ダイアン

WAVES/ウェイブスのダイアンのレビュー・感想・評価

WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)
3.0
360度、カメラはゆっくりと辺りを見渡す。エメラルドの海上を走るクルマに恋人たち。遮るものは何もない。世界は心地よいほどに広がっているし、僕らはそれを自ら見ることができる。
特徴的なカメラワークは「ROMA」で観た水平にパンする動きを思い出す。今自分が生きる世界は横に長く広がっていて、手に触れて通じ合うことができたり、全く異なる瞬間を過ごしていたりする。

大抵は一方向から撮ったあと、次は逆側から引き目にしてみたり、サイズとアングルを変えながらその場らしさを切り取っていく。時にそれは神の目のごとく自在で僕らが見ることのできない幅で対象を見つめるから、際限ない表現を生む。
「Waves」のカットはどちらかといえば人の目のようだ。向かっていったり、並走したり、見渡してみたりしながら、段々と空間やキャラクターを理解していく。鮮やかな色彩が段々と目に入る。気づけば遠雷や夕日が感情と溶け合う。

画面の縦横比すら時に変えながら、断片的にも思えるストーリーテリングはまるでインスタやTwitterのよう。けど華やかさが覆いきれない苦しみや脆さが物語を繋げていく。
「ムーンライト」のように脚本は抑制的だが、音や画が言葉にできない世界を浮かべている。それはリツイートやlikeマークからは見えてこないだろう。
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