ダイアン

音楽のダイアンのレビュー・感想・評価

音楽(2019年製作の映画)
4.5
一番すごいと思ったのはカットワーク。とてもモダンだなと思った。背景を動かさないフィックス、2Dゲームのような並行垂直移動、主人公が見えづらいほどの引き画、そして音楽が鳴り響く場面での3次元的な動き。走るシーンでは手持ちでフォローしているカットもかっこよかった。ロトスコープアニメだと知って素材となった映像を想像しながら見たが、実は大規模制作のアニメであってもカットワークが平板であることは少なくない。実写とは異なることを意識したり、手持ちのようなカットは通常のワークフローでは作業的に負荷が大きい(気がする)。

逆にキャラクターの表情などは恐ろしいほど単純化していて、7年間という長期間の使い方が通常のアニメ作品と逸脱して違うこともひきこまれた。今までにない。
さながらウッドストックのSantanaを彷彿とさせるかのようなフェスでのライブシーンはなんとも幸せな気分に。何度も笑ったがコロナのせいで閑散とした映画館の温度は仕方がなく低い。

坊主頭やリーゼントのチンピラも、モヒカングループのライバル校も、パンチパーマのマドンナも、ロン毛のフォーク好きも今や絶滅した。今ものづくりを続ける現役世代にとって「音楽」の最もメモリアルな過去の記憶がこうした当時の時代にあって、スマホはなく、CDが音楽メディアだった。また少し時代が進めば次の世代が次の時代を通して、音楽の原始的な悦びを描くだろう。全く新しい手法を通して、誰もがすでに知っているはずの深い記憶を何度でも呼び覚ましていく。
ダイアン

ダイアン