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ラブライブ!サンシャイン!!の雑記猫のレビュー・感想・評価

ラブライブ!サンシャイン!!(2016年製作のアニメ)
3.5
 前作から世界観のみを共有し、登場人物を刷新した本作。前作は、全国の各高校に所属するスクールアイドルたちの甲子園・ラブライブ!を物語設定の根幹におきながら、主人公たち以外の競合グループがほぼ登場しないために、ラブライブ!の規模感や難易度があまり良く分からないという作劇上の問題が存在していた。本作についても、登場する競合グループは北海道のスクールアイドルグループSaint Snowのみなのだが、本作では前作の主人公グループμ’sが逐一、本作の主人公グループAqoursの比較対象として提示されるため、この問題点はかなり解消されている。面白いことに、本作では、物語の要所要所で同じ時期のμ’sは常にAqoursの先を行っていたことが提示されるため、μ’sが全国のスクールアイドルグループの中でも随一の実力派グループであったという前作では全く見えてこなかった側面が顕になるとともに、ラブライブ!を勝ち上がっていくハードルの高さが同時に浮き彫りになっていく。この構成のおかげで、前作では見えてこなかったμ’sの社会的影響度が補完されるとともに、ラブライブ!の大会の全容をなんとなく掴むことができ、全体として前作よりかなり世界観が分かりやすい見やすいものになっている。また、これを経て、物語は最終的にμ’sとの比較をやめ、自分たちAqours独自の方向性を追い求めていくという落とし所に向かうのだが、これも構成的に自然で美しい。


 本作の縦軸の物語は主にAqoursの9人が集まり、結束するまでで構成されており、メンバーが全員揃うまでに全体の約3/4をかけるという贅沢な構成になっている。それぞれのキャクターがそれぞれの悩みや葛藤を抱えており、そういった面がクローズアップされる比較的シリアスな回も少なくないのだが、本作では基本的にコミカルな演出が心がけられており、その回の主要キャラがシリアスな物語を展開していても、それ以外のキャラがカンフル剤の役割を果たすために雰囲気が重くなりすぎないようになっている。本作の場合、物語がシリアスになりすぎると、素人の高校生たちがメンバーだけで、作詞作曲編曲を行い、振り付けを考え、衣装を制作しているというそもそもの設定の無理が露呈するため、この方針は正解と言えるだろう。


 また、本作ではライブパートにおける手書き作画とCG作画の間の差が、前作とは比べ物にならないほど小さくなっており、クオリティーが非常に向上している。特に前作の段階ではまだかなりぎこちなかったCG作画での表情の作画が本作ではかなり自然になっており、ライブシーンの見栄えが段違いに良くなっている。アイドルものである以上、ライブパートは一番の見せ場であることから、ここのクオリティーアップは鑑賞の満足度をかなり高めていると感じる。
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