Junichi

茶飲友達のJunichiのレビュー・感想・評価

茶飲友達(2022年製作の映画)
4.1
「正義を不当に愛する人たちには、恋愛をする権利はない。」

アルベール・カミュ

【撮影】8
【演出】8
【脚本】9
【音楽】7
【思想】9

第37回高崎映画祭にて観賞
本作品は
最優秀脚本賞と
最優秀主演俳優賞を受賞しました

生(性)と死をめぐる
高齢者と若者たちの物語
超高齢社会を迎えた現代日本
高齢者の性の問題は避けて通れなくなりました

とある大学の
とあるAssistant Professorが
高齢者の集団自決によって
来たるべき超高齢社会の問題の解決を
冗談まじりに提言したのも記憶に新しい

どれほど知識を深めようとも
どれほど研究業績をあげようとも
どれほど名を売ろうとも
とどのつまり人間は
手前の半径5メートルでしか思考できないのかもしれません

そこを超えていくのが
想像力であり共感能力
そしてそれらに基づいた創作です

【正義】という言葉があります
欧米の諸外国語をみると
主な意味は「(法律上の)正しさ」になります

しかし【正義】には【義】という言葉が含まれています

【義】は道徳的な「善さ」という意味です
「正しさ」と「善さ」が常に一致していれば何の問題も生じません
しかしかながら
この両者が常に一致するわけではないことは
それなりの大人になるとよくわかります

岡本玲さん演じる本作品の主人公が行っていたことは
確かに正しいことではありません(違法行為)
しかしながらそれが同時に善くなかったことだと断言するには躊躇します

法の網目をかいくぐって善いことをする人物は古今東西いました
義侠や侠客などと言われます

令和の現在
こうした人はほとんど見なくなりました(義無きチンピラは相変わらずいますが)
義も廃れてしまい
義憤にかられてやむにやまれず直接行動を起こすこともなくなりました

本作品はこうした時代に対して
改めて【正義】について考えることを要請します

高齢者の孤独や性が描かれますが
若者たちの生きづらさや
親子関係などを通じて
家族の意義や役割が問われます

決して観やすい映画ではありません
『万引き家族』を観て様々に考えた人
社会福祉に関心があり
来たるべき超高齢社会を問題視している人
これらの人にオススメします
Junichi

Junichi