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メイドの手帖のザのネタバレレビュー・内容・結末

メイドの手帖(2021年製作のドラマ)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

なぜ女性が貧困なのか?これの問いの答えだった。複合的に絡みあった問題が細部まで描かれていて感動した。実害が無いと守られないシステムだったり(実害があっても守られないこともある)、お金がないから仕事を探すのに、仕事をするためにもまたお金がいる。世の中の矛盾だらけのシステムに殺されかけるのはいつだってヒエラルキーの底辺にいる人間な訳で、本来社会はそういった人たちのケアを1番に優先させるべきだけど、そうでは無い現実があるし日本も全く同じ状況だと思った。こういう時に必ず自己責任論を言う人が出てくるけど、自分がそのシステムの中でどの立場にいるのか考えてほしい。残念ながら性別や人種によって階級がある社会だし、自己責任論と簡単に言えるのは明らかに特権があるからだと考えてほしいと改めて思う。

主人公アレックスは夫の暴力から逃げる道を選ぶ訳だけど、ただ悲劇のヒロイン的な感じで描く訳でもなく、夫ショーンの立場を断罪する描き方もされていない。彼自身も自分の罪と向き合っており、罪と赦しの側面もしっかり描かれていた。別れたはずの夫と再び関係を持ってしまったり、でもそういう事もあるよねと肯定的に描かれると同時に打ち砕かれる希望も描かれる。誰しも問題を抱えているし、あらゆる立場の人間の愚かさを真正面から捉えていた。こういった意味でこれもキャンセルカルチャー以降の作品として非常にハイレベルな作品でした。

DV夫から逃げたアレックスが、白馬の王子様的に現れたネイトと安易に結ばれる訳でもなく、ショーンと再び手を取り合うでも無く、父親の力も借りず、レジナ達と連帯するという選択をしたことが誇らしい。アレックスは聡明でビジネススキルもあって、でもその才能をつぶしてしまうようなシステムが社会には(特に女性だと)あるのだと改めて痛感。毒親の母親だけどここまで気にかけるのは、彼女も被害者であること、自分を父親の暴力から守ってくれたからなんだろうな。

男の力借りずして立ち上がる女たち最高。ありがとうございました。
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