もこもも

氷菓のもこもものレビュー・感想・評価

氷菓(2012年製作のアニメ)
4.8
"面白さが尽きない京アニの傑作"

傑作としか言いようがない...
こんなに満足感を得られるのも、
こんなに観終わってしまうのが惜しいと思うのも、
多分それは圧倒的な構成力と
BGMも含めた美しい演出、
そして登場キャラ1人1人の魅力によるもの
作画も今まで観てきたトップクラスに美しかった

「やらなくてもいいことはやらない
 やらなければならないことは手短に」

本作は省エネ主義で無愛想な
奉太郎が主人公の青春学園推理作品
ここで勘違いして欲しくないのはこの作品、
推理がおもしろいのはもちろんやけど
推理アニメではないというところ
多分推理ものを好んで観ない人でも楽しめる
その要因はこの作品が推理自体を
全面に推しているんじゃなくて、
推理をこの作品の1つのパーツとして
描いている様に感じたから
そして事件といっても殺人などの重い話ではなく
基本的には事件ともいえない「気になる」謎に
着目を置いているところにあると思う

こういう推理ものって1度観たら
結末がわかるから何度も観ようとは
あまりならないけどこの作品は
逆に何度でも見返したくなる
大袈裟な展開や劇的な関係性の変化が
ないこともそうやけど話を理解することで
さらに増す面白さと魅力があるところ、
氷菓の意味やクドリャフカの順番など
何度観ても完璧だと思わされる構成、
演出が見返したくなる要因になっている

主なキャラクターは主人公である奉太郎、
なんでも気になってしまう純粋で可愛い千反田、
主人公の相棒で人間味が深い里志、
里志のことが好きな強気でかわいい伊原の4人
主力なキャラが少ないにも関わらず
おもしろいことからもメインキャラ
1人1人が魅力的であることが分かる
まさかCLANNAD以外で中村悠一さんと
坂口大助さんの主人公&相棒コンビが
観れると思ってなかったから嬉しかった

奉太郎と里志の2人が本当に良い関係
奉太郎と里志が2人で話す場面はどこも
ただの友達とは思えない友情の強さや互いの理解、
物事の本質、ユーモアを感じれてお気に入り
里志の存在がこの作品の面白さを
引き立てていることが見返すとよく分かる
「現状に対する保留だよ」
「本当羨ましい限りだよ」
「幸太郎は千反田さんと出会うことで進化した
 果たして僕はそれをただ愉快だと思えるだろうか
 幸太郎向きじゃない事件の真相を
 僕の手で解き明かす」
「期待っていうのは諦めから出る言葉なんだよ」
「僕はね、こだわらないことにこだわるようになったんだ」
里志の賢いところ、友達想いなところ、
友達をしっかりと理解しているところ、
ユーモアと人間味があるところ全部が大好き

手作りチョコレート事件の里志は
かなり印象的で里志の行動信念を理解できる
チョコレートに関する行動は
褒められることじゃないけど
伊原のことを無下にしているわけじゃなく、
それだけ本気に捉えていることも伝わって、
器用なのに不器用すぎるといった奉太郎に共感

女子陣ももちろん大好き
芯があって、物事の本質が見えていて、
可愛くて、他人を思いやれる千反田が大好き
EDの『君にまつわるファンタジー』は
ヒロインの可愛さ、純愛さを最高に感じて大好き

特に好きな話は
愚者のエンドロール、
クドリャフカの順番、
心あたりのある者は、
遠回りする雛
この作品は1つ1つの話もさることながら
全体の構成があまりにも素晴らしい
この作品において愚者のエンドロールの
重要さが何度も見返すと感じる

愚者のエンドロールで幸太郎が
自身の才能の認識を過小から過大にすることで
失敗する未熟さや悔しさを感じ、それがあるから
クドリャフカの順番がより引き立っていた

クドリャフカの順番はストーリーの中で
1番感情の表現という点において素晴らしい
幸太郎ももちろんすごいけど4人のそれぞれの
視点があることで謎解かれるのが凄い
事件の背景もよく出来ていて、
里志の期待に対する考えや
田名辺先輩の心情は心に刺さった

心あたりのある者は
この話は部室で幸太郎とえるが
2人で話しているだけやけど、
1つの校内放送から納得させられる理屈
かつ興味深い話に仕上げていて、
その見せ方にただただ圧倒される
「きなくさいのきなってなんでしょう」
って聞くえるも可愛かったし、
それに対して「知らん」って言われた後の
「むぅ...」も最高に可愛い

そして最終話の遠回りをする雛
最後の5分には言葉が出ない...
正直、最後のあのセリフを本当に
言っていて欲しい気持ちもあったけど
言わないのがやっぱり奉太郎らしい
例え幻想でも奉太郎のかっこいいところが
見れたし、なにより絵が、桜が美しかった

1回目に観た時、最後の奉太郎とえるの会話に
『耳をすませば』を重ねてしまって、
それがなんでやろうって思っていたけど
多分それはBGMがそうさせているのだと
ドラマCDを聴いて納得させられた
『君にまつわるミステリー』が
曲も映像も可愛くてめっちゃ好き

「10年後の私は気にしないかも
 でも今感じた私の気持ち
 それは将来どうでも良くなってるかもなんて
 今は思いたくない
 私が生きているのは今なんです」

OVAも視聴
まだアニメを観ていないなら
OVAは11話の後に観ることを勧める
この話自体が11.5話で映画製作の話の後なので
いつもに増して無愛想な奉太郎が登場
そんな奉太郎がまたちょっと前向きになる様子が描かれていた

ドラマCDもすべて聴いた
BGMとSEの秀逸さがはっきり伝わる
いいアニメは音だけでも魅せられるのだと...

OP : ChouCho 『優しさの理由』
こだまさおり『未完成ストライド』
ED : える&伊原『まどろみの約束』
える&伊原『君にまつわるファンタジー』
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