メキシコの映画界を世界レベルで有名にし、Iñárritu監督の名を知らしめた作品。
犬を介した暴力・死をめぐるシーンが多く、鑑賞中に思わず動物愛護の観点で問題ないのかチェックしてしまうほどでしたが、ネット上の情報によれば麻酔と編集により抵触しない形で制作されたようです。とはいえ、メキシコをはじめ多くの国で違法となっているドッグファイトを生活の一部として描いている点においては公開時点で物議を呼んだようです。
背景にあるカオスな街並と主人公の生活から伺える貧富の差、悪事に手を染め生計を立てるサバイバル意識、情熱と欲のまま行動する様子から、ハリウッド映画では描かれないようなラテンアメリカ特有のメンタリティを感じました。そして自分の属してきた文化圏や価値観からは直感的に理解できないような行動に対しても、その裏にある意図や執着に対して共感できるような心理描写の繊細さと巧みさを感じました。
愛、社会格差、そして犬に象徴される忠誠心というテーマの重さからして決してハッピーな気持ちにはなりませんが、見応えのある作品です。
