ダイアン

意志の勝利のダイアンのレビュー・感想・評価

意志の勝利(1935年製作の映画)
3.0
もともと女優として活躍していたレニリーフェンシュタール。当時は山岳映画が多く、イケメンクライマーと麓で暮らす女性の恋的なストーリーがもてはやされたそう。ベタだ。
それを思ったのは最初のシーン。空撮、飛行機に乗って空からヒトラーがやってくる。神々しく。高地や雲を見下げるような極地での撮影経験があったことを感じさせる。あの始まり方によって、冒頭からすでにヒトラーの神格化に成功していた。以後も高さを利用したカット、青い空とヒトラーというカットは多用される。

インスパイアされた作品を探すと面白そうなほど、群衆や党大会の整然としたカットは美しい。スターウォーズの帝国軍とかロードオブザリングとかきっと酷似したカットはあるだろう。
40台ものカメラ、数千人規模のエキストラを用意できる体制もさることながら、それらを手足のごとく使いこなすレニの器量を感じる。しかも紅一点。

戦後には「私は美しいものが撮りたかっただけ」「政治的な思想は全くなかった」などと発言を繰り返す。客観的に聞けば当然理にかなわないのだが(時に統制された政治は芸術的であり、社会を写す芸術作品から政治思想を汲み取ることができるから。というかそれはそもそも受け手の判断に依拠する)、一方の強靭な批判や非難がレニに与えた負担ゆえの反駁目的の発言にも思える。
併せて「これは純粋なドキュメンタリーよ」とも発言がある。その意味を考えると不純なドキュメンタリーとは何なのだろうか。対象と撮影者の関係性を描くのがドキュメンタリーの性質であるとき、たしかにこの作品にはヒトラーに魅了され、またヒトラー自身も全面的に撮影協力を惜しまなかった2人の蜜月とも思える関係性がしっかりと切り取られている。
ダイアン

ダイアン