櫻本榮真

サマータイムレンダの櫻本榮真のレビュー・感想・評価

サマータイムレンダ(2022年製作のアニメ)
4.5
【良かったポイント】
冒頭「失う」ことから始まる本作は観る者を惹きつけることと思います。その失ったものがどうなるのか、どう関わってくるのかを想像させつつ物語は進行していきます。所謂”タイムリープもの”です。これはありがちな設定かもしれませんが、その想定を超えるストーリー展開は予想を超えつつも、どこか期待通りな部分もあって、飽きることなく最後まで駆け抜けていきます。特殊能力があれこれ登場するわりに、非現実的に偏らずどこか日常を感じさせるバランスは素晴らしいと思います。
登場するキャラクターの個性も強すぎる主張もなく、しかしながらそれぞれしっかり描かれていて、それなりに登場人物も多いですが、迷うことなく物語に没入できました。
終盤からエピローグにかけての絶妙なスピード感は感動ものでした。「起承転結」とはよく言ったものですが、オープニングからじわじわと加速し、中盤から終盤にかけてその勢いは増していきます。そしてエピローグにかけて緩やかに減速していくスピード感は素直に感動できると思います。「失う」ことから始まったストーリーがどのように収束していくか、じっくりと味わえました。

【難しかったポイント】
タイムリープというと、その能力発動のきっかけなど小難しい設定が存在する作品が多いように思いますが、本作品はその点において小難しさはありません。しかし、ご想像のとおりタイムリープが鍵となるわけですが、同じキャラクターが訳あって二人登場することがあり、そのあたりの見極めがちょっと難しいかもしれません。とはいえ、そこが『サマータイムレンダ』の見どころポイントだったりもするので、その難しさもスコアを押し上げる要素だったかもしれません。
一方、この作品には口直しに笑わせてくれるようなエピソードが少なく、緊迫感が切間なく続きます。そのため”日常もの”が好きな方にはちょっぴり疲れちゃうかもしれません。見終わってみると、その緊迫感も結末に繋がる重要な要素だと気づけますが、鑑賞するにあたっては結構なエネルギーが消費される感じがしました。

【タイトルについて】
「レンダ」というと「レンダリング=データを整理し処理することであらたな生成を行うこと」を私は連想しましたが、物語を見終わってみるとこのタイトルが持つ深さに気がつけると思います。タイムリープをする度に新たに事実を生成するという短期的な意味合いもあるとは思いますが、エピローグのいちばん最後「みんな、ありがとな!」という言葉とともに、タイトルが完結する。そんな充実感を持たせてくれるタイトルでした。

【涙腺崩壊ポイント】
繰り返しになりますが「失う」ことからスタートするストーリーにおいて、泣きたくなる鬱展開は多々訪れます。しかし、起承転結の「結」にそれまでの要素が収束していく様は涙なしには見られませんでした(私は)。失ったものの大きさ、尊さを自分のことのように感じることができました。

【まとめに】
この作品は、ネタバレをせずにレビューを書くのが特に難しかったです。私は鬱展開で進んでいたとしても最後にはハッピーエンド来ると期待しながら鑑賞するのが好きな方なのですが、そんな私には大変ご馳走ものでした。とにかくスピード感があって、飽きることなく25話まで走り抜けました。エピローグの最後から2つ目のシーンで終わったとしても誰も文句を言わないと思うのですが、最後のシーンで完結するところに製作陣のセンスを感じました。

【おことわり】
作品に対して小説や漫画などの原作がある場合、私はアニメーションを初見にして、後から原作に触れるようにしています。そのため原作との差異や矛盾点については原作から入った方のレビューにお任せします。あくまでアニメを初めて見た目線で書かせて頂いていることをご了承ください。
櫻本榮真

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