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逆境無頼カイジのProconのレビュー・感想・評価

逆境無頼カイジ(2007年製作のアニメ)
4.1
『イカゲーム』の監督がインタビューで「経済的に苦労していた頃に読んだ日本の漫画」として挙げていたのをきっかけに鑑賞。原作の漫画版はもともと通読済み。『イカゲーム』のギフンのキャラクター造形はカイジを中年にしたイメージなのだろうと改めて思った。

原作の持ち味を活かしつつ洗練させたとてもよいアニメ化だと思う。わかりやすいルールで負担なくギャンブルのスリリングな展開を楽しめる。鉄骨渡りはもはやギャンブルでもなんでもないのだが、極限状態に追い込まれた人間の原始的な欲求が緻密に描かれていて魅せる。

特にカイジ役の萩原聖人の演技が素晴らしい。喜怒哀楽の感情の触れ幅が大きい役柄を、卑近にも偉大にも見事に演じている。原作は純文学的な心理描写やモノローグが優れた作品だが、アニメ版を観るとセリフ自体もよいと気づかされる。ただ利根川役の白竜は、正直ほかの声優陣と比べるといまひとつ気迫がないという印象になってしまった。決して下手ではないのだが…。セリフも多く重要な敵役であるだけに、もっと力のある演技を見たかった。細かいところだが船井の関西弁がナチュラルでよい。演じた石川英郎は兵庫県出身と知って納得。

漫画版は、閉塞感を抱え周りにクズ扱いされる(し、その言い訳もできない程度にはろくでなしの)カイジに共感しながら読んでいた。今改めてアニメ版を観ると大人たちの詭弁につけこまれて翻弄される若者といった風で少しかわいそうに思ってしまう。
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Proconさんの鑑賞したアニメ