ダイアン

ボヘミアン・ラプソディのダイアンのレビュー・感想・評価

ボヘミアン・ラプソディ(2018年製作の映画)
3.0
「なぜボヘミアンラプソディは異例のヒットしたか」はネット記事で語られ尽くされているようにも思え、そのどれもなんとなく納得ができる。性的マイノリティ、人種的マイノリティといった今日的なテーマも時代と呼応するし、事実に忠実な視点を大切に高い再現性で描き出すことも、話題の拡散に大きく寄与するだろう。「We will rock you」が参加型というのも、なんか、あぁなるほど。
最後のライブエイドは映像を観るというよりもライブ体験そのもの以上であるし、かつて知ったるライブをいかに蘇らせるか、ドローンやアクションカムを彷彿させるカットを上手く混ぜ合わせている。それは当時は撮れなかったカットワークであり、ディテールや物語性を強めている。「Ay-Oh」なんかはその代表で、フレディは「大観客と対話ができる」稀有な才能がよく伝わってくる。
それは彼の持つ孤独と呼応するように、彼が本当に求めたのは富や名声ではなく「みんなと話したい、一緒になりたい」というカタルシスすら感じさせる。

今回最も良かったのは、TOHOシネマズ新宿の音響。ドルビーアトモスで初めて鑑賞したが、これはクセになる。今年はライブやフェスに行ってないのも相まって、飲みながら踊りたくなった。

「映画は体験になる」という言葉が聞かれて久しい。この標語が長きにわたって展開が続く背後には、動画配信の隆盛や興行収入減への恐れの声が聞こえてくるようだ。クイーンをわかりやすく描いたが、その気になればセックスもドラッグももっと過激で狂気な描き方ができる。孤独なロックスターという切り口はあまりにお古な商業主義的だし、辟易してる自分もいる。

だけど、あまりにきな臭い今の時代に、クイーンの復活が必要だった。正直言ってヒットなんてどうでもいい。結果が出るかどうか、というのも後から取ってつければいい。それでもいいからクイーンが必要だった。真新しさや芸術表現を越えて、それはまるでデモのように、声を上げている。そうした映画が本当はもっと観たいのかもしれない。
ダイアン

ダイアン