Lisa

アシスタントのLisaのレビュー・感想・評価

アシスタント(2019年製作の映画)
3.9
Me Tooの火付け役となった某大物映画プロデューサーを彷彿とさせる作品。
当の本人は声以外一切登場せず、第三者のイメージに惑わされず最小限のノイズで鑑賞できるようにした制作側の意図が伝わってきます(それとも、誰かをキャスティングし画面に映し出すことで何かを示唆してしまうリスクがあるのでしょうか。業界の闇は図りしれない...)。

多分、こういう人は思っている以上にたくさんいるんだろうな。
ここまで大胆ではないけど、仕事で似たような人を見たことがあるなぁ...権力と金が絡むところに必ずといっていいほど闇が生まれるのは、業界を問わずなんだなぁ...。
成功するか失敗するか、名が売れるか売れないかが、ほんの一部の人間の意思決定によって左右される歪んだ構造に囚われると、人間はエンパシーの欠如した極めて殺伐とした関係性になっていく。
それがstatus quoになり、上はmonsterになり、下はenablerになり、各人が無意識に加担する組織犯罪に発展していく。
そんな現実をセンセーショナルに描写するのではなく、地味な業務を日々こなすアシスタントに焦点を置き、一貫して地味に描いています。
その平凡さ、退屈さ、あたかも日常生活の一部のようにすら感じられる実態が、返ってその恐ろしさを物語っています。
映画としてのエンタメ性は低いものの、事の重大さを受け止め敢えてそのように作品を構成したスタンスには納得できます。

台詞が少ない中でしっかりと表情で感情表現ができるJulia Garnerの演技は相変わらず圧巻。
SuccessionでTomを演じたMatthew Macfadyenが板についた嫌なコーポレート役を演じていましたが、今後こういう路線でいくのかな。
同じくSuccessionでJessを演じたJuliana CanfieldやKarolinaを演じたDagmara Dominczykも登場します。
Dagmaraはもはやピントが一切合わないのが勿体ないですが(The Lost Daughterで素晴らしかった...)、彼女が最後にエレベーターで放った一言がこの作品のテーマの象徴ともいえます。
"Don't worry. She'll get more out of it than he will. Trust me."
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