Lisa

西部戦線異状なしのLisaのレビュー・感想・評価

西部戦線異状なし(2022年製作の映画)
4.0
ドイツ目線の戦争映画は初めてでしたが、武力と愛国心の裏にある危うさと残酷さに怯まずに焦点を当てた作品でした。
ヒロイズムが一切ない地に足の着いた作品でありながら、リアルな演出に拘り抜いたアンビシャスな作品でもあり、制作側の想いが伝わってきます。
前線に立つ兵士の血みどろ・泥まみれな姿と、上級大将の裕福な生活が、それぞれ異世界であるかのように明確に区別されて写し出されます。

Inglourious Basterdsのナチス役のDaniel Bruhlが出演しており、今回は所謂「悪役」ではないのだと脳内変換する必要はあります。

プロパガンダに洗脳され盲目的に従う少年たちと、現実を知りながらも美談のみ語り彼らを戦場に送り出す上官たち。
最も恐ろしいのは戦場での殺戮そのものよりも、一部の人間のアジェンダによって大量の命が失われ得る集団としての愚かさではないか。
そんな問いを投げかけるような作品で、鑑賞後もしばらく後味が残るような感覚でした。
決してハッピーな気持ちにはなりませんが、見て良かったと思える作品です。
Lisa

Lisa