ヒムロ

女神の継承のヒムロのネタバレレビュー・内容・結末

女神の継承(2021年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

タイのイサーン地方、村人たちが崇拝する女神バ・ヤンに取り憑かれた巫女ニムを取材するドキュメンタリーチーム。
しかし取材中にニムの姪であるミンの体に異変が起きる。
バ・ヤンが依代を変える兆候だと聞いた取材班は女神の継承を記録するためにミンを追うことにするのだが、事態は悪化の一途を辿っていくことになる。


海外産とは思えないほどの超正統派ドキュメンタリーホラー。
ほんとにあった呪いのビデオシリーズなどから確実に影響を受けているであろうカメラワークや演出はジャパニーズホラーそのもの。
ジャンプスケアはおろか怖いシーンもほぼない、ただただ不穏なだけの嫌な時間がずっと流れているこれがJホラーじゃなければ何なのか。
タイの田舎の話という異文化も相まってこの手の映画の完成系なのではないかというレベルに仕上がっている。

テーマは信仰と呪い。
先祖から受け継いできた呪いの皺寄せを受ける少女という、理不尽すぎる設定がまたいい。
売春婦、酔っ払い、犬の霊など悪霊ちゃんぽん状態のミンの狂い方はバリエーションに飛んでいて見応えがある。

そして信仰。
タイの多くの人が信仰している仏教と、土着の信仰が混ざり合う特殊な環境。
バヤンを裏切りキリスト教徒になったノイや巫女を馬鹿にするミンなど、割と現代的な価値観というか否定的な考え方の人が出てくる。
それでいてタイ仏式の葬儀や自殺は肯定しないなど仏教的な慣習は日常に根ざしている。
非常に日本にも近いように感じるのが面白い。

バヤンが負けたのかという点については個人的には負けたのではなく裏切ったのだと解釈した。
神は様々な神話で不遜で横暴で気まぐれで残酷な物として描かれるのも一種定番と化しているが、バヤンも正にそういった神々の1人だと感じた。
自身を邪険に扱ったノイとミン、そして信仰が揺らいだニムを切り捨てて悪霊たちの神に寝返ったのだと思う。

信仰は人々を救うが、同時に間違った物を崇めると身を滅ぼす。
現代社会に通ずるメッセージを感じた。
ヒムロ

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