Junichi

すずめの戸締まりのJunichiのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.6
「いつしかと待つらむ妹にたまづさの言だに告げず往にし君かも」

大伴三中
『万葉集』445

【作画】10+
【演出】8
【脚本】9
【音楽】9
【思想】10++

本作品を観て
新海誠監督も
3.11の非当事者として
これまでたくさん苦しんできたのだと
そう感じました

新海監督は当日
東京の麹町の仕事場で
『星を追うこども』の大詰めの作業中でした

私自身も東京におりました
東京も激しく揺れました

地震からのあの津波
映像を目にして
ただただ「逃げて!」と
叫ぶしかありませんでした

非当事者は
次の日から
あるいは数日後から
日常に戻るしかなかったのです

新海監督も
『星を追うこども』の公開に向け
日常の作業に戻るしかなかったことでしょう

なにもできない
そんな無力感、罪責感を抱えて
生きてきた(いまも生きている)
そんな人がたくさんいます

震災の被害にあわれた方々も
そうした方々を受け入れた家族や自治体の方々も
そうした方々の心の声が聴こえてくる作品です

そして
そのことを隠さずに描くことで
鎮魂し
扉をきちんと閉じる
そんな作品です

本作品
舞台が宮崎から始まるのに
熊本地震をまったく扱っていないこと
また
まだまだ生々しい3.11の記憶(トラウマの体験)を呼び覚ますことに
感情的なまでに批判的な方々もいらっしゃるかと思われます

そのように感情的になることは
実はとても大切なことです
ここまで見越して
この作品は創られていると思います

この作品は
グリーフワークをテーマにしつつ
受け取り手のグリーフワークも行います

扉を閉じる物語というより
扉を開けてから閉じる
扉を閉じ直す手伝いをする
そんな物語です

「もう一度きちんと扉を閉じ直しましょう。そして、未来を向きましょう。
来るべき南海トラフ地震、首都直下型地震に備えましょう。」

そんなメッセージを受け取りました

地震と無縁ではない日本に住む
すべての人々に本作品をオススメします
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