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トゥルーノースのpurigoroのネタバレレビュー・内容・結末

トゥルーノース(2020年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

今の時代の日本に産まれたことを、単に運が良かったと思うだけでは済まされない現実を突きつけられた。。

アウシュビッツやシベリア抑留の話など、本や漫画、映画などで観てきてはいたが、戦争の時代の過去のものという認識だった。決して同じようなことを繰り返してはならないと世界の先進国は思っているはずだし、繰り返されることはないと私自身何となく信じていた。
しかし、それは先進国の法治国家のなかだけの話であって、それ以外の国では、法律や国民の自由などないに等しい国もあるという現実を改めて知った。それも、大昔のことではない、今の時代に。。冒頭のTEDがその事実を強調している。

画家・香月泰男さんのシベリア抑留シリーズの作品を通して、大きなノコで極寒のロシアで木を切り倒し運んでいた話、日本人の死者が出るたびに死体を埋める穴を掘って死体を運んだ話などを事実として知ってはいたが、シベリア抑留で起こっていたような生活(実際にはもっとひどい日常)を映像として見ると、今の時代に生きる私たちには到底直視できないような残酷なシーンばかりで愕然とした。。

弱い者のなかで起きる弱い者いじめ、弱い者のなかで敢えてさらに優劣をつけさせる(密告させたり)強い者たち。
収容者を集めた集会で、皆の前で密告させる制度には驚いた。密告なんかして、何の意味があるの?そんな足の引っ張り合いをして、誰が得をするの?と思った。。だけど、悪い奴を密告したらその分「食事を与える」というような、命に直結するメリットを与えて密告させてるんだということがすぐ後のシーンで分かり、そういうところにかこつけるのか、、と。。

でも、弱い収容者たちを管理しているその強い者たちも、もっと大きな強い者の下にいる。。そのシステムは永遠に繰り返される。。

色々な善悪があった。法という指標がないなかでの独立国家。その中で更に隔離され、何の秩序も倫理も道徳もまかり通らない場所。

True Northというのは「北(朝鮮)の真実」という意味だと思っていたが、「Find your true north」という英語の慣用句があり、それは「自分の指針を持つ」という意味とのこと。

他人の指針に惑わされるのではなく、本当に重要な自分にとっての指針を見つけ、それを貫くことの大事さ、それをこの映画は教えてくれたと感じていたが、「Find a true north」という慣用句があることを知って、更にこの映画の深みが増した。

最期のヨハンのお母さんの言葉が心に残った。
「”誰が正しい”とか”誰が間違っている”かが重要じゃないの。”誰になりたいか”自分に問いなさい」
「いつも美しいものを探してね。どんなに辛くても」

これが、今色々な善悪がうごめく世の中で、私たちが動物ではなく知恵と理性を持った人間として生き抜くためのひとつの指針なのかもしれない。。
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