Lisa

ロスト・ドーターのLisaのレビュー・感想・評価

ロスト・ドーター(2021年製作の映画)
4.0
Jake Gyllenhaalの姉であり女優のMaggie Gyllenhaalによる監督デビュー作。
プロットからして一般受けはまぁまぁな気はしますが、批評家からは好評となるような要素を確りとおさえた計算し尽くされた作品だと思いました。
原作の著者が女性で、脚本も監督が自ら手掛けており、作品全体を通して女性ならではの視点と感性が十分に生かされています。

監督の役者としての経験値もあるのでしょうか、とにかく配役がspot onで、何よりOlivia Colemanが圧巻。
彼女の違和感のある行動や時に挑発的な言動、ぼんやりと見つめる表情さえも何か得体の知れない怖さを帯び、一種の破壊力のようなものを感じさせます。
その若かりし頃を演じたJessie Buckleyも素晴らしく、容姿は全く似ていませんがふとした仕草や表情(特に最後、娘からの問いかけに答えず静かにコートを着て去っていく時など)から同様の空気が伝わり、同一人物として不思議と違和感のない組み合わせになっています。
Dakota Johnsonも元々の謎めいた雰囲気を生かした役柄ですが、台詞が少ない中でも目を通した感情表現によりぐっと引き込まれます。
他にもPaul Mescalの素朴で親しみやすいキャラクターや監督の実の夫でもあるPeter Sarsgaardも見どころです。

一般的な「母性」を持たず、道を外れた選択をした女性は何を感じ生きているのか。
それは誰でも一度は経験する葛藤や我慢や閉塞感と重なります。
その是非を問う訳でもなく、シンパシーを持ちつつも目を背けずありのままを描く本作は、社会の求める良き母親像と自らの乖離を感じる女性にとって、共通項としてスクリーンに映し出されるだけでも価値があり、ある意味救いになるものではないでしょうか。

決してハッピーなストーリーではないですが、緻密でクオリティの高い作品であり、監督の次作が楽しみです。
Lisa

Lisa