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事故物件 恐い間取りのヒムロのレビュー・感想・評価

事故物件 恐い間取り(2020年製作の映画)
1.0
売れないお笑い芸人ジョナサンズの山野ヤマメは相方から突如解散を言い渡されてしまう。
作家になった元相方中井とその口利きで出会ったテレビプロデューサーの無茶振りで「事故物件に住む」という企画の仕事をすることになる。
TV局のメイクアシスタントでジョナサンズのファンでもあった梓の霊感も借り、不思議な映像を撮ることに成功したヤマメは「事故物件住みます芸人」として段々と仕事が軌道に乗ってくる。
しかし、それと比例するようにヤマメの周囲には不幸が降りかかるようになってくる…。


「事故物件住みます芸人」松原タニシの同名ノンフィクション書籍を元にした映画。
元の本は読んではないが、流石にアイデアや話の端々ぐらいしか参考にしてないだろうってぐらいはちゃめちゃな映画だった。

まずお笑い芸人の要素が入ってしまっている作品の宿命だが、笑いのシーンが絶望的につまらない。
ジョナサンズのコントはウケてないという設定なのでまだいいがバラエティ番組でのシーンが超つまらない。
というかコントは役者がやってるので間が悪いとかはあるにしても普通にちょっとぐらいはウケそうな内容なのだが、バラエティでのコメントは周りが笑ってるのが無理に笑ってるように聞こえてめちゃくちゃ冷める。
もっとお笑い描写は逃げても良かったのではないか。

そもそも番組の企画で実際に撮れた映像を放送しているはずなのにそのシーンが1回しかないのがイマイチ。
寒いシーンよりこっちを入れた方が全然空気も壊さなかったと思う。

とはいえ肝心の心霊現象は力技というかCGを使う予算がないのか生身の人間をドンと出して幽霊ですと言い張るスタイルなのでこれもつまらない。
低レベルな仮装を見させられて怖がれというには無理がある。
前半はまだガラスの向こうにうっすら映るとか怖がらせる意思が感じられたが、後半は「来る」を彷彿とさせるバトル映画、それも「来る」ほど振り切ってない展開になるから残念。
笑えるB級Z級としても勧められない退屈さがある。
今でも生きてる芸人の出した本を元にしてるのにわざわざこんなハードな展開にする必要があったのかと疑問に思う。
普通にちょっとした心霊現象が起きたり撮れたりするのが続いて身の回りで不幸が起きればじんわりと怖い話が作れるような題材だったのではないか。
更に演者で客寄せを担保して、まさに近代の邦画ホラーの悪い所がふんだんに詰め込まれた映画だと言っていいだろう。

あと原作本と同じタイトルにした結果「怖い間取り」が意味不明。
原作本は実話怪談本なので間取りが図として見れると話の解像度が上がってリアリティや恐怖度が増す、というギミックとして間取りが実際に乗っている物と思われる。
映画でも間取り図が出て来たりするがそもそもヤマメが住んでる時点で観ている我々には間取り図以上の情報が見えている。
そして巻き起こる怪異や前の居住者の死因には間取りは一切関係ないのでただ謎に間取りを教えてくれるだけのホラー映画になっている。
てっきり間取り図に違和感や隠し部屋などの要素が入ってくるのかと思っていたがマジで邪魔なだけの要素だった。
一応主人公のヤマメが特に理由もなく「この間取りなんか良い」みたいに導かれる描写はあるが、後半ぐらいで家とか関係なくヤマメに取り憑いてる霊がいる事が判明するので危ない部屋に誘われるのは間取りとかじゃなくてソイツのせいという事まで分かってしまう。

ちなみに監督の中田秀夫さんは個人的和ホラーの最高傑作でもある「仄暗い水の底から」の監督でもあり「リング」の監督でもある。
一体どうしてこうなってしまったのか。
予算なのか和ホラー制作業界のクソ具合が原因なのか、何もかも残念としか言いようがない。
役者と話題性だけでクソ映画を打って黒字にするという流れを早く断ち切ってほしい。


亀梨和也のファン以外見る価値のない、拾う所のない映画だった。
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