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地下鉄道 ~自由への旅路~のFrengersのレビュー・感想・評価

地下鉄道 ~自由への旅路~(2021年製作のドラマ)
3.8
 コルソン・ホワイトヘッドの歴史改変ものを原作としたドラマ。19世紀前半のアメリカを舞台にした奴隷制を扱う物語ゆえに陰惨、かつテンポそのものは非常に緩やかに進むので重たい…と思いきや、バリー・ジェンキンスという作家がもつ照明の表現力と画面構成力によりあまりに優美な映像が続くのである意味心地よく見ることができる。映画とも遜色なし。特に白人社会による弾圧を感じさせる場面では太陽の逆光が画面に入り、何か解放に向かう瞬間にはマジックアワーによる鈍い光や地下鉄道のヘッドライトに象徴される室内の明かりが表情を照らすというのはかなりやられる。そして物語の最後にはその光の意味が反転する。悠然としたカメラワークと手振れの使い分け、長回しによるシーンは俳優を信頼して託されている。役者は皆素晴らしく特に主役のトゥソ・ムベドゥの演技は、目の表情、背を伸ばす/丸める、走り方と少女/女性を横断していて凄すぎる。全てにおいて頂点だと感じる8話と9話にはうっとり。ショット、音楽共に文句なし。

 バリー・ジェンキンスという作家が時折挟む詩的ともいえるシークエンスは何処からくるのか常々考えていたものの、テレンス・マリックの影響がデカいのかもと思えたことを含め良かった。シーズン2希望。
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