移民問題や人種差別と言った現実の世界でも目を背けることの出来ないテーマや、親子愛や夫婦愛と言った普遍的な感情をベースにポリティカルサスペンスとして仕上げたことは高く評価したい。その一方で、ストーリー運びは愚鈍で、古参キャラを呆気なく殺すなど脚本は決して褒められるものではない。そもそも移民問題への向き合い方も誠実とは言えず、むしろこの作劇では対立感情を煽っているようにも思える。ようやく表舞台に復帰したニック・フューリーについても、「老い」を描きたいのか「復活」を描きたいのか、そのバランスにチグハグさが見られた。とは言えフェーズ4以降低空飛行を続けるMCUの作品群の中では相対的に面白く感じたのもまた事実ではある。
