MMM

わかっていてものMMMのレビュー・感想・評価

わかっていても(2021年製作のドラマ)
4.5
「愛する相手は、選べない。」

この作品をみて、正直とてつもなくヤキモキした。
それは、ナビやジェオン、ドヒョクたちに共感したり、反発したり、自分がすごく感情移入させられたからだ。
けれど、そうして没入させてくれる“なにか”に出会えること自体が幸せで、この世界を作り上げてくれた俳優陣と制作陣、原作者には本当に感謝しかない。

この作品は、はっきり言って、秀逸なストーリーを語らない。
でも、他の作品が語らないものを突きつけてくる。
完ぺきに心得たタイミングで、観る者の感情を上げて、下げて、抱き寄せて、突き放して、強く当たってきたかと思えば、優しい笑顔で微笑みかけてくる。
この作品のストーリーは、ナビやジェオンやドヒョクたちの浮き沈みそのものを疑似体験させるためだけに、物語られてると思う。

だが、そこがいいんだ。

そうやって、アメとムチを与えられてヤキモキする僕らは、いつしかこう考えるようになる。

「“愛”とはなんだろう?」、と。

親族の確執やお金持ち、めくるめく愛憎劇、、、そうした韓ドラお約束の非現実的なストーリラインをあえてなぞらない。
僕たち一般人の現実に寄り添って、できる限り身近にある“愛”を感じさせる。

誰しもが、誰かを好きになったり、嫌われたり、くっついたり、離れたり、、、誰かを愛してついた心の傷や、顔の皺があるんじゃないだろうか。

この作品は、そうした僕らの現実に寄り添うような、身近な“愛”を描くことで、僕らの心をえぐって、震わせて、かと思えば、温めて、包み込んで、、、
観る者に「“愛”とはなにか」を考えさせてくれる素晴らしい作品だ。

このレビューのタイトルにあるとおり、「愛する相手は、選べない。」僕は心からそう思う。

人って、頭で理性的に選ぶことはできても、好きになることはできない。
関係は育めても、好きなように操作はできない。
好きになるのはいつだって、心であり、感情であり、本能であり、欲望なのだから。
僕らの心は、自分のものなのに、永遠に言うことをきかない、自由で特別なパーツだ。
だからこそ、向き合う価値がある。
それが、たとえ傷つくとわかっていても。
それでもやっぱり、僕らは、誰かを愛し、愛されて生きていく。
心には、本当の願いがあることをわかっているから。

ひょっとしたら、“愛”って、決して逆らえないもののことを言うのかもしれないね。

僕らを突き動かし、人生を決定づけていくような、形はないけれど、様々なモノを通してたしかに見える、理性を超えて、損得を抜きにして、受け入れざるを得ないもの、それがきっと“愛”なんだ。
MMM

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