Junichi

野球少女のJunichiのレビュー・感想・評価

野球少女(2019年製作の映画)
4.6
「他の選手より力が弱くて球速は遅い。それでも勝てます。遅くても勝てるんです。それが私の長所。」

【撮影】9
【演出】9
【脚本】9
【音楽】9
【思想】10

演出を穏やかに抑え
BGMも使うべき場面でしか使わないことで
主人公の内に秘めた熱情や
母(親)の想いを観客に感じさせる

良質の映画
傑作だと思います

プロ野球に挑戦する女性選手というと
日本人にとっては
日米の独立リーグで活躍した
吉田えり元選手が思い出されます

吉田えり元選手も
本作品の主人公チェ・スイン(イ・ジュヨン)も
ナックルボールを武器にしていました

球速を重視するプロ野球界に対して
球の回転数を上げて変化球で勝負を挑む

骨の太さや筋肉量など
生まれつきの(努力ではどうしようもない)条件に対して
自分の長所を工夫する(強みを活かす)ことで勝負を挑んでいく

主人公を演じたイ・ジュヨンさん
目ヂカラと雰囲気のあるよい俳優だと思います

そしてその母を演じたヨム・ヘランさん
彼女の存在が本作品ではとても大切です

娘を就職させるための面接で
娘のスポーツバッグからのぞくシューズを目つめ
そしてジッパーを閉める

娘と互いを背にして語るアイスの話

そして
契約金をめぐる哀しい勘違い
親を泣かせにきています

妹さん役の女の子もよかったです

そして
主人公の高校の野球部コーチ
チェ・ジンテを演じたイ・ジュニョク
自らの挫折の経験から
主人公と反目しつつも
その想いに寄り添っていきます

欲を言えば
この過程をもう少し丁寧に描いてもよかったと思います

過激で大げさな表現や演出が大いなか
本作品の静けさはとても心地よいものでした
作品世界にしっかりと入ることができました

心を落ち着け
静かに熱情を燃やしたい方にオススメです
Junichi

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