ダイアン

アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダルのダイアンのレビュー・感想・評価

2.5
この映画の最高なところは登場人物が全員実在のダメ人間達であり、そのアンサンブルたるや見事すぎること。自分勝手に鳴らした音がなんの因果か偶然にもアバンギャルドな名曲を紡いでしまったような、奇なる事実を見つけてしまった。

真っ先にキャストにはマーゴットロビーが浮かぶし見事にその怪演をトーニャにシンクロさせていた。ウルフオブウォールストリート、スーサイドスクワッド、存在の危なっかしさを孕んだ若いアメリカ女性の演技ではピカイチか(だからこそワンスアポンアタイムインハリウッドがまた輝く…危なっかしすぎるのに、生き残るのかよ!)。
もはや死ぬほど練習したとしか思えない表情の演技も見事。演技の外にも演技が滲める役者はそういない。

しかしトーニャの存在は我々のもつアスリート像を大きく覆す。およそ伝統と保守で固められ「理想のアメリカ人像」を求めるアイススケート界において貧困家庭で生まれ、暴力と共に育ち、ダイナーの仕事で食いつなぐ。社会の底辺や困窮から逃げるための唯一の道がスケートであり、それは多くの途上国のスポーツ選手への憧れをアメリカも孕んでいること。格差と反抗心が常にセットアップされて時限爆弾のようにチクタクと今日もどこかで鳴り響いているだろう。誰にやれと言われたわけでもないのに彼らは拳を振り回す。ここに平穏はなく、闘わなければいけないことを知ってる。自分の弱さすら呪わなければ生きていけない。
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