Junichi

市子のJunichiのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
4.0
「その日々は猛烈な痛みを伴いながら、胸が燃えるほどあついあついものでした。」

杉咲花

【撮影】9
【演出】8
【脚本】6
【音楽】9
【思想】8

役者が物語を喰ってしまった作品
杉咲花の凄さが
物語の構成や脚本の不備を吹き飛ばす

とある出生をめぐる問題から
名前を変えて生きざるをえなかった女性
市子をめぐるそれぞれの視点からの物語

法的な不備によって
社会的に不遇をかこつマイノリティ
その哀しき生をミステリ調で描きながら
映画後半ではノワール物に展開します

この展開に賛否が分かれるかもしれません

そのように人生を選択せざるをえなかったということと
自らの意志で選択すること
この転換が物語の構成にチグハグな印象を与えます

つまり
その罪に情状酌量の余地があるか
あるいはその余地が無いか
という違い

とある人が
「ヒロインには同情はしても、共感はしない」と言っていました
自分も同感です

社会的弱者が社会に復讐するのではなく
個人的な願望から新たな罪を犯す

女囚さそりには
復讐すべき強烈な動機がありました
本作には
こうした過程が全て描かれるわけではないので
観客の想像力が要求されます

本作を観て感じたことは
絶望に瀕した人間に希望を見せると
このうえない悪人(悪女)になるということ

本作品を観ながら「んっ?」と思うことも多かったのですが
やはり杉咲花という役者を見るためにも
本作品はオススメです
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