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江戸川乱歩の美女シリーズ 天国と地獄の美女のCANACOのレビュー・感想・評価

3.2
1982年1月2日に放送された「江戸川乱歩の美女シリーズ」17作目。黒澤明さんの『天国と地獄』を見ようと思ってたのに、検索でヒットした『天国と地獄の美女』に寄り道🫠。

懐かしい天知茂の明智小五郎。令和世代には理解できないであろう“昭和の男前”を体現する天知。監督は井上梅次で、子どもの頃は普通に見ていたはずなのに、今見たら演出がかなりぶっ飛んでいた。

“パノラマ島”なる、自然にあふれ、裸婦が舞い踊るユートピアの島を創造する妄想に取り憑かれた男・人見広介が、自分に異常に懐いてくるカラスをきっかけに、顔が瓜二つの山林王・菰田源三郎の存在を知る。打算的な公介の妻とその浮気相手の新興宗教エロ教祖にそそのかされ、3人で公介と源三郎の入れ替えを企てる。そこから始まる、人見家と菰田家と下衆な教祖が絡む連続怪死事件を、明智小五郎が解き明かす物語。

伊東四朗が一人二役を演じていて新鮮。エロ教祖役を演じたのはコロンボの声を確立した小池朝雄。菰田源三郎の妻役は叶和貴子で、全裸の入浴シーンだけでも3回出てくる。井上梅次によると入浴シーンは“またぎ(視聴者がチャンネルを変えないようにする策)”だったようで、井上監督が現場で各女優と直談判していたらしい。

開始3分で、1回スーパー銭湯に行ったくらいの裸体が出てきてびっくり。その後もどんどん出てきて、エロ教祖による何だかよくわからない洗脳儀式はAVチックでもあり、もはや女体のお祭りみたい。
本作は『パノラマ島奇譚』という江戸川乱歩の中編小説を基にしているが、脚本のジェームス三木により大胆に脚色。重要な登場人物が2人増えているうえ、大筋もかなり書き変えられている。ドライバーで目を突き刺す、斧で頭を割るなど、グロいシーン多め。ラストも衝撃だが、ここは1点を除いてほぼ原作通り。衝撃的すぎて面白い。

突っ込みどころは満載。これをお正月ドラマ特番として放送したテレ朝は勇気ある。ありすぎだと思う。

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□メモ
江戸川乱歩と横溝正史は仲がよかったようで、『パノラマ島奇譚』は、当時24歳だった横溝が博文館という出版社で編集者として勤め始めたとき、なにか長編を書いてほしいと乱歩に依頼して出来上がったものらしい。しかも、博文館に横溝が入社するきっかけを作ったのは乱歩だったらしいので、相当深い親交があったようだ。
(ドラマロケ地は伊豆だが)乱歩が鳥羽造船所に勤務経験があることから三重県志摩郡と鳥羽市が舞台になったらしい。
参考:『江戸川乱歩と横溝正史』(集英社文庫)

『古畑任三郎』よりはるかに先の、探偵・明智小五郎が視聴者に語りかけるオープニング。続けて出演者のクレジット。そこでジェームス三木と井上梅次まで顔入りで出てくる。本作で重要な役割を果たす“カラス(名前は勘太郎)”も同列で紹介されるのに笑った。このカラスも原作には登場しないので、ジェームス三木による脚色。

いま本作のパノラマ島を見ると早すぎたTDLにも見えて、(エロスの園を除いては)荒唐無稽なアイデアでもなかった。放送翌年に開園したTDLは当時で1800億円の事業費がかかっている。パノラマ島のロケ地は、京急油壺マリンパーク、熱川バナナ・ワニ園、伊豆シャボテン公園。
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