Junichi

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実のJunichiのレビュー・感想・評価

4.2
「言葉は言葉を呼んで、翼をもってこの部屋のなかを飛びまわったんです。その言葉を、言霊を、私はここに、とにかくここに遺して、ここを去っていくんで。これは問題提起にすぎない。私は諸君の熱情は信じます。これだけは信じます。他のものは一切信じないとしても、これだけは信じるということを、分かっていただきたい。」

【撮影】10
【演出】8
【脚本】9
【音楽】5
【思想】10+

三島由紀夫を
「三島先生」と思わず言ってしまって
「三島さん」と言い直す木村修さん
真面目で微笑ましいです(笑)

その際の三島由紀夫の笑顔がとてもチャーミング
死を決意した人間の笑顔ではないかのよう

ただ
この討論会のとき(1969年5月13日)には
三島由紀夫はすでに自決(1970年11月25日)を意識はしていたと思います

討論会後に
楯の会に勧誘する電話を
三島が木村氏にしたとのこと
三島由紀夫は真面目な人間が好きだったのでしょう




弁が立ち芝居がかった恫喝もする芥正彦氏
一見するとカリスマ性があるように見えますが
こういう(モラハラ)人間が一番危ない

彼の娘さん(赤ん坊)がじっと三島由紀夫を見ています
彼女が存命であればいまは50歳代
どんな人になったのでしょうか
お父さんのことでさぞ苦労されたでしょうね

芥正彦に対する三島由紀夫の態度
慈愛に満ちた父の
子に対する態度のようで
他者の思想や存在を尊重する
とても紳士的なものです

本作では73歳になった芥正彦氏が出てきます
相変わらずで
はっきり言って周囲にいたら面倒くさい人物

若者のときは反権力でもよいでしょう
しかしこのままで老齢になったら
「はい」以外の受け答えを許さない
非常に権威主義的な人間に堕ちます
(いわゆる老害)

三島由紀夫が最も嫌悪するタイプの人間です

こういう若者が老害化するという
よいモデルケースになります(笑)




小阪修平氏による
「天皇」概念をめぐる三島への質問
哲学の素養のある人物による鋭い指摘です

小坂氏の質問によって
東大全共闘と三島由紀は思想的にはまったく対立しておらず
ただ「天皇」という言葉(概念)をめぐる疑似的な対立にすぎないことが明らかになります

これは
『実録・連合赤軍』と
『三島由紀夫と若者たち』の
若松孝二監督もおっしゃっていたことです




1925年生まれの三島由紀夫が
もし現在生きていたら聴いてみたいこと

・レヴィナスの思想を踏まえたエロス的他者論について、彼はどのような意見を持つのか?
・資本主義の成熟に伴って生じた様々な問題を目にして、それでも共産主義とは折りあいがつけられないのか?

三島由紀夫
やはり時代が早すぎたのでしょう

自民党も
立憲民主党も
共産党も
(もちろんNHK党も)
嫌いな人にオススメします(^o^)
Junichi

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