ダイアン

バイスのダイアンのレビュー・感想・評価

バイス(2018年製作の映画)
2.5
クリスチャンベールに特殊メイクを施しすべての演技をさせたことは凄く魅力的。実際ゴールデングローブ賞だ。
しかし、アカデミーにそんなにノミネートするほどか?エイミーアダムスはどうだったか?

ブッシュの短絡的で直感的な性格はとてもよく描かれていた。あぁこいつがイラク戦争始めたのか…と。オバマではchangeしきれない現在の右傾化の流れを築いたことがよくわかる。

Netflixオリジナルの「ハウスオブカード」には劣るしそれ以上の発見はないけど、2時間でエンタメ政治映画(マイケルムーアしかり)として端的にアメリカの政治世界を描き、あらゆる判断や挙動に“政治的”正当性を生み出し、それを経てもなお「すべて必要なことだった」と狂信的な物言いを続ける姿はリアリティがある。

画のテンポや編集は少し届いていないところが多くて、例えば語りの男性について、詳細な実態が掴めないままだからわかりづらい(語り手としてもっと魅力的な人物は他にいたはず)、ラストのインタビューに向けてフラッシュ的に実写の事件事故戦争報道を織り交ぜて時代動乱をみせるが、個々に対するディックチェイニー自身の関わり方の描写が少ないから感情がそこまで高まらない。
全体として9.11の対応を中盤の山に持ってくるのは正しいが、そこまでがとても長く、あんこが遅い。一方副大統領の立場になってからは一転して展開が早すぎ、ディテールが見えない。

その悪名高さをもっと売るべきだったし、効果的に実写を大胆に織り交ぜるべきだった。ベールの演技を観た気はするけど、既にしつこいくらい語られてきた「イラク戦争は意味があったのか」に対して新しい回答や視点がないのが勿体ない。
娘を裏切って同性婚に反対の立場をとらせる事実などは大変魅力的なのに割とドライで安上がりのシーンにしかなっていない。倍以上の尺を割いても良かったのでは。
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