ブラッド・アウト(1993年製作の映画)

4.4

遂に廉価版でDVDが再発された!しかしこの話題になってなさっぷりはなんなんだ。

スタンダードサイズ180分一本勝負。
元々は5時間あったらしい(!)

ヒロインも一切登場せず、母親以外の女っ気ほぼ0
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THE BATMAN-ザ・バットマンー(2022年製作の映画)

4.1

バットマン二年生のブルース・ウェイン君、兎にも角にも陰気過ぎる。こんなに非社交的でノブレス・オブリージュに後ろ足で砂かけるような金持ちのスーパーヒーローがいてたまるかと思う反面、オーバーキル上等で復讐>>続きを読む

ゴーストバスターズ/アフターライフ(2021年製作の映画)

3.0

もう過剰なノスタルジーは勘弁してくれと言いたい。

新たなジュブナイルとしての方向性を打ち出していて、ポッドキャストは「多分こいつ50歳くらいになってもこういう感じなんだろうな」っていうくらいキャラ立
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ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

4.3

真っ先にこれは言っておきたい。3時間弱のランニングタイムで様々なレイヤーを重ねた構造の作品でありながら、鑑賞後の疲労感がほぼないの凄くない?鑑賞直後の心境としてはちょっとしたデトックスのようですらあっ>>続きを読む

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊(2021年製作の映画)

2.6

フィックスの画面構成を人物やらセットやら字幕やらでギチギチに詰め込んだ代物を「ポップ」の一言で済ませるのはいくらなんでも浅はか過ぎない?

徹頭徹尾不親切で演出も野暮ったいところが目についたし、ウェス
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ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償(2020年製作の映画)

4.5

昨年のアカデミー賞で作品賞にノミネートされたにも関わらず、日本では劇場未公開でビデオスルーという到底理解不能な仕打ちを受けた本作。遅ればせながら配信にて鑑賞。

実話に基づくブラックパンサー党の物語で
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さがす(2022年製作の映画)

4.1

このレビューはネタバレを含みます

『空白』のあの子に似てるなあ…と思ったらまさに本人だった。あのときはスーパーから走って逃げて、今回はスーパーに走って向かっていくという偶然の対比。大阪の子役として、池脇千鶴や谷村美月の系譜にまた新たな>>続きを読む

クライ・マッチョ(2021年製作の映画)

3.2

あれ、これって『ミッドナイト・ラン』じゃね?と思いながら途中まで見てた。

イーストウッドなら下の方。ニック・シェンクが本書いてこの有様???と思ったけど、イーストウッドに白羽の矢が立つまで二転三転し
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スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(2021年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

あれ?東映版スパイダーマンは???

冗談はさておき、冒頭のチャーリー・コックスカメオ出演からおそらく全スパイディー総出演は決定的なのだろうなあと予想はしていたが、やはり実際に揃うとリアルタイムでサム
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パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)

4.5

牧場主で、大卒のインテリで、ラテン語も喋れて、バンジョーも上手い…完璧超人に見える人物は、傲慢さや非情さをも兼ね備えたマウンティングおじさんだった。現実社会にもこういう輩は少なからず存在していて、嫌な>>続きを読む

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