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お兄ちゃんはおしまい!のmiraのレビュー・感想・評価

お兄ちゃんはおしまい!(2023年製作のアニメ)
4.0
『おにまい』には予感がある。それはまひろがいつ男に戻ってしまうか、という物語なものや、女性視点で生きてきていない無防備なJCが外を出歩いていると何者かにさらわれるのではないか、はたまた誰かに正体がバレるのではないか。それらは物語に緊張感を生む。ただ、『おにまい』は物語的な緊張感だけに頼っているわけではなく、5話のモブたちからまひろへの視線(スカートで行儀悪くあぐらをかいている/JKがまひろに向ける視線)や、6話のカフェでのワンカット(人が横切るカット,4分26秒)など、誰かしらの視線(や神視点)のカットの驚きによってそれらは担保される。この8話に至っては同級生が遊びにくるということで、まひろ含む同級生と、姉(妹)。まひろ&姉(妹)と同級生、などの様々な視点からのカット割、空間が何層も設定される。またこれによる、画面内レイヤーの豊かさ、カット単位の驚きによって、(運動の)持続される。物語的にも「おもらし」を庇うまひろという成長過程を見ることができる。「成長過程」と書いたが、JC化していることで本来の姿の彼の成長とはまた違った噛み合わなさ、が面白い。まひろであることで、彼はどんどん「女の子らしさ」(はたまた「人間らしさ」)を手に入れることで本来の自分の姿を忘れていく。この「成長」と「忘却」は同時に進んでいく。本来、成長過程において忘却していくということは普遍的なものでもある。私たちは成長する過程で、小さい頃のできごとを徐々に忘れていく。それは視聴者が本来のまひろの姿(男性)を忘れていくことと似ているようだ。しかし、薄れていった記憶のなかにも確実に出来事は積み重なっている。
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