北川友哉

ヴァイオレット・エヴァーガーデンの北川友哉のネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

私もこうだったと思い出す。
最初は何も分からなかった。
大切な人の言っていたあの言葉の裏にどんな意味が隠されていたのか。多くの言葉が何を伝えようとしていたのか。その行動が誰のためにあったのか。
いつも失ってから気づく。
深く深く心の中に住み着いた、この感情を与えてくれた人との記憶が、私が前に進んだ時、後悔として、心を抉る。
もう消えない火傷の痕が、心を食らう。
そうして、火傷に気づく。
一度気づいたら、記憶と今が交差する度に、何度も思い出して、心が燃える。
私は生きていて良いのか。
人を傷つけた私が生きて良いのか。
そんな問が呪いの様に、聞こえてくる。

けれど、火傷の痕が消えないのと同じ様に、私の進んできた道が消える事はない。
誰かを思った日々が消える訳ではない。
そのことが、生きていて良いのだと、教えてくれた。
だから、あの人に報いるために、今日も生きていたい。
誰かの思いを預かるという事はその人と同じ痛みを背負うという事だけど、その痛みは、私が前に進んだ証でもあるから、この痛みと共に在りたい。
今日も、私の心の中で生きている。
あの頃、私を思ってくれた、多くの言葉とその心が。
北川友哉

北川友哉