ヒムロ

ヴィーガンズ・ハムのヒムロのレビュー・感想・評価

ヴィーガンズ・ハム(2021年製作の映画)
4.5
ヴィンセントとソフィーは寂れた肉屋を経営する夫婦。
肉の品質はいいが経営に苦しんでいて夫婦関係も冷え切っていた。
そこへ追い打ちをかけるかのようにある日、過激派ヴィーガンが店を襲撃する。
借金がかさみ離婚を決めた二人だったが、道端で事件の犯人を見つけ、引き返そうと車をバックするも偶然轢き殺してしまう。
警察にバレずに捨てるために解体した死体を、間違って店に並べてしまうもこれが大当たり。
肉はたちまち人気になり、二人は“狩り”で肉を仕入れることにする。


相当に悪趣味な類のブラックジョーク映画だが、信念を感じる脚本で非常に良かった。

映画自体は90分と短めで、コメディベースで見やすい。
序盤はヤキモキするような展開も多いが、後半には狩りの映像とリンクした演出も面白い。
とにかく出てくる奴らが嫌な奴ばかりなので主人公夫婦に感情移入しやすいのもグッド。
極端な性格ばかりの登場人物だが、コメディにして成立させている。
子豚や去勢した豚が美味いというジョークはスウィーニートッドを思い出すオシャレさがある。

こういう映画では最終的にヴィーガンにも良い人はいる的な所に着地して終わるかと思いきや、出てくるヴィーガンはほとんど嫌な奴ら。
というかむしろヴィーガンと肉屋が嫌な奴らと言うべきか。
ラストもきっちり夫婦は悪として描きつつも、過激派のヴィーガンも悪として描ききるのが最高。
制作サイドの「人殺しも過激派ヴィーガンも悪党だよ」という信念が聞こえる。

夫婦が段々と狩りを通じて寄りを戻していく展開は、ありがちで悪くはないが特別な良さはない。
ただソフィーのキャラが抜群にサイコで立っていて、殺人夫婦の妻って本当にこういう感じなんだろうなぁと思える。
冷たく厳しい一方で、調子がいい時は眩いばかりの笑顔で可愛い。
こういう所が連続殺人に至った理由の一つだろうなと思える要素。


余談だが、人肉は食べると人間の体で増えれるウイルスや寄生虫に感染する可能性があるので食肉には向かないらしいっすよ。
ヒムロ

ヒムロ