ダイアン

勝手にふるえてろのダイアンのレビュー・感想・評価

勝手にふるえてろ(2017年製作の映画)
3.0
登場人物は全員、名もなき人たち。イチとニはそのまんま数字だし、ヨシカとクルミは名前があるようで、あなた誰だっけ?と共に扱われているので無名の存在。そしてオカリナ、フレディ、駅員、コンビニ店員・・・。
個性があり、好きなものや苦手なものがあり、仕事や家など今の居場所があり、オリジナルな人生を生きているように一見思える。でもそのほとんどが名前すらない存在であることを痛烈に突きつける。

これだけたくさんの人たちがいるにも関わらず、そのほとんどを私たちは全く知らない。それはものすごく悲しい現実に思えるが、同時にどこか可笑しくもある。自由さでもある。脳内で想像ができるから。名前がないからこそ、想像力の居場所があるとも言える。少なくともそういう人は確かにいる。
知ってしまったり関わってしまった途端、想像力は現実という巨大な壁の前に行く手を阻まれる。生きづらくないか。本当に面白い人生ってどっちか。現実に向き合え、戦え、と言うのか。

松岡茉優が演じるヨシカ自身が、爆走と急ブレーキを繰り返す。ひとりで勝手に震え続けている。まるで社会性を持たない彼女だけが、体感を持って「人生に震えている」と見えなくもない。嘘偽りない想いなのか、最後になんとなく手繰り寄せられていくのだろうけど、あんまりそこに興味はない。

孤独を笑う映画だと思った。最悪だなと思う現実と肩を組んでヨチヨチ歩く人生を、ケラケラ笑えばいいんだと思う。
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