ダイアンさんの映画レビュー・感想・評価

ダイアン

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コロンバス(2017年製作の映画)

3.5

小津の影響を多分に受けていることがありありと伝わっている。ほぼ全てフィックス画は当たり前と言わんばかり。手持ちカットは一切なく、切り替えしたとしても第3第4とカットを広げていかない。
撮り方も役者の演
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ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

3.0

オープニングになんの意味があるのかといえば、最小限の説明で最大限まで映画の世界に観客を引き込むこと。「ケイコ」の冒頭5分は素晴らしかった。リズムを奏でるようなミット打ち。淡々と、小さな世界にも見える街>>続きを読む

ノマドランド(2020年製作の映画)

4.0

若い頃からロードムービーや世界を旅した人の自伝が好きだった。あらゆる制約から自由で、予定調和でなく、驚きと発見に満ちていた。教科書や先生が教えてくれない人生での大切な学びの場でもあると思った。こうした>>続きを読む

JUNK HEAD(2017年製作の映画)

4.0

今の日本でサイバーパンクのアニメ映画を撮ろうと言って誰がカネを出してくれるのだろう。元々はサブカルのお家芸だからとNetflixなら札束積んでくれるのだろうか。そんな甘くはないだろう。よっぽどの著名な>>続きを読む

ミッドサマー(2019年製作の映画)

3.5

当時まだアラサー映画監督だったアリ・アスターの早すぎる成熟作品(今もまだ34歳か・・)。ストーリーで多くの推測や物議を醸しているようだが、最も目を引いたのは映像美だ。
世界のあらゆる新興宗教やカルト、
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mid90s ミッドナインティーズ(2018年製作の映画)

4.5

なぜA24作品は、ここまで鮮やかに人々の痛みを描くことができるのだろうか。個人を圧倒する絶対的な暴力性でもなく、冷たい地下水のようにヒタヒタと足元に流れる静かな恐怖でもない。
描かれる痛みはどこか静か
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タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜(2017年製作の映画)

4.0

隣の国の出来事や歴史を僕はあまりにも知らない。海を隔てるだけでこんなにもわからなくなるものなのか。それともオトナは小さな僕らに教えようとしなかったのか、あるいは無意識に自ら知ることを遠ざけているのか。>>続きを読む

あん(2015年製作の映画)

4.0

河瀬監督は光をいつも大切にしているように思う。何気ない風景や草木のカットに、何かが映り込んでいるようにいつも感じてしまう。
カミサマというと少し大袈裟かもしれないけど、ご先祖様なのか、彼岸からこちらを
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ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)

3.5

ナチス関連の映画を系譜立てて網羅できているわけではないが、近年負の歴史へのアプローチの方法が大きく広がっているように感じる。
「帰ってきたヒトラー」ではコミカルさを交えてその不穏さと狂気を振り返ったが
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行き止まりの世界に生まれて(2018年製作の映画)

4.0

過ごしてきた時間の積み重ねに勝るドキュメンタリーはないと思う。友人同士が一緒の時間を過ごし、成長し、ときにぶつかり、そして共に街をスケートで駆け抜ける。
「当たり前に奇跡的な今」が詰まっていた。僕はそ
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WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)

3.0

360度、カメラはゆっくりと辺りを見渡す。エメラルドの海上を走るクルマに恋人たち。遮るものは何もない。世界は心地よいほどに広がっているし、僕らはそれを自ら見ることができる。
特徴的なカメラワークは「R
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37セカンズ(2019年製作の映画)

4.0

前半がめっぽういい。障害、裸、母子家庭、アニメ、性、、、震災以降顕著に露わになったマイノリティや社会的弱者をサブカルチャーと共に描く。そのひとつであっても脚本を書くだけで困難だが、むしろ情緒に走らず正>>続きを読む

精神0(2020年製作の映画)

2.5

このレビューはネタバレを含みます

想田さんの映画の良いところはオープニング。静かにその世界にいつの間にか入り込んでしまう。毎回そう。気づけばカメラが自分の目になり、気づけばその場に自分も居合わせたように感じる。常日頃私たちが無意識に行>>続きを読む

音楽(2019年製作の映画)

4.5

一番すごいと思ったのはカットワーク。とてもモダンだなと思った。背景を動かさないフィックス、2Dゲームのような並行垂直移動、主人公が見えづらいほどの引き画、そして音楽が鳴り響く場面での3次元的な動き。走>>続きを読む

ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)

3.5

オールドスタイルな雰囲気を楽しめる演出にしながら、実際に今の世界で起きていることを大胆に練り込む。「万引き家族」「パラサイト」と世界の格差や貧困を語る社会的な映画が多く見受けられるが(当の映画監督たち>>続きを読む

アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル(2017年製作の映画)

2.5

この映画の最高なところは登場人物が全員実在のダメ人間達であり、そのアンサンブルたるや見事すぎること。自分勝手に鳴らした音がなんの因果か偶然にもアバンギャルドな名曲を紡いでしまったような、奇なる事実を見>>続きを読む

アド・アストラ(2019年製作の映画)

3.0

宇宙の未知と父の不在、そして世界の終わりがシンクロする。自分とは何かを問うことが世界の行方を左右する物語はかつてのセカイ系のよう。限りなく内省的な自問自答と欲望のとめどない人間社会の不協和音が通底し、>>続きを読む

オール・ザット・ジャズ(1979年製作の映画)

3.5

1979年。思えばこの年は「地獄の黙示録」公開であり、クイーンやボブマリーが来日公演をしている。この時点でどこか現実と幻想世界の境界が揺らぐし、戦争やドラッグやセクシャルマイノリティが異界の入り口を開>>続きを読む

ジョンベネ殺害事件の謎(2017年製作の映画)

4.5

ドキュメンタリードラマでもドラマ風ドキュメンタリーでもない、その間に新たな演出を見つけた凄い作品。舞台はジョンベネ事件のドラマを作るオーディション。

まず、オーディション参加者が各々の意見や推理を話
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ジャンゴ 繋がれざる者(2012年製作の映画)

4.0

「ワンスアポンアタイムインアメリカ」もそうだったがタランティーノの演出は本当に時間の長さを感じさせない。いらねーなこの演出とか、いらねーなこのシーンも、一切ない。それは多分、シーンを積み上げて最後に向>>続きを読む

少女邂逅(2017年製作の映画)

2.5

脚本がよく、蚕のモチーフと少女のつながり(途切れ)がよくリンクしている。カメラがうまい。映像の撮り方が明確だから編集にもテンポが出ている。主人公の友人(いじめっ子)のキャラクターが弱いのが少し戸惑う。>>続きを読む

運び屋(2018年製作の映画)

2.0

安定のクリント作品という印象。
「時間なんだ。いくら金で買えるものはあっても時間だけは買えない」という法廷での台詞がハイライトか。
抑揚をつけすぎないカットと編集が今回も活きていた。とてもわかりやすく
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ビューティフル・ボーイ(2018年製作の映画)

3.5

全体を見終わってみると、福祉映画という印象が強かった。中盤までは思春期の混沌とした心理感情の中で、具体的な意味もなく薬物にハマっていく姿と、父子のあまりに魅力的な関係や距離感は心地よい雰囲気を生み、何>>続きを読む

バイス(2018年製作の映画)

2.5

クリスチャンベールに特殊メイクを施しすべての演技をさせたことは凄く魅力的。実際ゴールデングローブ賞だ。
しかし、アカデミーにそんなにノミネートするほどか?エイミーアダムスはどうだったか?

ブッシュの
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コレット(2018年製作の映画)

2.5

最近、マイノリティの切り取り方の感覚がよくわからない。つまり、普通の表現であれば良いと思ってしまう。「Bohemian Rhapsody」が大々的にヒットした背景にマイノリティロックスターの存在を再発>>続きを読む

勝手にふるえてろ(2017年製作の映画)

3.0

登場人物は全員、名もなき人たち。イチとニはそのまんま数字だし、ヨシカとクルミは名前があるようで、あなた誰だっけ?と共に扱われているので無名の存在。そしてオカリナ、フレディ、駅員、コンビニ店員・・・。>>続きを読む

ALONE アローン(2016年製作の映画)

1.5

中盤から終盤に向かう幻覚と過去が入り混じる演出が面白い。ぶっ飛んでんなぁーと思いつつ、むしろリアリティだ。今際の際に人が見る走馬灯のように記憶が入り乱れる。スポーツ選手でもゾーンに入るとあらゆる事象が>>続きを読む

ブラックパンサー(2018年製作の映画)

2.5

スターウォーズのオマージュが心地よい。新しいmarvelの物語でありながらも、洒落が効いている。大作モノでマイノリティが前に出るテーマほどユーモアを活かしたフックのつけ方で上手く馴染ませている。ハレー>>続きを読む

ムーンライト(2016年製作の映画)

4.0

黒人社会にある静的な生きづらさ、セクシャルマイノリティ。ヒューマンドラマの新しい舞台を感じさせる。長回しとインサート。連続した物語でありながらも、僕らが生きる日々の断片的な情景を掬い取る映像が心地よい>>続きを読む

15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)

3.0

本人たちが演じてて凄いけど映画的には暇、という旨の感想が多い気がする。
クリントイーストウッドは現代アメリカ社会や今を生きる若者の肖像を丁寧に掬い取るために常に革新を模索してるし、そのためにニヒリズム
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わたしは、ダニエル・ブレイク(2016年製作の映画)

4.0

最後のシーンは静かながらも、強い。人を殺して制度を生かす、とはまさにこのことか。
格差とそれに対処する仕組みが蔓延し、代わりに例外を許さず人への尊厳を失い、なめらかにオートマチックに「解決」へ向かい、
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ROMA/ローマ(2018年製作の映画)

4.0

だれか、アルフォンソキュアロンのことを嫌いにさせてください。と言いたくなるくらい、物凄い作品。
自分にとって好きな映画はどんな要素があるかと考える。「複雑な世界とそこで生きる個人への眼差し」「芸術表現
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ボヘミアン・ラプソディ(2018年製作の映画)

3.0

「なぜボヘミアンラプソディは異例のヒットしたか」はネット記事で語られ尽くされているようにも思え、そのどれもなんとなく納得ができる。性的マイノリティ、人種的マイノリティといった今日的なテーマも時代と呼応>>続きを読む

意志の勝利(1935年製作の映画)

3.0

もともと女優として活躍していたレニリーフェンシュタール。当時は山岳映画が多く、イケメンクライマーと麓で暮らす女性の恋的なストーリーがもてはやされたそう。ベタだ。
それを思ったのは最初のシーン。空撮、飛
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ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ(2018年製作の映画)

2.5

「最後の追跡」「ウィンドリバー」そして本作もそうだが、テイラーシェリダンの描く舞台はいつも辺境だ。地理的な意味もだが、勿論現代社会という視点において「行き詰まった土地」である。一歩ずれれば人間社会の手>>続きを読む

ヘイル、シーザー!(2016年製作の映画)

3.0

芯食ってくるかどうか。ツボを押さえてくるかどうか。映画にとっては大切なポイントだ。ミステリーを観るとき、ディズニーを観るとき、必ずそこにあるツボを観客は意識して、出たり入ったりする。映画は裏切りと伏線>>続きを読む

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