呪いのこと愛って言うなドラム式洗濯機は遊園地じゃねえよ
初谷むい
『花は泡、そこにいたって会いたいよ』(書肆侃侃房、2018年)
【作画】6
【演出】8
【脚本】8
【音楽】9
【思想】9
冒頭に掲げたことばは
初谷むいさんの短歌を彼女の歌集から
オススメです
原作は9巻あたりまで読み
TVシリーズをすべて視聴して劇場へ
【呪術】は自分の研究テーマに関わるので興味をもって観ました
TVシリーズよりも呪術要素が強いので大満足です
主人公の乙骨優太君
TVシリーズでは名前しか出ておらず
どのような人か想像できなかったのですが
碇シンジ君でした(笑)
本作品
エヴァから影響をかなり受けている様子で
乙骨優太君=碇シンジ君
折本里香=エヴァ初号機
五条悟が呪術師の幹部たちと会話する場面は
碇ゲンドウがSoundOnlyの方々と会話する例の場面etc.
パンダはるーみっくワールドの住人ですけど(笑)
内容は
愛という呪いについて
五条悟のセリフ
「これは持論だけどね、愛ほど歪んだ呪いはないよ。」
が本作品の本質を現しています
愛という呪いはとても歪んでいて
それは女誑しを純愛と詐称するほどに
以下、少しネタバレです。
折本里香がきちんと成仏してくれたからよかったものの
あのまま乙骨優太が引き摺り込まれていてもおかしくない話です
いずれにしても
愛のことばの呪術的な側面を
ここまで描いた現代の漫画作品もないでしょう
愛のことばは時に
生霊のように相手を縛ります
愛の肯定的な側面は
相手の存在に創造的な意義を見出すことに
そして
自分がいなくなったとしても
相手がきちんと生きていけるようにすることにあります
フランスの思想家シモーヌ・ヴェイユの言葉に
「愛とは隔たりへの同意、あなたとわたしの間にある隔たりを尊重すること。」というものがあります
愛は呪いでもありうることを前提にしてはじめて
愛の成熟が目指されるのかもしれません
本作品
愛という呪いに関心のあるすべての人にオススメします