Tatsu

スモール・アックスのTatsuのレビュー・感想・評価

スモール・アックス(2020年製作のドラマ)
5.0
2021年11月26日
我慢できずに『Lovers Rock』だけ鑑賞。一晩のハウスパーティー。日中の準備の様子、歌いながら料理を作り、スピーカーとターンテーブルをアパートの部屋に運ぶ。夜中、1人の少女が家を抜け出し、バスで踊りに向かう。主人公が家の部屋から抜け出し、朝方そこに戻ってくるまでという大枠のプロット以外、完全にそこから起承転結の物語性が排除され、パーティーの過程、様子、その所作が事細かに映される。ジャネット・ケイ"Silly Game"が流れる中、2人の男女が部屋を出ていくが、カメラは当然のようにそれを追わず、部屋の中に残り、アカペラで同曲を踊りながら合唱する人々を数分間にわたって只々映す。映画を見ていて「この瞬間がずっと続いてほしい」と思うことは、カメラに「この場所にずっといて欲しい」と願うのと同義であること。踊ってる姿と音楽の高揚、恋人達の交わりの甘美さと官能性、刹那性だけでボロボロ泣いた。これは紛れもなく映画だし何なら2020年代ベスト。多くの挑戦をしてきたスティーブ・マックイーンがこの境地にたどり着いているのにもグッとくる。

全話見たので改めて。『ラヴァーズ・ロック』を置いておけば、7、80年代のシドニー・ルメットによる警察映画を、当時のブリティッシュブラックの物語に翻案してみせた『レッド、ホワイト&ブルー』と、シーンと音楽の繋ぎ、編集が特異な『アレックス・ウィートル』が特に素晴らしい。
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