虎舞羅ーコブラー

86―エイティシックス―の虎舞羅ーコブラーのレビュー・感想・評価

86―エイティシックス―(2021年製作のアニメ)
4.2
安里アサトの同名ライトノベルを原作としたTVアニメーション作品。

原作小説のファンだったので鑑賞しましたが、原作でも最高密度の面白さとエモーショナルを秘めたストーリーの熱量を、肌で感じられる程の演出で描いてくれていたので感無量でした。

ギアーデ帝国が生み出した完全無人戦闘機《レギオン》に対抗すべく、隣国であるサンマグノリア共和国が作り出した無人戦闘機械《ジャガーノート》の戦いを軸に、86-エイティシックス-と呼ばれる有色人種に対する共和国の迫害、その86に理解を寄せる共和国軍人の少女の苦悩を描きます。

何と言っても監督の演出技術が凄い。一話からそのエモーショナルに満ちた粋な演出が見られますが、それはまだまだ序幕。後半にかけて更にヒートアップしていきます。私が特に好きなのは澤野弘之さんによる劇伴に合わせて演出されるドラマシーン。
「進撃の巨人」「甲鉄城のカバネリ」などの劇伴を務めるベテラン、澤野弘之さんによる力強いサウンドとビートに乗り展開するバトル描写。そして悲哀に満ちたトーンから語られるドラマシーン。その一つひとつにこだわりを感じさせられます。
ですが何より嬉しいのが、原作ファンが「この表現が良かったね〜」と感じていた部分を、全く違和感なく映像に落とし込んでくれていた事。文学的表現として私も大好きな終盤のシンの兄との一騎打ちで描かれるレーナの覚醒とシンの心情が、あんな風に映像化されるなんて…と鳥肌が立ちましたね。文学的表現をここまで違和感なく映像表現として描ける、監督の技量に感服しました。

ここのレビューにも多いですが、確かに原作を読んでいないと最初は分からない部分は多いですし、「原作一巻分を1クールは使いすぎ、テンポ悪い」という意見もわかります。否定しません。ですが、逆にこれくらい時間をかけてくれたからこそ、1クール目の衝撃的なラスト、そしてそこからの胸アツ&スカッと展開が際立つのです。あまり気に入らない!という人にこそ、是非原作を読む事をオススメします。一巻分だけで余裕に1クール使えるくらいの高密度なので、是非ぜひ。

2クール目は10月から。いやぁ〜、ここからがまた面白くなっていくので、見逃さずにチェックしてみてくださいね!